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26.リアレス開拓(夏祭り)

お疲れ様です。

今回は夏祭り編です。



――シューーーーーッ ……………… ドーーーーーーンッ!!!


 夏の夜空に火花による大輪の花が咲く。

 周りでは、「おおーーーーっ!!!」と驚きの歓声が聞こえる。


 今日はリアレスの村、始まって以来の夏祭りだ。


 別に俺が率先してやろうと決めていた訳ではない。

 全ては、村の人々からの提案で祭りを開く事になった。






 「えっ!夏祭りをしたいって!?」


 学校で授業を教えていると、子供達から夏祭りの提案が出される。

 突然の提案で驚いたが、どうやらミナの授業で教えている日本の習慣で夏祭りが取り沙汰ざたされたようで、それを受けての提案だった。


 「はい、僕達もお神輿みこしかついでみたいんです!」


 ポルトナが夏祭りに賑わう祭りの映像中に映ったお神輿を見て興奮気味に応える。


 「そうかー、たしかに夏と言えば夏祭りだな」


 俺も子供の頃は、お神輿を担いで神社に向かって練り歩いたものだ

 と言うことは、神社が必要だな


 「分かった、会議で提案してみるよ」

 「「「よろしくお願いします!」」」


 俺1人の決断で決めることではないので会議にかけることを言うと、子供達は一斉に頭を下げてお願する。





 「と、子供達がお祭りをしたいって言っているのだけど、そうかな?」


 開拓事業館の会議室で祭りの件を提案してみる。


 「大変よろしいかと、仕事をしている者達もよい息抜きになるかと」

 「たしかに、面白い提案でありますね」

 「うむ、祭りの趣旨を考えると、たしかに行なった方がいいな」


 リアレスの村の代表とも言えるフォートルとその息子ジェナート、そしてボルガが次々に同意の意思を示す。


 「そうか、でも裏方も必要だから、何人かは祭りを楽しむ訳にはいかないけど」

 「心得ております」


 おそらく開拓事業館で働いている者だけではなく、他からも人手が必要になるだろう事を告げると、フォートル達もその辺は分かっていたみたいだ。


 「やるならお神輿の他にも山車だしも出そう、後は屋台を数件、最後に花火も良いな」


 日本にいた時に体験したお祭りを思い出しながら、案を練っていく。


 「ですがマスター、この村には神社は無いので何に祀るのでしょう?」


 ミナの言う事も分かる。

 お神輿とは、神社にいる神様をお神輿に乗せて町を担いで歩き、豊作などを願うものだ。


 「うん、そこでミナにお願いしたい事があるんだ」


 一度案を練るのをやめてミナの方を向く。


 「ミナ、神社を作るから、そこに俺の故郷にあったあの祠の神様を迎えてくれないかな?」

 「っ!!」


 俺の提案は、神社を作り、そこに俺や祖父母達が毎年お祈りを捧げていたあの祠の神様を迎えるものだった。


 俺の家が代々崇めてきた神様だし、最後の一人が異世界にいるのでは寂しすぎる。

 どうせ神社を作るなら、あの神様を迎えたいと考えていた。


 「まあ、実際にあの店員さんを迎える訳じゃないから、そこの神社の宮司をミナにお願いしたいんだ」

 「私に……ですか?」


 神様に生み出されたミナなら適任と思ったんだけど、いつもは無表情のミナがめずらしく困惑している。


 「そう、ミナなら適任と思ったんだけど……ダメかな?」

 「いえ、マスターのご命令なら問題ありません」


 ミナも承諾してくれたので後は作業の割り振りと、神社を建設する場所の確保だ。


 それから数日は、神社の建設やお神輿、山車の製作に道の脇に出す屋台の選定をしていった。


 神社は、フォートル達が「この村初めての神様のお迎えなので大きくしましょう!」との提案がなされ、当初俺が考えていた神社は、村によくある本殿と拝殿が一緒になった小さいものを計画していたが、これを改めて本殿と拝殿を分けて神楽殿や社務所も付けたかなり大きな物を建設する事になった。

