序章 始まりはいつも突然に
してはいけないというものはこの世にはたくさんある。
例をあげるのならば、塩素系洗剤と酸性洗剤を混ぜたりや、洞窟の中でたき火をしたり、知らないおじちゃんについて行ったり……とにかく挙げていったらきりがない。
大通瑠衣は、そんな『してはいけない』ことをしようとしていた。
◇
「さて、これはどうしたものですかな」
瑠衣の目の前には、文庫本くらいの段ボール。厚さは、10センチ前後。
そして、貼り付けられている伝票の宛先には、大通瑠衣と書かれている。住所ももちろん、大通家の住所になっている。しかし、差出元は全くの不明。
「なんでお母さんは、こんなものうけとるのかなぁ……」
――開けてはいけないよね。
もしかしたら、爆弾かもしれない。開けたら猛毒がでてくるかもしれない。
瑠衣は、段ボールの前で少し唸った。そして、顔をあげる。
「でも、もしかしたら何かの景品という可能性もあるわけだし」
好奇心に負けペン立てに入れてあったカッターで、テープを切り段ボールをおそるおそる開ける。
そこで、いきなり光って爆発なんてことは無かった。
開けて、まず目に入ったのは気泡緩衝材、そしてそれに包まれるように梱包されている
「何……これ? ペン?」
赤いペンが入っていた。蓋式のペンだった。
そして、ペンの下には、小冊子くらいの厚さの取扱説明書が入っている。手に取ってみる。まず目についたのは表紙に『当選おめでとうございます』とゴシック文字で大きく書かれていた。
――なんの懸賞?
瑠依は、必死で頭をひねって思い出そうとするが、脳の容量が少ない瑠衣は、思い出せるわけがないとすぐに思い出すのをあきらめた。
思い出すのをあきらめた、瑠衣は表紙をめくる。
そして驚愕する。そこには、びっしりと小さい字でページが埋め尽くされていたのだ。パラパラと、一通りページをめくる。
そして、深呼吸をしてから、
「分かる訳ないでしょ! 馬鹿をなめないでよね!」
意味の分からないセリフを叫びながら、瑠衣は小冊子を床に叩きつけた。
「臭いものには蓋をする! そして、封印!」
段ボールの中にペンと説明書を戻し、押し入れの中にぶち込んだ。
そして、この日謎の段ボールが開くことはなかった。
まだ始まりの始まりですので、よろしくお願いします