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35.開拓記(新たなる問題、そして……)

 お疲れ様です。

 色々忙しく正直眠いです。

 卒業式後も開拓は続く。


 フィルとイラーイダの区画整理とインフラ整備、田畑の開墾、そして、港作りに船作りと、 今、多くの仕事が、村の住人に押し寄せ、村の人々は、それに応えるように仕事に励んでいた。

 また、電車を作ったことでリアレスから作物と物資が、フィルからは、村近くの山から鉱物資源が取れると分かったので採掘と製錬された金属が、イラーイダからは海産物が行き来し、それに合わせる様に人の流れも血液の如く各地をめぐっている。


 本日のリアレス開拓事業館では、いつもの如くこれら村の開拓に必要な案件や現在の状況が、議題として提案され質疑応答がされていた。


 「じゃあ、始めよう、まずはジニス」


 俺の始まりの言葉から会議が始まる。


 「はい、今現在のフィルの村では、家の建替え、田畑の開墾作付けは順調に進んでいます。また、フィルの鉱山での採掘量の増加に合わせて、新たに精錬所の建築に取り掛かっております」


 ジニスを中心としたフィルの村の各担当者がモニターに前に並び写し出され、その中で纏め役のジニスが立って報告をしている。 


 なぜモニターからの報告なのか? と言うと、今までは、各村の担当者が電車を使って会議に出席するため移動していた。

 しかし、これでは、その移動時間が勿体無もったいなく、せっかく光ケーブルを接続しているのだから利用しようとこころみたものだ。

 なので、現在の会議室の後方には、大型のモニターが3台設置され、そのうちの2台にフィルの村の関係者とイラーイダの関係者が写し出されている。

 3台なのは、今後開拓が進むにつれ会議への参加者が増えていくだろうと予測され、モニターの分割機能も使えるので3台用意した。

 リアレスにいる者は、モニターの邪魔にならないようにテーブルの左右に分かれて座っている。


 「分かった。金属加工も現地で出来るように施設の建設も合わせてやってくれ」

 「心得ました」

 「次は、イラーイダの状況は?」

 「はい」


 ジニスに今後検討する事を言うと、次にイラーイダの関係者からの報告を受けるため話を振ると、中央のモニターに映っていたフィルの村の会議室が切り替わりイラーイダの会議室が写し出されフィルのモニターは左に移動する。


 「現在、カーナの港では、マサキ様にお造り頂いた防波堤に消波ブロックを並べており、およそ80%の作業進捗状況です。来月中には終わると予想されます。また、イラーイダに新たに設営された食品化工場は、順調に稼動し干物、鰹節など多くの食材が加工されており、最初の食品が今月末日にお送りいたしますのでマサキ様、是非お召し上がり下さい」


 モニターには、水竜人族の族長であるアクサがイラーイダとカーナの状況を報告している。


 カーナの港は、作業の難しさや時間を考慮して先に魔法で作ってしまった。

 まあ、港を作った事のない人達にいきなり港を作れと言うのはこくな話なので俺とミナで手分けして作り、時間をかけて出来る作業は村の住人に任せた。

 イラーイダの村は、魔法を使って造ったのは、インフラと区画整理のみで家や施設の建築は、イラーイダの水竜人族のみならずリアレスやフィルの村人が手分けして作業をこなしている。


 「ありがとうアクサ、楽しみにしているよ! あと、船の方の進捗状況は?」

 「はい、ミナ様の指導の下で作った5艇の木船は順調に稼動しております。他、鉄と樹脂を利用した大小の船を建造中で小さい方は、近日中に完成する予定です」


 イラーイダの人々は、自分達の手で魚を獲る事は容易に出来るのだが、いかせん手作業なので量が獲れない。

 なので現在、カーナの港の近くで船を建造していてアクサの報告の木船は、大きな船ではなくボート程度のサイズのことだ。

 この木船にバッテリーとモーターを取り付けてイラーイダの人々は、現在近海で漁網ぎょもうをしている。

 これによって、漁獲量が向上し、生魚をリアレスやフィルに送られ、また、イラーイダで加工されるようになった。

 もちろん、乱獲を防ぐ為に漁獲量と漁が出来る期間などを検討している。


 「そうか、技術の習得には時間が掛かるから無理せずに作業を進めてくれ」

 「心得ております」

 「次は……」

 「私達が順にご報告致します」


 舞花が一歩前に出て応える。


 「現在、ボルガ様達の働きにより田畑を荒らしたり人に害をなす、害獣の対策は順調に進んでおります。また、イラーイダとカーナの周辺の海には、下竜の様な害獣は確認されて下りません」