 また、神社を建てる場所は、村の北側に立てることを決める。

 ここは、以前俺が作ったこの村では大き過ぎる片側3車線の道路のちょうど北端に位置する場所だ。

 ここには、村に流れる小川が横切っていたので、境内けいだい入口の階段を上がって鳥居をくぐり参道を歩いていくと小川には橋が設けられて、その先に拝殿や本殿を造った。


 拝殿の前には、2対の狛犬を置いた。

 拝殿に向かって右の口を開いて威嚇している狛犬は、真っ白な石を集めて硬化させて造った。

 左側の口を閉じた狛犬は、茶色の石を集めて同じく硬化させたもので出来ている。

 この狛犬は、真白とチャコをモデルにしている。

 日本では、神獣だけどこの世界では聖獣でいいだろう。


 「ほーら、チャコ、お前もこの位大きく育つんだよ」

 「キューン……キューン……」


 チャコを抱き上げて茶色の狛犬の前に立って見せると、恐がって俺の腕の中に隠れようとしている。


 「反対側の白いのは真白がモデルだよ」

 「ウー、ワンッ!」『私はもっと可愛いいです!』


 真白からは、通信を通して抗議がきた。

 あくまでモデルだからと真白をなだめて、他の作業に移る。


 本殿は神体として、ミナに大きな丸い鏡を金属で作って貰いそれを納めた。

 俺なんかが作るよりもミナの方がいいだろう。


 神社が一通り完成すると、フォートル達を連れて完成披露をする。


 「ほう、これは何とも……」

 「おぉ……」


 絢爛豪華けんらんごうかではなく全体的に質素に造ったのだが、そのたたずまいはおごそかで神秘的な様相を見せていた。

 フォートル達もその雰囲気に圧倒されて声も続かずに呆然と見ていた。


 「なんとも不思議なものじゃな、この神社と言うものは」


 雰囲気に飲まれていないアルフィーナは、然として神社を見て回っている。


 「しかし、ミナのその格好は何じゃ?」

 「はい、この神社の宮司を務めるので、この衣装を着ています」


 皆に同行するミナの格好は、いつものゴスロリ見たいな服ではなく巫女服をその身にまとっていた。


 まあ、宮司さんが着る服よりは似合っているのでいいか


 そんなこんなで神社は完成し、お神輿や山車を御旅所おたびじょに安置すると、一通りの作業が終了する。


 「マスター、この神社の名前はどうするのでしょうか」

 「あー、またかー!」


 ミナの一言に俺は、名前を付けるという苦行が訪れる。


 「俺、あの祠の神様の名前知らないんだよなー、あー、店員さんに名前聞いとけば良かった」


 必死に神社の名前を捻り出そうとするが、良い名前が思いつかない。


 あー、どうしよう。神社の名前かー、石、ほこら、う~ん……ミナが宮司なんだよな。

 ミナの名前は、天之御中主神あめのみなかのぬしのかみ御中みなかをミナと読んでいるのだから……そうだ!


 「天之神社あめのじんじゃで!」

 「……」


 ミナは何も言わずに、アルフィーナやフォートルは、その意味するところが分からずに答えられずにいた。


 「はい、反対無し、決定!」


 こうして、リアレス、いや、この世界初めて建てられた神社の名前が決まった。


 まあ、この異世界にいる神様じゃ無いんだから、別に良いんじゃないかな?


 



 ある日、事業館で祭りの構想を練っていると、


 「お祭りの最後は、花火も打ち上げたいな」

 「お任せ下さい。メイド達と協力して5万発の花火を用意します」


 俺のそんな一言に反応したミナが、花火を用意すると言ってきた。


 でも、その数は多すぎるのでは?


