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隣のロシア人が怖い

作者: 森野いづみ

 最近隣に引っ越してきたロシア人が怖い。

 まず大きい。とにかくデカイ。多分二メートルくらいある。

 で、常に顔が赤い。多分毎日ウォッカ飲んでるんだと思う。

 この前聞いたら「ロシアでは酒を飲んで身体を温めないと凍死するんだ」

 と笑いながら言われた。なんだその冗談。怖い。

 と思って調べたらあながち冗談でもなかった。なにそれ。ロシア怖い。

 あと何が怖いってなんかやたら懐かれてるのが怖い。早朝のゴミ出しで顔を合わせたりすると、

「ドーブラエウートラ、タワリシチ」

 と爽やかに挨拶してくる。何言ってるか分からん。

 クマみたいな形相の癖にやたらフレンドリーでにこにこしてる。

 この前大家さんと意気投合してるのを見た。だが、お互い泥酔してる上に外国人ロシア語、大家さん日本語でべろんべろんで話しあってた。多分話とか通じてない。

 なのにむちゃくちゃ楽しそうだった。怖い。

 あとやたら地震に弱い。この前とか泣きそうになりながら騒ぎまくっていた。

 正直私はお前の方が怖い。

 あと普段何をしてるのかもわからないのが怖い。大体家に居る気がする。いや、たまに外に銃型の水鉄砲持って出ていくことがあるけど。その行為に何の意味があるのかもわからんのが怖い。

 彼のちぐはぐな日本語と、拙い話を聞くとロシアでは売れっ子の作家さんらしい。え? 特殊部隊出身とかでなく?

 そう聞き返してしまいそうなのをこらえた。日本には取材に来たそうな。どんな話書くんだろう。気になるが、やはり怖い。

 そんな事を考えてたら何だか本をプレゼントされた。向こうでベストセラー賞をとった彼の著作らしい。少し嬉しかったが、思いっきりロシア語だった。原書とか読めないから。

 それでもロシア語の辞書を片手に四苦八苦して読み終えた。少し泣いてしまった。

 なんであの面白外国人からこんなきちんとした傑作が生まれてくるんだ。怖い。ていうか意味がわからん。

 なんだかやられてしまったような気がして、妙に悔しかった。なので、私は仕返しとばかりにロシア語の辞書と翻訳サイトを片手に頑張ってロシア語の文章を打ち出し、それを彼の家のポストに突っ込んでおいた。

 次の日、俺が大学に行こうとドアを開けると、相変わらず朝から顔の赤い彼とはち合わせた。

 巨体の所為で道がふさがってる。おいおい止めてよ遅刻しちゃうよ。と思って顔を上げると、何故か超スマイリーな顔で私を見下ろしていた。今までで一番怖い。

 彼は私の突っ込んだ手紙を片手に、ロシア語で早口でまくしたててきた。いや、何言ってるかわかんないから。あとなんでそれ私が書いたってわかったんだよ。匿名だったのに。怖い。

 で、ハグされた。ハグというか巨体で怪力な彼にやられるとなんかもう締め落としに近かった。

 止めて。遅刻するから……。ていうか死ぬ……死ぬ……。

 それから良く分からんけど手紙のやり取りをするようになった。なんでこんな気恥しい事をせにゃならんのかと思うが、あの笑顔を前にするとやめてとも言えなくなってしまう。…………怖い怖い。

 とにかくロシア人は怖い。皆も隣に引っ越してきた時は気を付けた方が良い。

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