 「そうか、良かった。引き続き警戒をしてくれ、必要なら上空や海上、海中からの監視警戒もするように」

 「畏まりました」


 舞花には、ボルガ達とともにUAVを使い害獣として田畑を荒らすイノシシや鹿などの狩や、たまに村の周囲に出没する熊などに対応してもらっている。

 海の方には、下竜のような獰猛な生物がいないか監視をしてもらっているが、今のところ確認されてはいない。


 「続きまして、運輸について報告いたします」


 舞花の次に、車や電車の運送関係を担当する蓮花が報告のため前に出る。


 「今のところ交通関係での事故のご報告はありません。ただ、人々から電車やバスの本数を増やして欲しいとの要望があります」

 「本数を増やすか……、なら要望通りに本数を増やそう! ただ、無闇矢鱈むやみやたらに増やすのではなく人が集中する時間に本数を増やすように計画してくれ」

 「畏まりました。朝と夕方に混雑が予想されるので、そちらに本数を増やしたいと思います」

 「うん、それでいい」

 「次に通信ですが、本会議の放送や教育の他に、日本で放送されていた映画、ドラマ、アニメにドキュメンタリーなどをカテゴリー別にチャンネルを作り放送したいと思います」


 蓮花には、データの輸送も現実の輸送と同じく担当してもらっている。

 そして、今開かれている会議の状況も一般家庭に生で放送され、いつでも見れるように録画・保存されている。

 今は、1つのチャンネルの放送だが、今後は娯楽も含めて放送するみたいだ。


 「そうだね、番組を増やすのは良いと思うよ! ただし、人々の理解が追いつかないのは駄目だ、スプラッター系を見るなとは言わないけど、人々にちゃんと知識が根付くまではね」

 「畏まりました」

 「続いて、環境測定の結果を報告致します」


 蓮花が後ろに下がると、ススっと月花が前に出た。

 月花には、周辺環境の汚染の調査を行なってもらっている。

 これは、鉱山の採掘や金属製錬で有害物質が、大気や地中、地下水に入り込むのを防ぐためだ。


 「現在の環境有害物質は、日本の定める環境有害物質の値を大きく下回っており問題ありません。また、放射線量の調査も行なっていますが、こちらの値も問題ないです。鉱山地帯で高くなりますが、こちらは天然放射線の含有が高いためと、ラドンやトロンの影響です」


 どうやら、環境中に有害物質の検出はされていないようだ。

 放射線の測定は、核融合の影響調査と、今後作られるだろう原子力の事前調査のために行なっている。


 データと言うものは、集めておいて損は無いからね。


 「続いて各村の住民の状況を私から」


 今度は翠花の報告がなされる。

 翠花には、住民の暮らしに必要な事の多くを任せていた。


 「現在、住民の増加に伴いまして各種登録を致しております。住民の増加状況ですが、昨年に比べて、リアレスで1.3倍、フィルで1.2倍、イラーイダで1.08倍となっております」


 今、リアレスを始めとして開拓中の村で住民が増え続けている。

 これは、どこかでこの村の噂を聞いたのであろう他の地域で暮らしていた種族が、村に集まってきたからだ。


 村の各所にはカメラを設置しており、すでに登録済みの村の住人以外が村に入ってきた場合、モニターで顔認識装置を使って登録されていない者の場合は、すぐに各村の住民登録の担当者に連絡が入る。

 連絡を受けた担当者は、急行してその者を保護し、移住希望者なら各種生体情報の登録(顔、血液、遺伝子、指紋、魔力紋など)後に仮住まいの提供と村のルールなどの説明を行い村に迎え入れていた。


