99.桜花国記(一方、ニカナ国では)
途中で内容の変更、加筆を行っており文章の流れに乱れがあります。
ニカナ国帝城
今、この国は上へ下への大騒ぎとなっている。
それは、ニナカの村々、町は言うに及ばず帝城の中にも多くの人が集まり、ここ帝執政の場である広間にはアヤカの他大勢の豪族がアレヤコレヤと話し合っていた。
「帝様、急造では御座いますが、何とか大船の方を2艘造る事が出来ました!」
「それは、良い事です。 船には予定通りの人数が乗る事出来ますね」
「はっ! 桜花の船を見よう見まねで造りましたので彼の国の船ほど大きくはありませんが、1艘に25人は乗る事ができます」
「それは吉報です」
1人の豪族が、和紙に書かれた船を前に出すとアヤカは微笑み頷いた。
和紙には、マサキや外交官がニカナに乗ってきた船に近い姿の船が書かれているが、幾分桜花のモノより小さい様だ。
「これより船員の訓練になりますが……本当に沖まで出るだけで、よろしいのですか?」
「それについて外交官殿との話し合いで決まりましたから問題ないでしょう。 それよりも訓練は、しばし待ちなさい」
「は?」
桜花への訪問が決まり本来だと、ただちに船の操舵を習得するため訓練を行わなければならないのだが、アヤカは逸る豪族を抑えるようにマテをかけたので豪族達は首を傾げる。
「あなたも知っているでしょう。 現在、我が国では日本語が書ける人材で執務を担当するだけでなく、建築、農業、漁業など他分野に才のある者を探している事を」
「ええ、知っています……もしや、その人材に操舵技術を習得させるのですか!」
「その通りです」
「しかし、帝様! 船の操舵技術も大事な国の礎となります。 それを文官に任せる事は……」
アヤカの前に侍る豪族達は、少々怪訝な表情を浮かべる。
それは、アヤカを中心としたニカナ国は、周囲の列島全土を掌握している訳ではなくまだ抵抗を見せる部族も存在していた。
しかも帝城を離れれば離れるほど、そういった部族の力が強力となっている実情がある。
そのため武力にもなる船の操舵技術
これを一刻も早く自分達のモノにしたいと豪族達は思っていたからだ。
「皆の言いたい事は分かるが、今回だけは許して欲しい。 我が国は、桜花国に学びに行く訳で遊びに行くのでは無い! 彼の国で多くの事を学び我が国将来の糧する……そのため今回は、
技術文官のみを連れて行く!」
「なんとっ! 帝様は、ご自身の護衛をどうするつもりですか!」
「いりません、文官のみで結構! ただし、私の身の回りを見て貰うのに侍女を2人連れて行きます。 もちろん、この2人の能力は折り紙つきです」
「……しかし」
「いりません!」
幾人かがアヤカの言葉に食い下がるが、アヤカが考えを曲げる事は無い。
それほど今回、桜花への訪問の重要性を認識しているためだ。
その認識の源は、マサキ達の訪問にあった。
彼女は、マサキの乗ってきた船、土産の数々、着ている物、それに何よりマサキ自身の立ち振る舞いを目の当たりにし、自分達に何か欠けている物を感じたからだ。
そして、それと同時に自分だけでは学ぶ量に限界がある。
それを打開するためには、多くの文官を連れて行き見聞させ書物に書き写させる必要だと感じ現在の人材発掘に至っていた。
「もちろん、あなた達も同様です。 能力が低ければ同行まかり成りません!」
「何ですとっ!」
これには多くの豪族が驚く。
異国に自国の頂点である帝を向かわせるのに、武勇秀でる者を付けないとはおかしいと考えていたからだ。
ただし、これにもアヤカはキッパリと答える。
「先にも言ったでしょう。 遊びに行くのでは無いと! 文字の書けぬ者は論外です」
「ですが、初めての異国訪問、万が一もありえます」
「それにマサキ様は、招待すると言いました。 私は、あの方の言葉を信じています」
マサキと直接話したアヤカには、信ずる何かを感じたようだ。
それは、ここにいる豪族全員同じ様で返す言葉も出ずにいた。
「恐れながら帝様」
そんな中、一番先頭にいた初老の男性が前に出る。
彼は、御津萱 葉津理と言う名で先代の帝から仕える最古参の豪族だ。
そんな彼が、伏してアヤカに言上する。
「帝様お決めになりし事、一同異論は御座いませんが、つきましてはお願いが……」
「何でしょう?」
「この年寄り余命往くばかりも御座いませんが、最後のご奉公にと帝様に付いて行きたいのですが……」
弱々しく言う御津萱だが、この者を年寄りと侮る者などここにはいない。