 「出来るの?」

 「はい、問題ありません」

 「ん~……じゃあ任せる!打ち上げは、収穫の終了した畑を借りよう」


 ミナが問題ないといっているのだから、大丈夫なのだろう。


 そんなこんなで祭りの準備が順調に進み、当日となった。


 事前の取り決めで、お神輿と山車は学修校で学ぶ子供達が担当する。

 ただ、40人の子供達だけでは、お神輿を担いで更に山車を引くには人数が少ないので、今年夫婦になった、または夫婦になる予定の男達に山車を引かせる事にした。

 山車の中では、4人の子供達が、交代で2つの太鼓たいこを叩く事になる。


 「では、お神輿に神様を乗せましたので、いつでも出発できます」

 「「「おーーーーっ!!!」」」


 ミナがお神輿と山車の前で担当する者達に出発するように述べると、呼応するように背中に祭りの字が書かれた法被はっぴに袖を通した者達が声を上げて出発する。


 山車には、太鼓の他にスピーカを取り付けて笛の音色を奏でられて、それに合わせる様に和太鼓が子供達の手によって叩かれてリズムを取る。

 お神輿もワッショイ!ワッショイ!の掛け声とともに村中を巡っていった。

 村の人々は、お神輿が通る道に集まり、その熱気と迫力に歓声や拍手で迎える。


 子供達がお神輿を担いで村の中を回っている間、子供の親達は予定の地点で子供達の休憩の準備を行い。

 俺は、夕方から行なわれる盆踊り会場のため中央広場に移動していた。


 盆踊り会場は、日本でもよく見られるやぐらを組んだ舞台の周りを踊って回る会場にした。

 更に外回りには、屋台をけている。

 屋台は、綿飴わたあめ、リンゴ飴、焼きそば、たこ焼き、カキ氷、今川焼き、と各種食べ物の屋台と、射的に型抜き、スーパーボールすくいなど色々と用意してみた。

 本当は、金魚掬いも用意したかったのだけど、肝心かんじんの金魚がまだ見付かっていないので断念した。


 リアレス夏祭り の文字が書かれた提灯ちょうちんが色取り取り用意されて吊るされると、何とも日本のお祭りらしくなっていた。


 「準備は大体終わったかな?」

 「ふぉうふぁな、ふぉふぉんお、おふぁふぁのふぁ!」


 ある程度会場作りが終了して周りの状況を確認していると、今川焼きを頬張るアルフィーナが応える。

 口いっぱいに詰め込んでいるので何を言っているのかわからなかった。


 「アル、食べながら話さない!」

 「ん~……んぐ、んぐ、んぐっ!そうじゃな、ほとんど終わったのじゃ!」


 アルフィーナは、俺の指摘に口に入れた物を急いで飲み込み応える。


 「しかし、マサキの世界の祭りは、何とも面白いのう!」

 「まあね、面白いのは確かだね」


 盆踊りは、仏教の死者を供養するためとか、地方の風習、習俗など色々と言われていてコレだとは言えない。

 しかも、踊りやリズムは地方ごとに変化を見せて、多くの形式が作られ踊られている。


 俺の故郷もこんな風に会場を作って、皆で夢中に踊っていたな。


 子供の頃に体験し感じた懐かしい思いを蘇らせながら、周囲をもう一度見回す。

 屋台の方では、今、夕方に向けての料理の最終調整をしている。

 ミナやメイド達ではなく、村の人々に屋台は任せているので慣れない道具や調理方法に四苦八苦しくはっくしているみたいだ。

 先ほどアルフィーナが食べていた物も、最終調整のための試作品なのだろう。


 「あら!マサキ様、お一つどうですか?」

 「これは、マサキ様!どうぞどうぞ!」


 アルフィーナが食べていた今川焼きの屋台をのぞくと、中ではメルザとジェナートが夫婦で今川焼きを焼いていた。


 「ああ、頂くよ!そのこし餡を一つ頂こう」

 「はい」


 メルザが出来たての今川焼きを一つ取って、すぐに食べられる様に紙に包んで渡す。


 「どれ、ん!甘さも控え目で美味しいな!」


 今川焼きを一口頬張ると、中から熱々の餡が漏れ出る。

 多少熱さを感じたが、その餡の甘さが生地と合わさると餡の甘さが程よく抑えられて、良い塩梅あんばいになって口の中に広がる。


 「ありがとうございます。他のも食べますか?」

 「いや、いいよ、夕方になると忙しくなるけど頑張ってくれ」


 他にも、粒餡、白餡、チョコレートにカスタードと種類が豊富にあり、メルザが次を進めてくれたが礼を言いつつ断った。

 ただ、アルフィーナは粒餡をもう一つ貰い、真白はチョコレートとカスタードを一つずつ貰ってペロリと平らげる。

 他の見せの様子を見れば、試食の回数も増えるだろうから断ったのだが、本当にこの2人は良く食べる。


 出店している屋台を覘いて、多くの試食を行い会場の準備も整うと、着替えるために一度事業館に戻る。

 事業館に戻り着替えていると、ミナやメイド達も同じように戻ってきた。


 「お疲れ様、お神輿や山車は終わったの?」

 「はい、恙無つつがなく執り行われました。村内をくまなく見回った神体は本殿に移され、お神輿、山車とも現在は御旅所内に納められております」


 どうやらミナの方も問題も起こらずに終わったようだ。


 「舞花達もお疲れ様、どんな状況?」

 「はい、5万発の花火を全て設置及び配線接続は終了しました。また、打ち上げ場所周囲に人が入らぬように注意勧告の表示もしてあります。ただ、万が一もありますので、絶えずUAV(無人航空機)で上空からの監視も強化しています」


