112.桜花国記(観艦式)
修正を繰り返したため、読み難くなっております。
その迫力にフォルフェバレクやニカナの関係者は度肝を抜かれた総合火力演習
富士の麓で行われた軍事演習は、各国の来賓に大いに印象に残った事だろう。
じゃあ次は?
決まっている。
山の次は、海!
海の軍事演習と言えば、観艦式に他ならない。
と言うことで現在、各関係者と共に相模國オーカスの沖に出ていた。
一面に広がる海には、邪魔する物が何も無く
本日この海で、桜花国軍による観艦式が行われる。
もちろん海上での観覧には船が必要だから、俺とフォルフェバレクやニカナの関係者、それと桜花国側内閣主要メンバーだけであれば、100名程度になり、その人数ならある程度の大きさ
がある船があれば良い。
ただし、一般の参加者と他報道等、警備、誘導の必要な人数を含めれば2000人以上
そんな訳でこれら全てを乗せられる船が必要となる。
もちろん複数の船に乗せれば問題は解決しそうだが、今回は相手(来賓)に大きな印象を与えたいと言う政府の意向もあり、これらの人数を全て内包しても十分余裕がある船を用意した。
その船とは、
空母 赤城
全長が500mほどの全通甲板の船体
これほどの巨体を持つ船なら、運動会も余裕で開けるほど広さがあり、波による揺れも感じる事もないと言う訳で観覧にはうってつけだ。
ちなみに移住計画発布時の30年以上前に使用された赤城は第1世代型で、今乗っている赤城は新造された第2世代型になる。
前者が300mほどの大きさだったので倍近くの大きさで建造されていた。
日本側地球の最大級空母でニミッツ級が330mだから、どれだけ大きいか分かると思う。
日本だと摩耶型の赤城だが、この桜花国では純粋に1から建造された船で同時期に姉妹艦として加賀も建造されていた。
つまり、赤城型空母1番艦 赤城 と、2番艦 加賀と言うネームシップになる。
あまりにも巨大な船体に各国の来賓は、それが船だと気付かずに海上へ動き出した時に一悶着あったのだが、まあいつもの如くフォルフェバレクの人々が騒いだだけなので問題は無い。
そんなこんながあり、今、俺とフォルフェバレクやニカナの関係者、それと桜花国側内閣主要メンバー、それに公募で見事当選した一般の参加者と共に船の上で観艦式の始まるのを待っていた。
「本日天気晴天なれども波高し」
とは、言ってみたものの今日の波は比較的穏やかでうねりも無い。
絶好の観艦式日和だ。
「それでは、観艦式を始めます。 まずは船首の先を御覧下さい! 我が国で最大口径の主砲を持つ戦艦、大和型1番艦 大和が参ります!」
本来の観艦式だと、栄誉礼などが行われるのだが、今回は来賓に配慮し早々に艦の説明と演習に入る。
アナウンスと共に全員が船首へと目を向けると、遥か向こうから迫る大きな艦影が目に入った。
波の煌きと光の加減でシルエットだけだったが、少しずつ近づくにつれその姿が露になると
「「「おぉっ!!」」」
会場から大きなどよめきが起こる。
圧倒的な船の大きさと、その主砲
それだけで胸が高鳴る人も少なくないだろう。
あれ? しかし、大和は、この艦隊の司令船
何で先頭なんだ?
まあ、今回は特別な観艦式だから、航行する船の順番を変えているのだろう。
そんな小さな疑問を吹っ飛ばすように船が近づいてくると、ある程度の距離に船が入った時同じく乗船していた音楽隊より演奏が開始された。
「ぶっ!」
「マサキ殿、どうかしましたか?」
「ゴホッ! ゴホッ! い、いえ、アイリス殿、お気になさらず、少しムセただけです」
嘘だ。
その音楽に導入部を聞いた途端、思わず噴出してしまった。
いや、吹き出すだろう?
だって、この音楽って……アレだよ? あの船が地球のために宇宙へ行って銀河を渡る有名なアニメのオープニング
たしかに今こちらに向かって来る船は、大和だけどさ……。
導入部から盛り上がる音楽
すると!