先代からの古参と言うだけでなく軍の戦闘指揮能力など秀でた才を有し政治的駆け引きも得意としており今まで帝城を守ってきた力は、この者の力が大きかった。
さらにアヤカが最も信頼する人間の1人でもあるから当然だ。
「……分かりました御津萱、あなたを連れて行きましょう」
「おお、ありがたき幸せ」
アヤカの言葉を聞いた1番前の古参である御津萱が頭を下げると、その場にいた全員伏して受け入れる。
もし文句を言おうモノなら、この爺さんが睨みを利かせるので他に有無を言わせないからだ。
「もちろん、あなたもですよ。 能力低ければ御津萱も連れて行きませんよ」
「そんなっ! 帝様、後生で御座います」
御津萱が慌てるのを見たアヤカは、「冗談です」と扇子で口元を隠し笑う。
これには御津萱も笑うしかなく会議で騒然となっていた場も一時和ませるのだった。
豪族との謁見を済ませたアヤカは帝城の庭を歩いていた。
まだまだ決めなければならない案件が山の様にあり忙しい身のアヤカ
庭には、胡蝶蘭の花が咲き乱れており、その目にも鮮やかな光景にアヤカは一時の繁忙を忘れていた。
そのアヤカの様子に申し訳無さそうに2人の侍女が前に出る。
「帝様、御休憩のところ大変申し訳ないのですが、御意見よろしいでしょうか」
「ええ、構いませんよ、何かありましたか?」
この侍女達は、先ほど豪族達に連れて行くと言った二人の侍女だ、
背格好一緒であまり感情を表に出さない顔、それでも美人な双子の姉妹
姉 真瑠歌
妹 阿瑠歌
と言う。
この2人は、知識のみならず観察力や洞察力に優れており、アヤカの両腕として幼きころより育ったエリートである。
「ありがとうございます。 今回お乗りになる船についてです」
「船? 先ほど1艘に25人は乗れると言っていましたが、無いか問題でも?」
「問題では御座いませんが、今回帝様が御乗船になる船ですので何か他との違いが必要と感じまして」
彼女達が最も敬愛する帝、その帝が乗る船なので船との差別化をするべきだと考えていた。
もちろん彼女達以外、御津萱などの豪族達も同様の意見であったが、桜花へ訪問が差し迫っている中、今から船を豪華に装飾するわけにも行かず悩んでいたのだところ自分達で答えを見出せずにいたため侍女
である2人に帝の意思を確認させた経緯である。
「そうですね……でもマサキ様がお越しになった時は船を特別豪華にした訳でもなく、いつも外交官殿が来る時と同じでしたよ?」
「……そうですが、近くで民も見ているので帝様が乗っていると分かるようにしたいのです」
アヤカは特に気にしていないが侍女や豪族達は、ある程度国の体面に気にして欲しいとアヤカにそれとなく伝えていた。
「困りましたね、だからと言って何かある訳でも……っ! そう、マサキ様の乗って来た船には、旗が掲げられていましたね、五枚の均等な花弁を持った花の……」
「山桜と言う花だそうです」
「そうそう、何でもマサキ様の家を表す花だとか」
桜花の船には、誰が乗っているか分かる様に旗を揚げていた。
これは、指揮官旗などがそれに当たるが、王家が乗船した場合も揚げており、マサキやアルフィーナ、真白や夜空にそれぞれの旗が割り振られている。
そして、王であるマサキが乗船した場合は、マサキの家紋である山桜を掲げる決まりになっていた。
それを思い出したアヤカは、目の前に咲く胡蝶蘭の花に手を添える。
「彼の国の王を表すのに花を紋章としているのですね……でしたら、私もこの蘭を紋章としましょう。 桜に蘭、なかなか似合いではありませんか」
アヤカは桜花に学び自分の家の家紋を蘭にした。
これは、ニカナが桜花に学び手本とするためであり、先の未来においても両国の縁が失われる事の無い様にと願いを込めての事だった。
この事により以後、ニカナ帝室の紋章に蘭が使われる事になる。
そのアヤカの想いは今後続くニカナ帝室に連綿と受け継がれて行く事となり、その後に起きる大事件に帝室としてどう動くかを決める礎となるのだった。
説明不足と思い、少し解説
中国大陸では古来、四君子がありまして、それぞれが四季を司っています。
蘭が春、竹は夏、菊が秋、梅が冬となります。
紋とすれば、別に松竹梅があるので竹と梅を除きました。
後は、蘭と菊ですが、ご存知のとおり菊は、御皇室の紋章ゆえ蘭にしました。
もっと説明文を付け加えればと感じております。
次回、100話
フォルフェバレクとニナカからの客人を桜花国に迎えます。
(100話はこれだっ! と思っているので変更はございません)