 翠花の報告によると、この移住者の増加しているようだ。


 「翠花の報告に関して、私からも報告がございます」


 一礼をしてスッと前に出たのは、氷花だ。

 彼女には、各村で起こるトラブルを逸早いちはやく捉えて解決する役割を担っていた。

 村に他の住民が入ってきたのを確認するのも氷花が行なっている。

 そして、彼女が報告するということは


 「もしかして、また?」

 「はい、また、で御座います」

 「あー、またかー」


 俺は頭を抱えた。

 最近、氷花の報告が一番の悩みの種になっていた。


 「申し訳御座いません」


 俺が頭を抱えた責任を感じたんだろう氷花が頭を下げて謝る。


 「いや、氷花が謝らなくてもいい。それより報告をしてくれ」

 「はっ!先ほどの報告にあったように住民の増加に伴って、トラブルの件数が急増しています。器物破損、物資配給でのトラブル、住居侵入など多く報告されております」


 これは、移民の問題と同じで、自分の育ってきた環境の差によるものだ。

 その土地の法や決まりごとを守り、習慣や風習を理解して生活圏に入ってくるなら問題は少ないだろう。

 しかし、現実的には、そんな事を理解する時間や環境が無いため多くの場合、自分の判断で決めた行動がトラブルの原因になっていた。


 「なるほど……それじゃ、仮住まいの地域を限定して決まり事や習慣を理解してもらおう、もちろん指導員を付けてね。フォートル、ジニス、アクサは各村の指導員と環境整備を進めてくれ」

 「「「承知いたしました」」」


 こういったことは、村を一番理解している3人に任せたほうがいい。


 「他に、器物破損や住居侵入って何?」

 「はい、器物破損や住居侵入は、それが何か、その家が誰の物なのかを理解していないようです」

 「つまり、それって……」

 「はい、理解するべく環境もありますが、暗黙のルールは有っても明確な法が無いのでそのような事が起こるようです」


 なるほどな、法が無ければ自分が犯している行為が、犯罪なのか理解できないし裁くことが出来ないからな。


 「法の整備が必要か」

 「そのように思います」

 「なら、氷花に一任する。必要な事や確認したい事があれば誰にでも相談するように! フォートル達もいいかな?」

 「マサキ様がお決めになった事なら構いません。それに、現在の揉め事は、村に住む者達にとっても不安の素でもありますので」


 フォートルやジニス、そしてアクサ達全てが頷いて返した。


 「よし!ああ、あと、物資配給のトラブルとは?」

 「はい、元からいた村の住人には無かったのですが、配給される物資が多く欲しいだの、これは私のだのと要求する者が出て争うが起きています」

 「それについて、私からも」


 この件についてフォートルからも意見がある様だ。


 「与えられた労働をこなさずに物資を要求する場合があり我々も困っております。怪我や病気なら分かるのですが、仕事もせずに大量にあるのだからよこせ! と言う始末」

 「なるほど」


 つまり、労働の対価としての物資要求ではなく、仕事もせずにより多く大量に要求するやからが要るわけか。


 「と言うことは、労働力の価値の保障を形にしなければならないのか……つまり、通貨か」


 ここに来て物資配給の限界を迎えたようだ。


 「氷花、通貨の法整備も合わせて行なうように、また、舞花、月花、蓮花、翠花は関連する部分で氷花のバックアップをするように」


 4人は合わせる様に会釈をして応える。


 「通貨が出来るという事は、税も取り立てないと福祉や開拓の事業が出来ないか……ミナ、通貨発行と税の徴収を任せる。村人に負担にならない範囲を徴収して欲しい」

 「畏まりました。しかしマスター、通貨を発行すると言う事は、通貨の価値の保障をしなければなりません。それには保障する組織が必要になります。具体的に国ですが」


 ミナが言いたい事はよく分かってる。

 国というシステムを組み込めば、通貨価値の保障も税の徴収も上手くいくだろう。

 しかし、いったい誰が国のシステムを作ると言うんだ?


