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29.リアレス開拓(後悔と決意)

お疲れ様です。

フィルの村の者達、訪問の最後です。


 ジニスとの話し合いは、ドルフの暴走によって一時中断していたが、ドルフの退場によって続ける事になった。


 「うちの愚息がしでかした事、本当に申し訳ありません」


 ジニスは、まだ謝り続けていた。


 「分かった。もう、これ以上の謝罪は不要だ!どれ、立って話すのも何だからそこに座ろう。舞花、お茶を」

 「畏まりました」


 皆をソファーに誘導すると、真白は邪魔にならないようにチャコの眠っているバスケットを咥えて部屋の隅に移動してくれた。


 「それで?」


 ソファーの席順は、俺を真ん中に左右にアルフィーナとミナ、反対側には、ジニスとトキラ、テーブルの左右にフォートルとジェナートが座る。

 身体の大きなジニスがいて、3人で座っても余裕がある大きさなので窮屈きゅうくつに感じることは無い。

 皆にお茶が行き渡ったタイミングで一口お茶を飲んでジニスに話を続けるように促す。


 「はい、今回リアレスへ来て、人、食糧、物や生活など以前と比べようも無いほどに変わったことを目の当たりにしました」


 そうかな?と、俺は思ったが、ジニスの両隣に座るフォートルとジェナートが、ジニスの言葉に賛同するように頷いている。


 「つきましては、私達の住むフィルにもマサキ様にお力をお貸しいただけないかと……どうか、お願します」

 「マサキ様、私からもお願い致します。フィルの村とは、長年力を貸しあった中です。出来ればフィルの村もリアレスの如く発展して欲しいと私は願っております」


 ジニスの言葉にフォートルも続く。

 俺もフィルの村に行った事は無いが、困っている時はお互い様なので是非も無い。

 ただ、問題が一つある。


 「それについては、俺も手助けしたいと思っている。しかし、一つ解決して欲しい事がある」

 「何でございましょう?」


 ジニスは、俺が発した手助けしたいに嬉しさを表し、次に解決して欲しいの言葉に不安になっていた。


 「特に難しい事も無いよ、力を貸すに関してフィルの村に住む者達、全員が承諾しょうだくして欲しい」

 「全員の承諾しょうだく!?」

 「そうだ、リアレスでは、全員がいる前で偶然にその力などを見せる事があったが、フィルの村には、その事が伝わっていないので、急に変えてしまっては不安になるだろう」


 リアレスでは、宴が開かれた時に食事の味の変化と、困窮していた食糧の提供で村の信頼を得た。

 今回は、フィルの村の事、ここでジニスが承諾して俺が開拓に手を貸しても不安になる村人は必ず出てくるだろう。

 ジニスには、その辺を先に解決して欲しいと思っていた。


 「承知しました。村に帰ったら直ちに村の者達を説得いたしましょう」

 「よろしく頼む、説得が終わるのは、どのぐらいかかる」

 「4……いや、5回太陽が沈むまでは必要ですね」

 「分かった。6回目の日が上った時に、こちらから人を出すので結果を伝えて欲しい」

 「はい、分かりました」


 もし決まったら、初めから教えないとな……でも、今はリアレスの人々も教えられるから少しはマシか。


 「フォートル、もしフィルの村で開拓が決まったら手助け出来る人員はいるかい?」

 「はい、建物の建築は、残る数件でフィルの村へ移るのは問題ありません。農業については、今回トキラが来ているのでフィルの村で人を選んでリアレスで学ぶことが出来ます」


