第3話 〜始まりは突然に〜
第3話 〜始まりは突然に〜
高校に入学し数週間が経った頃には最初の緊張などはもうなく、最低限の友人関係を築き上げながら勉学に励んでいた。
1時間目の授業が終わり次の授業の支度をしていると1人の男がこちらへ歩いてきた。
「ヘイそこのメガネ君、今暇かい?」
その男は初対面の私に向かってヤケに馴れ馴れしく話しかけてきた。
同じクラスではあるもののまだ話したこともなければ名前さえ知らない人からまるで昔からの知人に話すような軽いノリで話しかけられるのはあまり好きではない。どうせ1人でいるのを面白がって喋りかけてきたチャラ男か何かだろう。
なので私は無視をして教科書類を整理していると男は少し焦りだした。
「あ、あれ?聞こえてない感じ?それともその呼ばれ方はNGだった?」
冷やかしとかではなく単純に話しかけてきた様子に見えたので一応答えることにした。
「聞こえてるさ。で、何か用かな?」
「いやね、高校に入学してまた新しい友達とか作るでしょ?だからいろんな人に声かけてるんだ。」
成る程、この男はコミュ力が高いんだな。でも私には関係ないことだ。必要以上に友人は要らないし。
「それと、俺と同じ同志がいないかも探してるんだ。」
「同志?君はコミーかなにかか?」
うっかり某TRPGネタを言ってしまったことに気づきハッとしたが男は理解できてないようできょとんとしていた。
「まあ、同志っていうか同じ趣味を持ってる人って感じかな。それで新しい人に話しかける時にいつも言ってるんだけどさ。」
そういって男はある言葉を口にした。
「音楽ゲームに興味ない?」
「音楽ゲーム・・・か。」
「俺音ゲー大好きなんだけどさぁ、仲間が全然見つからなくて困ってるんだよ。どう?」
「・・・昔はやってたけど今はもうやっていない。」
そういうと男はよっしゃー!と私の前で喜びの舞を踊りだした。
「なんだやってたのか!なら話は早い、友達になろうぜ!」
「言っただろ、昔はやってたけど今はやってないんだ。残念だが諦めてくれ。」
私は中学生の頃にbeatmaniaⅡDX、通称弐寺をやっていた。しかし高校に入学してからは勉学に力を入れると決めていたから中学を卒業すると同時に音ゲーからも卒業したのだ。
「なんで辞めたのさ。あれ以上に楽しいものはないぜ?なんなら放課後ゲーセン行こうよ。」
「しつこいな、私はもうやらないと決めたんだ。」
私は少し強めに言うと男はそうか、と言い勧誘をひとまず諦めたように見えた。
「今日はとりあえずこのくらいにしとく。でも俺は諦めないからな!それじゃ」
そういって男は自分の席へと戻っていく。
また来るのか・・・と私は気が滅入りそうになると男はなにかを思い出したようでまた私の元へ戻ってきた。
「そういえば名前まだ聞いてなかったね。なんて言うの?」
名前・・・そういえばまだ自己紹介もしてなくいきなり話しかけられたんだったな。
「縦皿鍵介だ。そういうそっちは?」
「俺は丸池って言うんだ。これからよろしくな、縦皿。」
そういって丸池は今度は本当に自分の席へ戻っていった。
それと同時に授業の始まるチャイムが鳴り先生が教室へと入ってきた。
これが私と、後に親友になる丸池との初めての会話だ
「いい加減友達になってくれよ〜。」
「そっちこそいい加減付きまとうのは止めてくれ。」
あれから何日か経ったが丸池は相変わらず私の元へ来ては何時ものように話しかけてくる。
「わかった、百歩譲って友達にはなろう。だが音ゲーはやらないからな。」
「えぇーそれじゃ意味ないよ。俺は同志を求めてるんだからさー。」
これじゃあキリがない。どうしたものか。
「じゃあさ、せめて一緒にゲーセン行こうよ。それでまた音ゲー熱を取り戻そうぜ。」
恐らくこれを断ってもなにも進展しないだろう。ならば逆について行ってもう音ゲーをやる気がないことをわからせよう。
「仕方ない、行くだけ行くよ。」
そして放課後、私は丸池とゲーセンへ向かった。
