97.桜花国記(桜花ーニカナ条約調印)
ザナキ、ナミとの挨拶後も式は進み、各首脳陣との挨拶や持参した品々の引渡などを行った。
特に喜ばれたと言うか驚かれたのが、お土産として渡した品物だ。
量や品物はフォルフェバレクと同じ内容なのだが、色取り取りの反物は女性陣のみならず男性人からも驚きの声が上がり、
日本刀や酒に対しては、目を見開き溜息をつく者や声に出されてはいないが、自分も欲しいと喉から手が出る様な表情をする者が多かった。
フォルフェバレクよりも驚きの声が多いのは、現在のニカナの文化レベルを考えると、そうなるのは仕方が無いかもしれない。
この様に一時騒然となるような事もあったが、その後の式は条約調印まで滞りなく進んだ。
「では、アヤカ帝様とマサキ様の御名前を頂く事により、この条約に効力が発揮されます」
桜花の外交官から説明を受け両者の前にある2つの書類が置かれる。
書類の方はフォルフェバレクの時は羊皮紙だったが、ここニナカでは和紙の巻物での署名となった。
書き込む和紙の部分はニカナ産の和紙だが、外側の布地の部分は桜花で作った物だ。
なぜ、こうなったのかと言えば普通の和紙のみだと、虫食いや音湿度などの環境変化で劣化や損傷をしてしまう。
そのため外側の部分を桜花が作る事により、防虫と環境変化へある程度対応できる素材を用意できた。
もちろん未知の素材ではなく、防虫防腐剤や炭など一般的なもので構成されている。
もっとも、その塗布方法や封入方法などは、緻密なので今ニカナで再現しようとしても無理な仕様となっている。
書類には今回の条約がすでに書き記されており、あとは2人名を書くだけだ。
ちなみに書類は縦書きで日本語となっている。
俺は筆を取り滑らす様に名前を書き記す。
アヤカも同様に署名している。
まだ、文字を覚えて間もないはずだが、想像していたよりも達筆で驚いたほどだ。
ちなみにアヤカの名前は、淤母陀琉 阿夜訶と言った感じになっている。
なんか夜露死苦みたいで大昔の不良の様だが、これは文字を教えた我が国の講師が現在使っている名前の響きに漢字を無理やり宛がったためだ。
今後ニカナの人々が、文字の意味を理解していけば音の響きなどから名前を変えていくだろう。
お互いの名前が入った条約を確認し、それぞれ1巻ずつ受け取りこれで終了となる。
「さて、これにて条約の全てが終了しましたね」
「ええ、そうですね。 ただ、先ほどの事といいマサキ様達に学ぶことが多く、また、自分達がいかに遅れているのか身に染みました」
先ほどと言うと、お土産の事かな?
物自体は、そこまで珍しい物でもなく時代的には、戦国時代だと用意できる品物がほとんどだ。
ただ反物の織り方や鉄の鋳造、鍛造など現在のニカナの技術力だと難しいためそう感じるのは、やむを得ない。
「ですから自らの事が歯痒く、マサキ様の国である桜花が、どんな所か、どの様な文化なのか興味が胸から溢れています」
「我が国ですか……まあ……たしかにそうでしょうね」
アヤカの胸の内は分からないでもない。
いままでニカナ以外の国と接触した事が無く、初めて交流を持った国が自分の国より進んだ文化があると感じれば興味は尽きないというものだ。
「もし……もし、よろしければ、私は桜花を一目見てみたいと思っているのですが、だめでしょうか?」
奇しくもフォルフェバレクと同じく桜花を訪問したいと言うアヤカに前回同様、内閣に魔素通信で対応を検討させる。
なぜ毎回内閣の意向を聞くのかと言えば、俺が優柔不断だからではなく憲法で国民の代表たる内閣に国の舵取りを任せているからだ。
それを無視して筋力を振るえば独裁であり、そんな事をすれば国民の信頼で出来ている王の位は崩壊する事だろう。
ただし、それを唯一出来る場合があるのだが、今のところ必要は無い行為だ。
ポルトナからの返事は、是で時期と情勢を考えるとフォルフェバレクと同時に桜花に迎えるのが好ましい。 との事だった。
「分かりました。 我が国にご招待いたしましょう!」
「それはっ! ありがとう御座います」
「ただし、あまり大人数だと迎えも大変ですし……そうですね、その辺は外交官と調整して頂きたいですね」
「ええ、もちろんです。 突然の無理な申し出にもかかわらず御対応頂き感謝に絶えません」
アヤカは、涙を流さんばかりに喜んでいた。
これが、今後ニカナの運命を大きく変えるキッカケとなるのだが、それが分かるのは、まだ先の事。
その後、条約を締結した一行は桜花への帰路につく。
その桜花では、フォルフェバレクの女王とニカナの女帝を迎えるため内閣と外交官、それに各省庁が文字通り東奔西走に駆け回る事に。
そして、桜花というファクターが、世界にできた事によりフォルフィバレクとニカナだけでなく世界を大きく揺り動かす事になるのだった。