 まだ、フィルの村で開拓が決まった訳でないのに次々と今後のことが決まっていく。

 ジニス達は、次々と提案される内容に目が点になって理解が追いついてないようだった。


 話し合いは、続き時間は過ぎていった。




 その頃、ボルガ達は修練場にいた。

 この修練場は、マサキがリアレスの村の人々が自由に利用出来るように競技場と武道館を造り、その武道館の一角に設けられたものだった。


 「ここで、よろしいでしょうか?」

 「うむ、話しても大丈夫だ」


 氷花が、持ち上げていたドルフを修練場の地面に下ろして解き放つ。


 「てっめーーーーー!!!」


 ドルフは、腕の痛みから逃れられて息を吹き返したように氷花に向かって殴りかかる。


 「ガァッ!」

 「何でしょう?私が、お相手したほうがよろしいですか?」


 氷花は、襲いかかってくるドルフを難なく避けると、右手でドルフの額の辺りを掴み絞り上げながら持ち上げる。


 「がぁああーーーっ!いででで、はなぜーっ!」


 対格差があり身長の高いドルフを氷花は片手て持ち上げることは叶わなかった。

 それでもドルフとはいえ爪先立ちでやっとの状態で、氷花の手から逃れようと両手で必死にこじ開け様としているが、万力で挟められた如く一向に開く気配は無い。


 「ふーーーっ、りないと言うか、何と言うか……氷花殿、後はこちらで引き受けるので放してくれぬか」

 「了解しました」


 氷花は、ボルガに言われて締め上げてた手を放すと、ドルフは再び地面に戻されると膝を突いて圧迫された頭の痛みに耐えていた。


 「ぐそーーー……まだ、終わっちゃいねえぞ!」

 「よさぬか」


 再び氷花に噛み付こうとするドルフをボルガが手で抑える。

 ドルフよりもボルガの方が力があるのだろう、ドルフは押さえ込まれ地面に膝をつく。


 「次に我が主に危害を加えようとした場合は……」


 氷花は、あとの事をボルガに任せようと思ったが、自分の主に危害を加えようとした者をただで返すのも遺憾と思い、ゆっくりとした動作で修練場に置いてある巻藁(弓用)を持ち上げた。


 「次は、これでは済ませませんので」


 モーション一つ無しに腕の力だけで重さが40キロ近い巻藁が投げられる。

 その動作は、まるで紙クズをゴミ箱にでも入れるような軽い感じで


 投げられた巻藁は、放物線を描く事無く垂直に進み30メートル先の修練場の石の壁に、爆音を立ててメリ込むように突き刺さった。


 ドルフのみならず、さすがにこんな事になるとは思っていなかったボルガもその光景に目が点になる。


 「では」


 氷花は一礼をして修練場を後にする。

 残った二人は、その後姿を呆然と見送るだけだった。


 「お前は、とんでもない者を敵に回したな」

 「何なんだ、奴らは!」


 いち早く戻ったボルガは、ドルフに釘を刺すと困惑したような苦渋の表情でドルフは返す。


 「あの方……いや、あの方々は、マサキ様のお付の者で同じ様な事が出来る者が5人ほどいる」

 「あんなのが、5人も!?」


 力も速度も自分では到底かなわない者が5人もいる、力自慢のドルフには、これが絶望に聞こえたのかもしれない。


 「それにお前が動いた時、5人の長であるミナ様もいた、それにお前も気付いたであろう椅子にいた白い獣が戦闘態勢に入ってたことを、あの方は聖獣の真白様だ、そして魔女様も動こうとしていたろう?」