 舞花達、メイド5人には、夜に打ち上げる予定の花火の設置をお願していた。

 こちらも無事設置が完了して、打ち上げを残すのみとなったようだ。


 打ち上げには、ミナの通信機能で順次打ち上げていくので人が付く必要はない。

 だからと言う訳ではないが、どうせなら皆も裏方ではない祭りに参加して欲しいと思って、ここに集まってもらった。


 「じゃあ、みんな着替えて盆踊り会場に行こう!」






 夕日が山の背に隠れようと辺りが茜色に染まる中、リアレスの村始まって以来の盆踊りが開催される。

 18時ちょうどにスピーカーから、盆踊りの音が流れ出すと、前もって決まっていた者たちが舞台に上がり太鼓をリズムに合わせて叩きだす。


 村人たちも、その音に合わせて踊る者、屋台に夢中になる者、外側からその様子を見るものに分かれているようだ。


 「うん、やっぱり皆よく似合っているよ」


 中央広場に到着すると、もう一度浴衣を褒める。

 事業館で着替えて集まった時にも褒めたのだけど、夕日に染められたその姿にもう一度褒めたくなった。


 「まあ、のう」

 「マスター、ありがとうございます」「「「「「ありがとうございます」」」」」


 アルフィーナは褒められたのが嬉しいのか、照れくさそうに笑い

 ミナは、礼を言ってスッと一礼すると、一糸も乱れぬ動きでメイド達も後に続く。


 アルフィーナは、赤い生地に色取り取りの花を咲かせた浴衣を着ている。

 ミナは、白地にこちらも色取り取りの花を咲かせた浴衣を着ていた。

 メイド達の浴衣は、白地に各眼の色と同じ花が幾重にも花を咲かせている。

 ただ、真白は浴衣を着れないので花柄の生地を首にスカーフの様に巻いている。

 チャコには、バスケットの中に花柄をしたタオルが敷かれているが、今はそれをアムアムと噛んでいた。


 「じゃあ、みんな時間まで楽しもう!」


 時間が来るまで各々、思い思いにやりたい行動をとる。

 アルフィーナと真白は食に、ミナは射的しゃてきに型抜き、メイド達は踊りや太鼓を叩きに行き、俺はそんな屋台や会場の中を歩いて皆が楽しくしているのを見て過ごした。




 「マサキ!こっちなのじゃ」

 「うん、ありがとう」


 アルフィーナに手招きされて、ブルーシートの敷かれた芝生の上に座る。

 中央広場の中心は、盆踊り会場などに使えるようにコンクリートなどで地面を固めた会場にしてあるが、その周りは憩いの場として、今では芝生を敷き詰めた公園になっていた。


 ブルーシートに座ると、皆目線を少し上げて闇夜の空を見る。


 「そろそろかい?」

 「はい、打ち上げ開始まで、あと7秒です。5・4・3・2・1、始めます」


 ミナの言葉通りに遠くで打ち上げの抜けるような炸裂音が聞こえた。


――シューーーーーッ ……………… ドーーーーーーンッ!!!


 耳と、そして身体に響く爆発音と、夜空にまばゆいばかりの大輪の花が咲き誇る。


 「おぉーーーーーっ」


 村人も初めて見る花火に度肝を抜かれて、驚きの声を上げている。

 村人の驚きをよそに花火は次々と、息を継ぐ事無く打ち上げられていく。


 子供達は、大きく口を開けてその様子に食い入り、大人達も子供の様にはしゃいでいた。


 うん、夏祭りは、やっぱりいいな!

 ………………この後の片付けが無ければ。


 そんなリアレスでの初めて夏祭りの夜だった。






 祭りの後、神社でミナが1人後片付けをしていた。

 そこまで大変なものではなく、掃除や使った道具の手入れと片付けが残っているだけだった。


 道具の手入れをするために、箱に入っている道具を一つ一つ取り出して確認していた。


 ふと、何かを思ったのだろう、作業する手を止めて本殿にあるであろう御神体の方を見える筈も無いのだが、まるで見ている様に見詰める。


 「あそこで終わると思っていたのですが、まさか、こんな事になるとは……そして、私がその神社の宮司とは、何とも言えませんね……人の世とは、何とも面白い、あの子と居ると、これからも面白き事があるのでしょうね」


 ミナは、一瞬、ほんの一瞬、必死に祈る子供の姿を思い出し微笑をつくる。

 しかし、その微笑みは誰に気付かれることも無くすぐに元の無表情に変わり、目線を道具に戻すと手入れの続きを始めた。


お読み頂き、ありがとうございます。

次回は、秋の内容となります。つまりあの人達がリアレスに訪れるのです。


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