第7話 〜私のせいだ〜
第7話 〜私のせいだ〜
「・・・というのが昔の音ゲー部だ。」
縦皿は一通り話し終えると買ってきた飲料水を飲み一息ついた。
「へぇ、その丸池って人がいなければこの部も存在しなかったんですね。」
「でも今の所部活を辞める理由がわからないわ。寧ろその丸池さんが1番部活を楽しんでたんじゃないですか?」
「話にはまだ続きがあってだな。」
縦皿がそう言って昔話を再開しようとした。
すると誰かが来たのか部室のドアが音を立てて開いた。
「そこから先は私が言ってもいいですか。」
そこにいたのは2年生にしては少し小柄で部内一寡黙な少女が立っていた。
「三井、いたのか。」
「すみません、入ろうとしたのですが丸池先輩の話をしていたので少し躊躇してました。」
「でも大丈夫です。私の口から事の真相を言わせてください。」
三井は今から話す内容をみんなに伝える決心をし、重たい口を開く。
「全部、私のせいだ。」
あれは去年の夏休み、学校がない日はわざわざ部室に行く必要もないから部活動は実質休みとなっていたが家にいても特にやることがないのでクーラーの効いてるゲームセンターへほぼ毎日通っていた。
そして丸池先輩も私と同じかそれ以上の回数ゲームセンターに来ていた。
そこで私は折角なので先輩にボルテの特訓を付き合ってもらうことにした。
先輩の方が若干上手いので私は常に2位だったがそれを越えるべき壁として日々努力を重ねていった。
そんなある日、私は少しずつだが先輩のスコアに近づいていくのを感じた。
努力の成果が見えてきた私はモチベーションが上がっていき周りが見えなくなるほどにボルテに熱中していた。
そう、周りが見えていなかったのだ、当時の私は。先輩の異変に気付いていなかったのだ。
私の成長とは裏腹に先輩は伸び悩んでいたのだ。
どうやらボルテの過剰なインフレやⅡで新しくでたロングBTオブジェクトやチップFXオブジェクトに未だ慣れなくゲームの進化についていけてないようだった。
そして夏休みも終盤に差し掛かった頃、私はついに魔騎士に昇格することができた。
先輩はおめでとうと言ってくれたがその笑顔は少し引きつっていたようにも見えた。
先輩はまだ麗華のままで、すぐに追いついてやると意気込んでいたがその言葉にも覇気があまり感じられなかった。
先輩は必死に努力していた。レベル14のクリア曲を増やしたり苦手なロングBTオブジェクトやチップFXオブジェクトの練習、ツマミ曲の譜面研究など様々なことをやっていた。
先輩は来る日も来る日も練習をしていた。
鍵盤の練習、ツマミの練習、ソフランの練習、練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習練習。
しかし上手くなる気配はなく、ただただ時間が経っていった。
ある時、私は先輩に久しぶりにマッチングしようと言った。
今の先輩はボルテを楽しめてないように見えたから昔を思い出してもらいたかった。
先輩はいいよとだけ言ってe-passを筐体へかざした。
私は兎に角昔のようにやろうと考え先輩と一緒にプレーした想い出の曲を選曲していった。
しかしそれが間違えだったのかもしれない。
先輩は練習に練習を重ねた結果"癖"がついていたのだ。
先輩の実力は以前と比べ変わってないどころか少し落ちていたのだ。
その事に気付けなかった私はそんな先輩に魔騎士と麗華との実力の差を見せつけてしまっていた。
「・・・まあこんな日もありますよ。今日は上手くいかなくてもまた明日やれば・・・」
「・・・こんな日しかねーよ。」
「・・・え?」
今までの先輩が言うとは思えないほどの憎悪の籠った声に私は唖然とした。
「どんなにやっても、どんなに練習しても上手くならない。上手くならないどころか出来なくなっている・・・こんなんじゃ明日やっても。」
「だ、大丈夫です!先輩はきっと、いや絶対上手くなります!だから・・・」
「お前に何がわかるっていうんだ!」
先輩の怒号に私は初めて先輩への恐怖心が芽生えた。
「・・・すまない、三井は悪くないのについ当たってしまった。ダメだな俺は。」
今日はもう帰るといい先輩は立ち去っていった。
その後、ゲームセンターで先輩を見ることはなかった。
三井が話し終えると部室は静寂に包まれていた。
縦皿は部長として重い空気の中口を開く。
「それから丸池は音ゲーに対してのモチベーションが上がらないといい残し私を新部長に推薦した後退部届を出した。これがこの話の全てだ。」
予想を超えた壮絶な内容に1年生は誰1人声を出すことが出来なかった。
そこで音也が先陣を切って縦皿に質問する。
「丸池さんはボルテ以外の他の機種も、その、伸び悩んでたんですか?だから退部を・・・」
「いや、そんなことは無かったはずだがマルチになると言ったのにボルテが出来なくなったからケジメとして辞めたのだろう。」
「そんな、そこに拘らなくても音ゲーを楽しめばいいじゃないですか!」
続いて飛鳥が口を開く。
「まあそうなのだが、三井の件もあったしこの部に居づらくなったのかもな。」
「音ゲーを誰よりも好きだった人がこんなことになるなんて、悲しいよ。」
未来がいつも以上に大人しく、小さい声で感情を漏らす。
「こんなことが、あっていいのか・・・?」
最後に太田がなんとも言えない感情で独り呟いた。
これが過去の音ゲー部の闇もとい真相というわけです。
今回は結構シリアスになってしまいましたね。
いやはや癖というものは本当に恐ろしいです。
やり過ぎて出来なくなるっていうのは理由を知らなければ精神的にかなりきますからね。
癖の存在を知らない人は何故出来なくなったのかがわからないから放置するという考えがなくそのままやり込んで負の連鎖に陥ってしまうんですよね。
因みに私は現在クッキーに癖が付かないかびくびくしながら十段に挑戦しています(笑)
今回はこの辺にしておきます。
それではまた次回。