「さあ着いたぜゲーセン。早速何やろうか。」
ここに来るのも中学を卒業して以来か。まあそれ程月日が経ってないから久しぶりという気分にはならないが。
「そうそう、縦皿はなにやってたの?」
「私は弐寺をやっていた。七段程度だがな。」
「へぇ七段なんだ!俺は六段だよ。」
どうやら実力は聞いたところ私と差があまりないようだ。まあどうせ今は昔の実力なんてないだろうが。
「じゃあ早速プレーしようぜ。バトルでいいっしょ?」
とりあえず私と丸池はバトルモードを選択した。
久しぶりに見る選曲画面。緑ランプや白ランプ、☆10にはクリアミスのランプもチラホラ見える。
「とりあえず肩慣らしってことで☆9から選ぶ?」
「私は別に構わない。」
私たちは適当に☆9を選び一通り遊んだ。腕はやはり落ちていてどれもこれもスコアを更新することはなかった。
「次はちょっと俺段位やりたいんだけどいいかな?」
「いいよ。私は休憩がてらプレーを見てる。」
丸池は段位認定で七段を選んだ。クリア率を見るからにどうやらサファリ以外はいい成績のようだ。
「さて、遂に最後だ。」
丸池は前の3曲を余裕でこなしついに最後の難関サファリへと突入した。
サファリの特徴といえばやはり何度も来るテレテレテッテ地帯だろう。あの地帯は密度が濃い上に67トリルという鬼畜ぶりだ。餡蜜をしようとすればほぼ全押しするしかない。
「これ最初の同時押しも地味に厄介なんだよなぁ。」
「無駄口叩いて大丈夫なのか?」
「今のところはね。」
そしてついにテレテレテッテ地帯へと突入した。
丸池も無駄話をやめ集中しているがゲージがごりごり削れていくのが見える。
「やっと休憩地帯だ。」
休憩地帯といっても途中で螺旋階段があったりリズムをずらしてくる場所もあり休憩の割にはいやらしい箇所が多い。そして休憩地帯の最後はホイッスルや皿が混じりテレテレテッテ並みの難関箇所となっている。
「おい、現時点で30%だが大丈夫なのか?」
喋りかけてみたが丸池は返事をしない。返答が出来ないほど集中しているのだ。
なんだろう、この感じは。見てるだけなのに私にまで緊張感が湧いてきた。丸池はこれと同様またはそれ以上の緊張を強いられているのだろう。
「このテレテレテッテを抜ければ・・・!」
あと少しでクリアできるという高揚感、心拍数が上がり指先が震える感じ、私にも伝わってくる。この気持ち、音ゲーを辞めてから、いや、その少し前から忘れていた。
「ぃよっし、あとはここでミスらないように・・・。」
ハッと我にかえると丸池は最後の67トリルだけのテレテレテッテ地帯に突入していた。ゲージも2%でひとつでもミスをしたら全てが泡となる状況だ。
そして最後の音が鳴り止んだ。
「よっしゃぁぁぁ!七段合格だぁぁ!」
丸池は子供のようにはしゃぎだした。それにつられて私も無意識に叫んでいた。
「やったよ縦皿!俺もついに七段だ!」
「おめでとう、サファリをクリアできてよかったな。」
「これも縦皿がいてくれたからだ、ありがとな。」
「いや、お礼を言うのはこっちだ。」
「え?」
「お前のその熱いプレーを見たお陰で私にもどうやら熱が伝わってきたようだ。こんな高揚感、忘れていたよ。」
この気持ちを思い出させてくれた丸池には感謝の言葉しか出ない。
「じゃあ、もしかして・・・?」
「ああ、私は弐寺をまた始めることにする。これからよろしくな、丸池。」
こうして私はもう一度音ゲーの世界へ足を踏み入れたのだ。
お久しぶりです。また1ヶ月近く更新してませんでした。
もしかしたら今度から1ヶ月更新になるかもしれないですね(笑)
さて、今回からは縦皿の過去ということで縦皿視点での回が続きます。
なので1年生組が出てくるのはだいぶ後になるでしょう。
そういえば最近リフレクと弐寺がバージョンアップしましたね。
最近リフレクと弐寺のモチベが上がってなかったのでこれを期にまたやり込んでみます。
それではまた次回。