まるで音楽に合わせたように大和の主砲が一斉斜された。
もちろん空砲ではあるが、さすが46センチ砲、凄まじい音と白煙だ。
「「「うおぉぉぉぉっ!!!」」」
このタイミングでの発砲に会場は一気にヒートアップ、桜花国民は喜び続けとばかりに歌い出した。
一方フォルフェバレクやニカナの人達は、あまりにもの轟音に驚いているようだ。
「何か皆さん歌っているようですが……?」
「そうですわね……チキュウ? ウチュウ? 聞いた事の無い日本語です」
総合火力演習である程度慣れたアイリスとアヤカが言葉を交わす。
2人ともこの観艦式に参加している桜花国民だけでなく、桜花国側の内閣や官僚までもが一緒に歌っている事が気になるようだ。
「ええっと……そうですね、この歌は我が国の流行歌なんですよ」
「「流行歌?」」
「ええ、ですから我が国の民は、この良く知っている曲に乗って歌っているんです」
「なるほど」と納得するアイリスとアヤカ
苦しい言い訳だが、嘘ではない。
あのアニメを見せて説明する訳には行かないのでこれで良いだろう。
しかし、誰だ?
この曲を使ったのは!
全員ノリノリじゃないか!
ノリに乗っている曲に合わせ大和の巨大な船体が眼前を横切ると、大和の甲板では乗組員がこちらに向かって敬礼していた。
しかし何だろう?
見えはしないのだが、大和の艦橋から鬼気迫る迫力と言うか気配? がする。
まあ、それだけ演習に熱を入れているんだろう。
とりあえずその気配を無視して大和の後方を見ると、演習に参加する艦艇が続いて前進してきた。
アナウンスでは、各艦の艦名と船長、それとその船の能力などを紹介している。
各艦の紹介が終了すると演習が開始される。
艦隊運動から模擬船を使った実弾射撃など、日本では見られない内容が多々あり面白い。
フォルフェバレク、ニカナ関係者は富士で見た総火演と同じ様に船の速度、大きさ、その力に驚愕というか茫然自失の状態だった。
ちょっとやり過ぎた感はあるが、まあ、インパクトって大事だよね!
そう言えば……大和に乗っている司令官の名前を言っていたような……まあ、いいか! 後で聞いておけば!
俺は、この時、司令官の名前を後回しにして結局聞いたのは後々《のちのち》の事になるのだった。
さて、マサキが驚いた今回の選曲、空砲の発砲などの演出、艦の紹介順番などが決定した経緯を語ると、数ヶ月前の観艦式準備訓練に遡る。
大和会議室
ここに集められているのは、大和艦長と各担当責任者
そして、この艦隊の要でもある艦隊司令官 鏑矢中将 と、参謀の楓葉少将も同席している。
全員が椅子に座り一言も発せずに黙っているが、別に何もしていない訳ではなく現在会議に白熱していた。
彼等の思考の一片は、魔素通信で接続され架空の大会議室に置かれており、擬似的空間の中で各自の擬似的人型で会議をしているのだ。
電脳世界と言えば想像がつくかもしれない。
ただし、この空間にいるから現実世界の身体は無防備かと言えばそうではない。
魔素通信を使い脳の使われていない部分で情報処理を行い別意識で作業しているので、現実世界での意識もちゃんとある。
ゆえに鏑矢中将などは、同時平行に作業をしていたりしているのだが、この同時平行作業には脳への負荷があるので一般では用いられず現在は軍隊のみでの使用に限定されている。
それと魔素通信の接続も脳の成長が、ある程度達した12歳から任意で法令に基づきデバイスを取り付けられる。
ただし、一般では任意であるが、軍隊では魔素通信などが必須事項なので軍隊に入隊する場合は取り付けが義務になっていた。
そして、現在その会議において1人の女性が発言していた。
「今回は、我が王と他来賓両国がお越しになります。 ですからこの大和が先頭でその主砲を持ってお迎えする! これは必須です!」
「いや、鏑矢司令、たしかにインパクトは大事かと思いますが……」
「しかし、空砲とは言えいきなり主砲正射とは……前例にもありません」
カグラが大和主砲でお迎えする案を提案すると、他艦長などが難色を示す。
「そうですね……主砲だけでは盛り上がりに欠けますね。 でしたら音楽を流しそれに合わせ正射しましょう!」