 選挙をするには、まだ住民の理解力が足りてはいない。

 このまま、選挙を行なって元首を決めた場合、おそらく個人の利益誘導の政治をする事になるだろう。


 「分かってる。国かー、う~ん、選挙をするには、まだ早いな……ここは、各村の代表であるフォートルや、ジニスにアクサの話し合いで」

 「「「お待ち下さい!」」」

 「?」


 フォートル達で話し合って元首を決めた方が、問題ないだろうと思い3人に話を振ろうとしたところ、3人同時に言葉をさえぎる。

 何か名案でも思いついたのかな?


 「選挙と言う制度がある事は、ミナ様に聞いて存じていますが、全ての住民が理解してはおりません。このまま、選挙を行なうとマサキ様が今まで築き上げてきた体制が無に返す恐れがあります」

 「それは分かってる。だから、3人を含めた各代表で」

 「いえ!私どもは、すでにマサキ様のご指示に従っております。魔女様から教えて頂いたのですが、魔女様のおりました国には、王様がおり、そのもとで各取り決めがなされていたとうかがいました」


 うっ!なんか嫌な流れが!


 「付きましては、マサキ様に我らの王様になって頂きたく、どうかお願い申し上げます」

 「えーーーーーっ!」


 一般庶民の俺に王なんて役割り勤まるはずも無い。

 それに王なんてなったら肩肘張って面倒そうだ。


 「いや、それは無理だろう」

 「いえいえ、マサキ様なら王様に相応ふさわしいと考えておりました。これは、私ども全員の総意です!」


 全員が俺の方を真剣に見つめて頷く。

 フィルのモニターではドルフが騒いでいるようだが、数瞬で静まり返った。

 あのモニターの向こうで、いったい何が行なわれたのだろう?


 全員が俺の答えを待つように静まり返っていた。


 「まあ、マサキしかおらんのじゃ! 諦めるがよい!」


 沈黙を破るようにアルフィーナが俺の肩を叩く。

 なんで、そんなに嬉しそうなんだ……あれか、罰ゲーム的な感じか!?


 「はーーーー………………分かった。とりあえず王様になるよ」

 「「「おおーーーーーっ!!!」」」


 全員が歓声を上げる。

 中には涙を流す者もいた。


 「ただし、皆が必要無いと思ったら何時でも言ってくれ」

 「うむうむ!そんな事にはならぬから安心するのじゃ!」


 なぜか満面の笑みで応えるアルフィーナにモヤモヤしながらも周囲を見回すと、みんな万歳をするが如く喜んでいたので少しだけ気が晴れた様な気がする。


 「マイマスター、王となられた事大変お喜び申し上げます」

 「「「「「おめでとうございます」」」」」


 どこが、めでたいのか分からないが、ミナやメイド達が揃ってお祝いをする。


 「付きましては、マスター、国の名前なのですが、何にしますのでしょうか」

 「それは、マサキは、ソガ マサキなのじゃから、ソガ王国じゃろう!」

 「却下!」

 「なぜじゃ」


 国の名前に自分の姓が使われるなんて冗談じゃない!


 とは言うものの、国を作るなら国名も決めないとな……さて、どうしよう?


 俺は、ここ、いや、この魔界に来て一番印象に残る物を想像すると、頭の中には、春の季節に村中に咲き誇り、一面を桜色に染める山桜が頭にぎる。


 そうだな、アルの住まいだった木の家も大きな山桜だったしな。


 「おうか……桜花国おうかこくにしよう!」

 「オウカじゃと?」

 「ああ! 桜の花が咲く国、桜花国だ! ここで一番印象に残る花が、山桜の花だからピッタリだと思うんだけど」

 「大変よろしいかと思います。マイマスター」

 「うむ、そうじゃな! 桜花か、マサキにしては、良い名じゃ!」


 なんか失礼な言われようだが、皆喜んでいるみたいだから、まあいいか。







 こうして、人口が1万人にも満たない小さな国が魔界に生まれた。

 それは、とても小さい始まりだったが、後に世界を巻き込む大きな波へと変わる始まりだった。


お読み頂き、ありがとうございます。

後半のグダグダは、そのうち修正をしたいと思います。(出来るかな……)

次回は、建国のお話です。

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