いつもの日常、違う日常
間違えて、しんきでしてしまいました
序章の続きです
「どうしたの、瑠衣ちゃん?元気ないね」
「うん、まぁ昨日なんか色々たくさんあって。はぁ……」
県立柳川高校。柳川沿いに立つ進学校。
創立数十年とまだ日の浅い高校だが、モダンな校舎や有名デザイナーがデザインした制服が、反響を呼び中堅の進学校なのに毎年高い倍率になっている高校である。
そんな、おしゃれな高校にはとても似合わない深いため息が、瑠衣の口からもれた。
「そんな、深いため息するほど、大変なことがあったの?」
「うん、まぁね。でも、みやちゃんがいつも体験していることよりは、大変じゃないよ」
「も、もう!瑠衣ちゃんまで、私を生徒会長として見てるの?そうじゃないって思ってたのに!」
瑠衣の目の前に座る、流れる黒髪、大きい瞳など人形のような少女、町路都が頬を膨らませる。
「だって、ダントツの支持率で生徒会長になられた町路都様だよ。それは、私なんかが話していい相手なんかではないですよ。」
瑠衣は、笑いながら話すと、都はさらにふくれっ面になる。
「る・い・ちゃん?」
「嘘だって。嘘だよ。いや、ホントごめんね?」
少し、都が怒りかけていると察した瑠衣は、やりすぎたと思い謝る。
「別に怒って無いからいいよ。ところで、昨日何があったの?」
今度は、興味深々とばかりに、都は体を乗り上げ瑠衣を見つめる。
瑠衣は、苦笑いを浮かべつつ参ったとばかりに二度目のため息をつき、しぶしぶ話し出す。
「私がする話を笑わない?」
うん。と頭を縦に振る都。
「絶対に?」
もう一度縦に振る。その眼は、『前置きはいいから、はよはじめろ』と言ってるようにも見える。
「実は昨日ね……」
話し始めようとしたとき、授業開始のチャイムが鳴る。
「ごめんねー。この話、昼休みでするから」
「る・い・ちゃん!」
ぷいと、都は体を白板のほうに向けた。
◇
昼休み。それは、小・中・高校生だれでもうれしい至福の時。
勿論、瑠衣と都もいつもならば、心休まるひと時なのだが、瑠衣は来てほしくなかったと天井を見つめ、都は興奮を抑えきれないのかそわそわしている。
今は、机をくっつけ弁当を広げているが、二人とも弁当に手をまったく付けていない。
向かい合ったまま沈黙したままだったが、遂にそわそわした感じで都が口火を切った。
「で、昨日何があったの?」
「うん、実は昨日ね……」
と、瑠衣は昨日あったことを大まかに話した。そしたら、そわそわして聞いてた都の顔が、瑠衣の話を聞いているうちにどんどん青ざめていく。
予想外の反応に瑠衣は、少しためらう。
――もしかして私の話ありえないほどくだらなかった?
実際くだらない眉唾な話だが……都の反応は白けたとは違う反応だった。
またも沈黙が訪れたが、都が重々しく話はじめる。
「瑠衣ちゃんは、そのペンで何か書いた?」
「いや、何も書いてないけどどうして?」
「ならいいけど。もしかして取扱説明書を見たりした?」
「見てないよ。私が長い文字見れないのみやちゃんもしってるじゃん」
「だね。ははは」
すごく、乾いた笑い声が都の口からもれる。
都のそんな反応を見ていた瑠衣の頭は、すっかりこんがらがってた。
――え? 意味が分かんない? なんでみやちゃんがあのペンのこと知ってるの?もう何がなんなのよ!
「瑠衣ちゃん、あのペンは絶対に使ったらダメだよ! 使ったら大変なことが起きるから。絶対だよ!」
「え、う、うん。分かった。」
不意に声をかけられた瑠衣は、思わず答えてしまった。どんな大変なことが起きるかとかを都に尋問することも忘れていた。
「ところで、瑠衣ちゃんは、昨日のドラマ見た?」
「う、うん。見たよー。宮坂大輔がでてるあれでしょ?」
「そう!今週のお話面白かったよね」
「面白かった。宮坂さんが、あんたたちには一生分からない。言ったとこがすごくかっこよかった~。」
「分かる分かる。私もそこでテンションがあがちゃった。」
話題が変わり、ガールズトークをしながら、弁当をつまんでいく二人。
瑠衣の頭の中は、昨日のペンの話よりも昨日のドラマの話で頭がいっぱいで、今さっきまでの話は頭の奥底に追いやられていった。
いつもの日常はひょんなことで崩れる。
友達の反応にも少しは気を付けていきたいと思いながら書きました