「いえ、ですから……」
と、カグラの頭の中では、すでに大和が先頭で進むことが規定事項になっているので、艦長たちの難色の意味が
それ不味くね? → それだけでは、客が喜ばない! に変換されていた。
「チャイコフスキーの1812年では大砲を用いての発砲がありますが、あれはクライマックスでの事、今回の様にオープニングの早い段階では無理ですね」
「あの……司令?」
今回の観艦式で初めて艦隊に加わった艦長は、まるで自分達の意見を聞いてないカグラの様子に戸惑っていた。
こんな時に頼りになるのが、この中で1番軍歴の長い大和艦長 豪苗グルン中佐 獣人族(黒狼)である。
「あ~諸君! 私もこんな状態の姫様を見たのは初めてであるが、楓葉参謀より一言ある……どうぞ!」
「コホンッ! 姫様が、この状態になったら止められる人はいませんネ~、いてもココには居ないので無理無理デスネ! ですから皆さんは黙って従うのみデスネ~」
ヤレヤレと言った表情のウルタの様子に呆気に取られる艦長たち
もとからカグラとウルタと一緒に行動している大和の艦長や副指令などの将官、他の艦の艦長たちは、ウルタのそんな発言に苦笑いしかない。
「んん~……そうだ! 大和ならアノ曲が良いですね! アレなら曲の導入部から歌に入る時に主砲が発射できます! 大和、アノ曲を使って1番良いタイミングで主砲は打てますか?」
『はい、司令、計算では乗艦予定の赤城との距離を計算し数秒早く打てば可能です』
カグラの後ろに控えていた女性が言葉を発する。
名から分かるように彼女は大和の独立した人格を付与された人工知能で、擬似人型を取ってこの会議に参加していた。
「よし! それでは舞花、訓練内容に一部修正を加えて上申」
『了解! ……軍令部総長等、関係各課より監視承諾確認、後ほど修正したモノを各艦に送ります』
桃色の瞳を持ち黒髪ツインのメイドが迅速な手続きを完了すると、カグラは頷いて立ち上がる。
「では、この修正を加えた内容で訓練を行う。 我が王に捧げる初の舞台、各員の奮励努力に期待する! 以上!」
この言葉で締めたカグラの迫力は、他に意見すること能わず。
これにて会議が終了したのだった。
そして、当日
大和 艦橋
主砲が正射され、大和が赤城の横を通る。
「お~、赤城にアレだけ人がいると誰がダレだか分からないデスネ~」
「参謀、おそらく中央に御座す御方が、マサキ様かと……」
赤城に向かって敬礼するウルタが呟くと、グリンが代表して答えを返した。
『中央、マサキ様、拡大します』
「ッ!!!」
大和が気を利かせてくれたのだろう。
赤城の方向にある窓ガラスに拡大された映像が映し出される。
その時、全員が背筋を伸ばして敬礼を正したが、1人だけ電撃を受けたように動かない人物がいた。
「姫様?」
眼光が大きく開けられ、いつもと様子の違うカグラにグリンが声をかけるが、その声は上の空の如く応えずにただ一心にその映像に向かって敬礼しているカグラ
「姫様! ヒ~メ~サ~マ~ッ! こりゃ、だめデスネ……大和、代わりに指示します。 次の作戦行動を順次開始」
『了解しました、楓葉少将』
司令のカグラから次の指示が出ないので、その中の最高位であるウルタが代わりに指示を出す。
「それと、大和、何をアピールしたいのか分かりませんが、無駄に上部レーダーを回すのを止めるのデス!」
『……了解しました』
魔素通信を使い外部カメラで艦の様子を確認したウルタが、艦橋上部に付けられた回転式レーダー(補助機能)が凄い勢いで回っているのを指摘すると、何か思う所があったのか大和は少し
間を置いて返事を返す。
そして、赤城の横を抜け映像が途切れると、
「はっ!」
「おっと! 姫様がもどったのデス。 姫様、次の指示を」
「そ、そですね。 大和、所定の位置に各艦到着次第、演習に入ります」
『了解しました。 各艦の位置データを表示します』
と、まあ、観艦式は進み滞りなく無事に終了
多くの観客から歓声が上がるなど、演習は盛況の内に幕を閉じたのだった。
観艦式
見た事がないので映像を参考に想像するって難しいですね。