 「あぁ」


 アルフィーナが動こうとしていた事が、ドルフには少なからずショックを与えていた。


 「2人が動かなかったのは、どちらもマサキ様が手で押し止めていたからだ」


 マサキは、あの一瞬で左右の手のひらで動かないように2人にジェスチャーしていたので、2人は動けずにいた。


 「お前の行動で、あの場にいた全ての者を敵に回したのだ!ジニスもお前が殺されても仕方が無いと思っただろう」


 ボルガの言葉に返す言葉が見付からないドルフは、身体から力が抜け崩れるように地面に力なく座り込む。


 「ジニスには言っておく、すこしここで考えるがいい」


 そう言い残すと、ドルフを置いてボルガは修練場を出て行く。

 ドルフは一言も言葉を発せず、何かを考えるように1人地面を見ていた。


 「ドルフ、今日はフォートルの家で寝れる。ついて来い」


 どれだけの時が流れたのだろう、ジニスに声をかけられたドルフは、辺りを見回すとすでに回りは赤く夕方になっていた。


 「い、いや俺は、親父だけでも……」

 「いいから来い!」


 拒否しようとしたドルフをジニスは力任せに地面から立たせて引張る。

 引張られるドルフには、抵抗する力も無くジニスの後に付いて行った。


 フォートルの家では、フォートル達家族全員でジニス達を迎える。

 トキアの方は、リアレスの友人タロス家(頭角族)に泊まる事となった。


 フォートル達は、ドルフを攻めるでも問質すでもなく、何事も無かったかの様にいつも通りの様子で2人を迎え入れる。

 フォートルの家のお風呂では、大柄の獣人族である2人を入浴させるには無理があったので、近くにある銭湯にフォートルとジェナートは2人を伴い風呂に入りに行った。


 お風呂のあとは、フォートルの家で夕食となった。

 こちらもささやかながら、本日取れた秋の味覚満載の料理をメルザが料理して出す。

 フォートル達にとっては、何でもない日常の風呂や夕食だったが、ジニス達は大きな風呂に食べた事も無い豪華な食事に終始驚きの連続だった。


 そして、ジニス達は、見たことも無いとても柔らかい布団に寝かされて、その日の就寝となった。

 人族ようの布団では、やはり小さくて2人の手足は布団から飛び出していたが、2人は気にした様子もなく眠りに付く。


 「なあ、親父」

 「……」


 寝たはずのドルフは、隣で眠るジニスに話しかける。


 「俺は……何も考えずにあんな事して、親父に迷惑かけて本当にすまないと思っている」

 「……」

 「あんなにでかいお湯に浸かったのは初めてだ、それにあんなに上手い食事を食べたのも……」

 「……」


 ドルフは、目を開け天井を真っ直ぐ見てジニスに語りかける。

 しかし、ジニスから返ってくる言葉は無い、しかし、ドルフは言葉を続けていた。


 「ここでは、これが普通なんだな……こんなにも豊かな生活が、……それが全てあのマサキ……(様)ってのが、やったんだな」

 「……」

 「やっぱり、俺は間違ってんだな……」


 ドルフは天井をジッと見つめ、おのれが起こした行動に後悔の念をしているようだ。


 「……私は、お前が起こした行動について何も言わん、それは、お前自身が分からなければならないからな」


 ジニスは、息子ドルフの方を見る訳でもなく、まるで独り言の様に話を続ける。


 「ここの生活は、本当に裕福になった。全ては、マサキ様のお考えによるものが大きい」

 「……」


 ドルフは何も言わずにただ父の言葉に耳を傾ける。


 「ただな、フォートル達が言っておった。マサキ様は、マサキ様が全てを行なうのではなく、皆が技術を生かせる仕事にき、そして学び、その技術のわざみがいてゆく事が重要なんだ、と」

 「……」

 「私は今回、マサキ様に助力を請うた、しかし、マサキ様はフィルの村の全員の承諾が必要だと言った。そして、その承諾が得られたのなら、リアレスの村の人々が協力して事に当たる。なんせ自分の力は微々(びび)る物だから……とな」

 「……」

 「私はお前に強要きょうようもしない、強制もしない、お前が何を考えるのも自由だからな……ただ私は、フィルの村をこのリアレスの人々の様に笑顔で幸せに暮らせるようにしたいと思っている。私からは、それだけだ」

 「……」


 その後2人は、目をつぶりお互いに何も言わず

 ただ時間だけが、経過していった。


 まだ夜も明けぬ朝にジニス達は起きて出立の準備をする。

 準備を済ませ外に出ると、すでにフォートル達が外で待ってた。


 「やはり起きてたのか!」

 「うむ、お前たちが、そろそろ出ると思っていたのでな」


 ジニスとフォートルは、長年の付き合いでお互いの行動を共にお見通しのようだ。


 「これを持っていくといい」

 「これは?」


 ジニス達の目も前には、背負子しょいこと、そこに載せられた袋があった。


 「マサキ様がの、手ぶらで帰すのも何だからフィルの村にもって行くといいと言ってな、小麦や塩などを用意して下さった」

 「小麦、それに塩!?それもこんなに大量に!いいのか?」

 「構わん構わん、私が言うのも何だが、マサキ様からすれば微々たる物だ」


 トータルにすれば1人100キロ以上はあるだろう背負子を背負せおう。

 大柄な獣人族の2人には、それほど重荷にはならず背負い上げると、ジニスはフォートルに向き直る。


 「……すまない」

 「礼は、マサキ様にな……それと、道中腹を空かせると大変だからと、メルザが弁当を用意した頃合で食べてくれ」


 フォートルは、おむすび等が入った袋をジニスに渡す。


 「何から何まで、すまない」

 「うむ、お互いに良い結果を待っておるぞ」

 「ああ!」


 村を纏める苦労を知っているフォートルは、ジニスの肩を叩くとジニスも力強く頷く。

 ちょうどそこに背負子を背負ったトキラも合流し出発する。


 ただ様子を見に来たリアレスでアレだけの発展を見せられ、これだけの土産を貰いジニスはマサキに深い感謝の念と、フィルの村の人々への説得を絶対に行なうことを決めリアレスを後にする。


お読み頂き、ありがとうございます。

次回は、開拓の規模が大きくなります。と言うことは?

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