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108.桜花国記(1日目を終えて)


 慌しい桜花国の見学を終えたアイリスとアヤカ達は、用意されたホテルに戻っていた。



 ■ フォルフェバレク


 アイリスは、ホテルで食事を済ませるとハルダーや外交官など心を許して話せる数名を集め会議を開いていた。


 「はあ~……」


 ハルダー達の前でアイリスは深い溜息をつく。


 「この国に着いてから、ず~っと驚いてばかり……本当に凄い所に来てしまいました。 軍務卿はどうです?」

 「はい陛下、たしかに陛下がおっしゃるように、この国は凄いものです。 これだけ魔道具が溢れ利用されているのを見れば一目瞭然です」

 「そうね、あの金属の大きな乗り物、この宿でも使われている階段を使わずに人を上に下にと運ぶ部屋、このあかり1つ取っても我が国では一般的に使われていませんね。 王族と一部の貴族なら可能ですが、これほど大規模に国全体で使えるほどの魔道具などあるはずも無い」


 今日までアイリス達は、様々《さまざま》な物を見てきた。

 船から始まり自動運転の自動車、エレベーター、部屋の蛍光灯、テレビ、ドライヤーと多くの物に乗り、手に取り実際に使っている。

 それらは、どれも便利であり自国にも欲しいと思う物ばかり。

 もし、これに慣れてしまえば自分は一生この国から出る事が出来ないと感じ始めるぐらいだった。


 「それだけでは御座いません、この国の食糧の多さ、それを収穫し運搬する魔道具、どれも我が国には無く、もしあったのなら我が国はどれほど富を得ていた事か……」


 ハルダーは、今日見学してきた食糧の生産施設を思い出して語る。

 どれも桜花では一般的な食糧でそれを収穫する農耕機械と運搬機械だったが、人が行うより遥かに早く多くを収穫していた事は衝撃だった。


 「特にこの国の道は恐ろしいものです。 どこへ行っても継ぎ目の無い一枚岩の様な物で舗装された道、これならば移動が早く多くの物を運搬できます」

 「そうですね、我が国とは違い大きく舗装された道、我が国でもっとも整備された道は王都であり、そのメインストリートがもっとも大きいですが、この国と比べると……」

 「それと女王陛下、お気づきですか? この国では至るところに金属がふんだんに使われています。 船や車、街の標識から街灯に至るまで鉄で出来ていました」


 日本と同じ様にここ桜花国でも様々な部分に金属が使われている。

 それは、王宮や政府の建物だけでなく、一般家屋から道などに普通に使われている事にハルダーは信じられずにいた。

 これがフォルフェバレクなら、一般に回すより軍隊の剣や鎧に回すからだ。


 「しかし、おかしい事が1つあります」

 「……? 何がおかしいと?」


 ここまで驚くしか無かったアイリスだったのでハルダーが言う、おかしい の言葉の意図する所を想像する事ができない。


 「はい、この国の軍隊です。 騎兵、歩兵、弓、槍などの装備、どれも確かに良い物でした、特に城は攻めにくい造りでしたが、わが国と比べてもそれほど大差たいさが無い様に思われます」


 ハルダーの言う軍隊とは、本日見学した姫路城や甲冑武者の行列や流鏑馬、早駆はやがけなどの率直な感想であった。


 「私に軍隊の事は分かりませんが、軍務卿はそう思うのですね」

 「はい、護衛部隊長のクロードとも話したのですが、同様の意見でして……もしかすると、この国は……」

 「……どうしたと言うのですか?」

 「あの……いえ……」


 ここでハルダーが言葉をにごした事にアイリスは一瞬疑問を抱いたが、すぐにそれが分かった。


 いくら密室と言えど、ここは他所よその国

 どこにこの会話を聞いている者がいるかもしれない。

 だからハルダーは、先を言うのを躊躇ためらっていた。


 「軍務卿、構いません! 思うところを言って下さい」

 「ハッ! この国は今まで外敵と戦った事が無いのかと……」

 「戦った事がない……つまり、戦争が無かった、と言うのですか」

 「はい、外敵がいなかったゆえに多々かっと事が無く、食糧の生産や運搬に力を注げたのかと……」


 ハルダーの見解は、桜花は外敵がいない平和な国で軍隊の増強よりも生活を豊かにする方向へ舵を切って来たのではないのか?

 だから軍隊の進歩は遅く、その分食糧や国民の生活を豊かにしてきたのだろうと予測を立てていた。


 海で見た船の発展は、運搬に力を入れたからで、戦艦と言っていたあの船は大きくとも力は無い見た目だけの船。

 なぜなら、あの船には弓や剣など武器を携帯する兵が1人もいなかったのだから……。


 ハルダーの予測は、今まで見て来た物を総合して考えたものだが、これは一部で正しく、一部で圧倒的に間違っていた。

 だがそれは、ここまで見てきた物だけであって、これから見る物ではなく。

 それを知った時、ハルダーは自分の思慮の浅さを恥じるのだった。


 「なるほど、軍務卿の話は分かりました。 ただ、まだ1日目、この先何が待っているのか分かりません。 護衛の者全員に相手をあなどり軽はずみな行動を取らない様に注意をして下さい」

