第6話 〜私と先輩〜
第6話 〜私と先輩〜
私は1人でいるのが好きだ。誰に左右されることもなく自分の世界に没頭出来るからだ。
昔から私は他人との交流を拒絶して来た。しかし私は不良でも無ければ引きこもりでも無いので学校行事などは止むを得ず参加している。
その学校行事の所為で私のストレスが蓄積されているのだが、私はそんなストレスを吹き飛ばすものを知っている。
それは、SOUND VOLTEXだ。
たまたま寄ったゲームセンターで見つけてプレーしてから私はこのゲームの魅力に取り込まれた。
奥からノーツが速い速度で来る疾走感に決して大きくは無いがインパクトのある筐体、そしてメタリックでカッコいいデザインに私は惚れたのだ。
それに音ゲーは自分との戦いであり私にぴったりのゲームなのだ。マッチング?私には関係無いね。
今日も今日とて自分のスコアを伸ばすためボルテをやり、マッチング画面を飛ばすためFXボタンを押そうとした。が、
ブブブと持っていたスマホが鳴り出した。
私はFXボタンを押すのを忘れメールを確認、しかし届いたのは某動画サイトのどうでもいいメルマガだった。
私は気を取り直し画面を見る、しかしそこで異変を感じる。
なんか上に他の人の名前が出てるんですけど。
どうやら私がメールに気を取られてた間にマッチングしてしまったらしい。
まあたまにはマッチングもいいか、と思っていたらいきなり隣の人に声をかけられた。
「あ、すみません。マッチングしちゃいましたね。被せたつもりじゃないんですけど、隣同士でマッチングするのはなんか気まずいですよね。」
どうやらマッチング相手は隣でゲームをしていた男の人らしい。
人との関わりを避けて来た私は当然ながら他人、それも知らない人と話せるコミュ力なんぞないので「あ、はい。」としか答えられなかった。
冷静になりマッチング相手を見てみると、どうやらスキルアナライザーは天極であり私と同じくらいのレベルのようだ。
同レベルだし私の実力も他と比べてどうなのかという興味もわいて来たので相手を全力で潰す気持ちでゲームをした。
結果、私の負けという形でその(私の一方的な)勝負は終わった。
「・・・お強いんですね。」
ふと私の口から無意識に言葉が出た。
「いやぁ、それほどでも。あなたもよく努力してらっしゃる。この曲でこのスコアはなかなかですよ。」
確かにリザルトを見ると私のレベルからみたらこのスコアはなかなかのものだ。しかし、これは自分の力だけで出したものなのだろうか。
いつも1人でやっていてこのスコアが出るのはまずありえない。となると、原因は恐らくマッチングしたことによる闘争心の働きか。
「あの、ここにはよく来るんですか?」
今までの自分がみたら驚きのあまり倒れるんじゃないかというほど私は他人と話していた。
「まあね、ここは我が部活の活動拠点でもあるからね。」
「部活?」
「おっと、紹介が遅れたね。俺は丸池っていうんだ。音ゲー部の部長をしている。」
これが私と先輩の出会いだ。
「へぇ、私の学校にそんな部活があったんですね。」
「まあね、去年新設したばかりだし。」
どうやらこの人は私の学校の先輩であり音ゲー部という部活の部長らしい。
他にもボルテ以外にも他のゲームをやっているようだ。
「君もウチの部活に入らない?同志がたくさんいて楽しいよ。」
「いえ、私は・・・。」
この短時間で先輩とは話すことが出来たがやはり私は人との関わりを持つのは遠慮したい。
部活なんて行ったら自分のことをやる時間が減るし人に気を使うのが億劫だ。
「まあ俺も無理には誘わないさ。でもここで話す分にはこれからも続けていいかな?」
本来なら今回で御免被りたいが、不思議とこの人と話すのは嫌じゃない。
「・・・わかりました。」
なので私はとりあえず承諾した。
それからも私と先輩のゲーセン仲間という関係は続いていった。
先輩との会話をしていくうちに段々と他人との距離を縮められる気がしてきた。
マッチングも暇なときにはしたりと自分でもわかるくらい成長をしていた。(ただ、大体マッチングするのはゴリラたちなのだが)
そんなある日、先輩は部活動の話をしてきた。
「ウチの部員は偶然にもそれぞれ得意な機種がばらばらでさ、その得意な機種を専門機種としてその腕を極めたり人に教えたりするようになったんだ。」
先輩は部活の話をすると凄く楽しそうで、みんないい人たちなんだなってことが伝わってくる。
「話を聞く感じボルテプレイヤーがいないみたいですけど、先輩がボルテ専門になるんですか?」
私は何気なく聞いてみた。
「いや、俺はボルテ専門じゃないんだなこれが。」
「え、じゃあどれですか?」
私が聞き返すと先輩はニヤッと笑いこう言った。
「俺は全機種専門だ。所謂マルチってやつだな。」
「マルチ・・・。」
全機種を専門とするということは全機種を他の部員と同レベル、それ以上にするということだ。
先輩が圧倒的に上手いのなら出来なくもないが話を聞くところみんなその専門機種は先輩にも引けを取らないみたいではないか。
先輩がやろうとしていることは誰しもが憧れる勉強や運動や友好関係など全てのパラメーターをカンストさせている完璧な人間のようになることと同じである。どれ程の努力を要するかは私程度では計り知れない。
「本当に大丈夫なんですか?部長だからって無理してるんじゃ。」
私は心配してそう言うと先輩はニコリと微笑んだ。
「心配するな。俺はマルチになる、音ゲーが好きだからな。」
その瞬間私は理解した。あぁ、この人は本当に音ゲーが好きなんだな。とんだ音ゲーバカなんだなと。
「さて、そろそろ帰ろうかな。また明日ね。」
そう言って先輩は立ち去ろうとした。
「ッ待って!・・・ください。」
私は先輩を呼び止めていた。先輩は足を止めこちらへと振り向いた。
「ボルテプレイヤーがまだいないんでしたよね。」
正直まだ人と話すのは好きではない。
「でしたら、その・・・。」
でも、こんな純粋に音ゲーを楽しめる人がいるような部活なら、
「私がなります。・・・その部活唯一のボルテプレイヤーに。」
入ってもいいかな、なんて思った。
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「おっす、お前らにいい知らせがある。」
「なんだまた急に。」
「どうせまたスコア更新したとかそんなんじゃないでしょうね。」
「ちげーわ、新入部員だよ。」
「え?この時期にか?」
「珍しいネ。もう7月なのニ。」
「1年生ですか?女の子ですか?可愛いですか?」
「あはは、ちょっと落ち着きなよ。」
「まあ待て、じゃあ自己紹介よろしく。」
「・・・1年6組の三井真美です。ボルテ専門です。入部するのが少し遅れましたが今後ともよろしくお願いします。」
圧倒的ヒロイン力。
そんなわけで無事当時の部員が揃いました。
三井さんの入部で1話分使いましたが彼女は今回のお話のキーマンになるためちょっと特別扱いになりました。
彼女がどう鍵になってくるのか楽しみですね。
それと最後は台詞だけになりましたが、みなさんは誰がどの台詞かわかりましたか?明らかわかりやすいのが1〜2名いますが。
今回はここまでにしておきます。
それではまた次回。




