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100.桜花国記(初めてのお客さん)


 桜花国歴68年 5月

 桜花国首都 武蔵国むさしのくにリアレス市 港(埠頭≪ふとう≫)


 晴れ渡る空、降り注ぐ太陽

 5月なので少し熱さも感じるが、風がほど良く吹いているのでそこまで暑さを感じる事無く海もまた穏やかに波を起伏させている。


 とても陽気の良いこの日

 普段は船舶や荷物が行きかい人々が働く港だが、今日はどうも違った様相を見せている。


 荷物や大型車、クレーンなど多くの機械が置かれていたそこには、全ての物が綺麗に移動され何も無い空間へと変貌

 そして、そこに並ぶ人々は、忙しく行きかう人も見られるが、多くの者は用意された椅子に腰掛け何かを持っているようだ。

 その整然と並ぶ人々の服装を見ると、スーツ姿の人々、儀礼用の軍服を着る軍関係者、その周囲には制服を身に付けた警察官がシッカリと警備をし少し物々しい感じがするが、それもそのはず

 本日は、桜花国建国以来初めて外国のお客様を迎えるのだ。


 「……まだか」

 「もう間も無く、入港してきます」


 ポルトナが呟くと、後ろに控える秘書官がすぐに答えた。

 そう、この先頭に並ぶスーツ姿の人物達はポルトナを初めとする現内閣閣僚達

 そして、その後ろには軍服に身を包んだ桜花国軍のトップ達

 今この埠頭には、桜花国の重要人物が集まっている。



 「う~む、そろそろだと思うのだが」

 「ええ……あっ! 見えました! あの船です」


 秘書官が沖の方を指を差すと、たしかに今白い豪華な客船が埠頭の中に入港してくる。

 それを確認したポルトナ達が、一斉に動き出すと他の者達も慌しく準備を始めた。


 そして、時間をかけ船が埠頭の端に横付けされると、上からタラップが下ろされその上に赤い絨毯が敷かれていくと、準備していた桜花国軍音楽隊が一斉に構え音楽を奏≪かな≫で出す。

 その音楽に合わせるように船の上からある人物の影がゆっくりと降りてきた。


 その降りてきた人物は、

 フォルフェバレク国 女王 アイリサルナ・フォルフェバレク その人だ。

 さらに後ろから王女 クリス

 その後にフォルフェバレク軍務卿 バルト・ハルダー伯爵

 少し間を開け、護衛の騎士達が続々と船から降りてくる。


 アイリスが地面に降り立つと、ポルトナが前に出て


 「ようこそ御出で下さいました。 私、桜花国内閣総理大臣 相生≪あいおい≫ポルトナと申します」


 一礼のあと挨拶をした。


 「内閣殿の事は、外交官殿から聞いています。 初めまして アイリサルナ・フォルフェバレク です」

 「これは、ご丁寧に……長旅で大変お疲れでしょう」


 アイリスの挨拶にポルトナがこう言ったのは理由があり

 アイリスやハルダー、それ以外の護衛の騎士達が明らかに疲れた、もしくは船酔いでもしたのか青い顔になっておりそれを気にしたためだ。


 「いえ……正直驚きました……いいえ、正確には今もなお驚いています。 これほど驚いたのは、今まで体験した事がありません」


 先ほどまで少し疲れた表情が見えたアイリスだったが、今は女王たる然とした表情に変わっていた。

 本来外交であるため疲れた様子など相手に見せないのだが、それが少しだけ見えたという事は今の言葉が彼女の本音なのだろう。


 「これは、失礼を……」

 「いえ、こちらの問題ですから……それと、クリスご挨拶しなさい」

 「はい、お母様」


 アイリスの後ろにいたクリスが、ポルトナの前に出てチョコンと礼をした。


 「お初にお目にかかります。 私は、クリス・フォルフェバレク、女王陛下の娘で御座います」

 「これはこれは、ご丁寧で素晴らしい御挨拶ありがとう御座います。 クリス王女殿下、私ポルトナと申します」


 ポルトナが挨拶すると、クリスは「はい!」と返す。

 その様子は、とても元気で他の大人達とは違うようだ。


 「クリス殿下は、お疲れで無いのですか?」

 「いいえ、疲れていませんわ。 と言いますより、ここまでとても楽しくて疲れる事も退屈する事もありませんでした」


 そんなクリスの様子に子供ゆえ体力が有り余っているのかと思ったポルトナだったが、


 「ん~~~~もう! 凄いんです! 食べ物は美味しいし、ゲームは楽しい!」

 「はぁ?」

 「それにそれに、あの魔道具、もにたー? でしたかしら? あれで見た動く絵が凄く面白くて! もっと見たいのですが、あまりハシャイでいるとお母様からお叱りが……」


 そんな子供本来の様子を見せるクリスにポルトナは、自然と笑顔で応える。


 「ほっほっほっ、アニメですか、残念ながら私はソレにあまり詳しくはないので……そうだ! 宿泊先でも見れる様に手配しておきましょう」

 「本当ですか! 嬉しい!」

 「クリスッ! 失礼でしょ!」


 喜びすぎたクリスを叱りつけるアイリス

 しかし、ポルトナは 「いえいえ、お安い御用です」とクリスがひ孫に近い年齢のせいかポルトナは、笑顔のままアイリスを宥めるのだった。




 「ゴホンッ、フォルフェバレクの軍を預かるバルト・ハルダーだ」

 「これは、遠路ご苦労様です」

 「うむ、今回は女王陛下の護衛として貴国にしばらく滞在するのでよろしく頼む」

 「ええ、こちらこそよろしくお願い致します」


 握手を交わす2人

 ポルトナは変わらず笑顔だがハルダーの方は、少し尊大な態度を取る。

 どうやら先ほど疲弊した表情を見せてしまった事を恥じ1国の軍を預かっている身なのでここはあえて居丈高に振舞っているようだ。


 「では、皆様を我が王の待つ王宮に案内いたします。 ええと……人数が少ないようですが……」

 「ああ、我が国の船をこの港に‘降ろす’と聞いたのでな、それの点検整備のため20人ほど残していく」


 女王達が乗って来たフォルフェバレクの船は、微生物などの検閲のため別に保管されていた。

 そのため先ほど降りてきた客船は、桜花で用意した客船だった。


 「なるほど、ではその人達はここに泊ると言う事で?」

 「そうだ」

 「分かりました。 では、その人たちのために宿泊施設をご用意いたしましょう」


 ポルトナが指示を出すと、それに従い関係者が動き出す。

 急な事だったが、どうやら客船等を使用してここに臨時の宿泊施設を置くようだ。


 「では、ご案内いたします。 馬車がよろしいでしょうか?」

 「? 当たり前だろう! 女王陛下を歩いて行かせる気かっ!」


 先に外交官から王宮までの距離を聞いていたのでハルダーは、バカにしているのかと憤る。

 しかし、ポルトナはまったくそんな気でなく。


 「いえ、あえて聞いたまでです。 お気に触ったのなら申し訳御座いません」


 すぐに謝罪し「どうぞ、こちらに」と待機させていた馬車に案内するのだった。


ようやく100話

次回は、視点の切り替わりが多くなります。


そう言えば、オリジナル戦記とタグにしておきながら、ここまで戦無し……。

大丈夫です。 必ず、かならずありますので!

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