 「もちろんです! 女王陛下の名をけがす様な者は、我が護衛部隊にはおりません!」

 「よろしくお願いします」


 そう言うとアイリスは、立ち上がり用意された自室へ戻る。

 自分の部屋に入ると、そこにはモニターに映し出されているアニメに夢中のアイリスが目に入る。


 もし、この国が軍務卿の想像を上に行く国あれば、私は……。


 その時アイリスは、一瞬苦悶の表情を浮かべていたが、


 「ああっ! 早くカードを差して変身して悪いヤツを倒おしてっ!!!」


 声を上げてモニターに向かって応援し出すクリスの声が、アイリスの思考を戻す。


 「クリス! あなたは王女なんですからもっと御淑おしとやかにしなさい! まったく、同じモノを何回も見て……何が面白いのかしら?」

 「お母様! 同じではありませんわ! これは心全開と言って2作目で、彼女たちが更にパワーアップした……」

 「はいはい、それよりそろそろ寝なさい! 明日も色々と見に行くのですから」

 「ああ、あと1話だけですから~~~~」


 アイリスに引きずられ部屋を後にするクリス

 そこに残るのは、クリスの悲痛な叫びと、友情を叫ぶモニターからの音声だけ

 こうしてアイリス達の桜花国1日目が過ぎて行くのであった。







 ■ ニカナ


 フォルフェバレクと違いニカナでは、アヤカを含め全員が部屋に集められていた。


 「なるほど、やはり大半の情報は今現在理解するのは無理な物ですが、すぐに実施すべき物も多いですね」

 「はい、造船技術、建築技術、政治手法、国民統制、ありとあらゆる物が先進的で我が国に導入出来ないですが、桜花国では、今のところほとんど使われていない例えば製造・建築でしたらのみかんな、寸尺などの規格、墨壷など今すぐに取り入れられるものがあります。 他にも鉋水車、風車の製造、灌漑かんがい整備の方法などは試作と実験が必要ですが、いずれも必要だと判断できます」


 アヤカは、専属の侍女である真瑠歌まるかより桜花国各地に派遣した文官から情報の取りまとめた物が報告に頷いてこたえた。


 「予算の都合上すぐには出来ない物もありますが、帰国後に即刻検討に入るべきですね」

 「はい、それと年月日、時間など我が国に無いものですので取り入れるべきかと……」


 今回文官が調べた暦は、太陽暦と太陰暦の両方であった。

 もともとニカナでは、太陰暦に近い概念があったが、今回導入を検討しているのは太陽暦である。

 これは、太陽暦の方が合理的だと判断したからであるが、概念として太陰暦も残される予定だ。


 「つきましては、帝様には元号げんごうをお決めになっていただく事になりますが……」

 「それについてはわたくし個人で決める事案で無いので帰国後に考えましょう。 ただし、和暦についてもっと深い知識が必要ですから派遣要員の先行を即刻行いなさい」

 「かしこまりました」


 それを受け真瑠歌が下がると、次に真瑠歌の妹、阿瑠歌あるかが前に出る。


 「他にも食糧の加工は素晴らしいものです。 味噌や醤油などは長期保存も可能で塩の入手が難しい地方では貴重な調味料となり、他にも乾燥食材などは飢饉対策に必要なものだと判断できます」

 「そうですね、民が飢えなくなる事、これは重要事項なので一刻も早く取り組みたい事です」


 アヤカが重視する項目は、まずは民の暮らしをより良くする事だった。

 だからこそ桜花に訪問したいと考え、そして、桜花に訪問できた今回は、今すぐ取り組める事を知識として多く持ち帰るつもりだ。


 「他に重要な食糧が……」

 「お米ですね」

 「はい、現在我が国の主食は芋や木の実などですが、もし、お米が生産収穫できるとなれば食糧事情は大幅に改善される事になります」


 今回桜花国への訪問で一番衝撃を受けたのが米であった。

 今のところニカナには、稲作の文化が無く、ゆえに畑を作ってもそこに植えるのは主食である芋などが中心である。

 生産までに漕ぎ付けるのは難しいものの、もし収穫出来る様になれば保存期間や保存面積に優れている米があれば、いざ飢饉があったとしても対応出来ると考えられた。

 もちろん日本の過去にあった米飢饉の問題点も理解しているので米のみに頼るつもりではない。

 その辺を理解した上でやはり米は、水資源が豊富であるニカナでは必要な食糧であった。


 「食べてこれほど美味しい食材でもありますし、是が非でもニカナの民に食べて欲しい物ですね」

 「はい、しかし、稲について我が国に有るかどうか……」

 「それについては、マサキ様に頭を下げお願してみましょう」

 「帝様……」

 「いいのです。 私には、米と引き換えにこの国が欲する物など想像も出来ません。 であるならお願いをして判断を預けるのが賢明でしょう」


 アヤカ以外もこの桜花国が何を欲しているかなんて想像する事など出来る者はいない。

 それほどに豊かで物に溢れるこの国は、彼女達にとって見れば神の国が如く別次元なのだから。


 「皆に1つ言っておく事があります。 今すぐに出来ない事だから学ばない、ではなく、今すぐ出来ない事だが将来、子や孫、その後の世代なら理解できる可能性があると思い学びなさい。

 この国で取りめも無い事柄でも必ず聞き学びなさい。 それが、我が国の将来を豊かにする手法かも知れないのだから」


 学ぶ事への重要性をアヤカは各員にく。

 それが、自分の愛する民のためになると信じて、アヤカ自身明日からも精力的に桜花から学ぼうと、より一層気を引き締めるのだった。


 何のアニメ? かと言うと、

 黒と白の衣装に変身して少女達が戦うアニメです。

 

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