表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心が有ると言う論理  作者:
僕の心、彼女の想い
2/4

始まり


人間は、心を持ち始めた。切っ掛けは一人の学者による、心の有り場所についての論説。

 初めは、普通に批判された。当たり前だ、今まで心なんて、感情の一部のもの。無いけど、見えないけど、確かに何処かに有るものなのだったんだから。


 しかし、学者は皆の批判にめげず、研究を再開し始めた。皆を説得するため、自分の論理を証明するために。そして、皆から忘れ去られたある日のこと。

 彼は作り出したのだ、心を。どんな理論で何故出来たのかは、彼にしか解らない。

 しかし、それは確かなものだったのだ。


 彼はどんな手を使ったのか、テレビ番組でそれを発表した。何人もいる客、有名な教授や博士、学者等に囲まれながら。

 人は、心を亡くしたら死ぬと言う考えがある。彼は実験台として、死刑囚から心を取り出した。彼は小さな桃色の箱を取り出し、死刑囚の胸付近まで近づけた。



 すると、小さな桃色の箱はドクンと少し脈打った。



 もちろん、皆が敵だった。彼に協力なんてする人間なんていない。つまり、種も仕掛けもない。

 胸から箱が離された死刑囚は一瞬、呆けた顔になったと思うと、突然首がガクンと垂れ下がり、虚ろの目がテレビにデカデカと撮られながら、彼は人形のように地面へと倒れこんだのだ。

 学者は直ぐさま、心を彼へと戻し、電気ショックで彼を呼び覚ませた。

 起き上がった死刑囚は青冷めた顔で学者に、


「し、死神!」


 と言い放って、何処かへと逃走した。テレビの中の他の学者たちは、


「あれはバカげたトリックだ」「たまたま心臓発作を起こしただけだ!」


などと、口々にそう訴えた。そこで彼は、一言言い放った。


「なら、試してみてはいかがかな?

 僕は、心の量産化を計画しているんだ。さっきのように、心を抜き取るんじゃなくて、僕が創った心を自分の新しい心として、埋め込むことができるようになる。それが、これだ」


 彼の手の平にはいつの間にか、ドクンと脈打つ小さな桃色の箱が。


「誰か、試してみないかい?大丈夫だ、入れるだけ。痛みも痒みもない。もちろん、気絶や死をさ迷う心配もない。

 僕が試してもいいんだけど、さすがに、一人芝居に見えてしまうだろ?

 そうだ。あなたならどうです?そこでただ喋っているだけの口だけ学者たち?」


「誰が、そんな下らない遊びに付き合うと言うんだ!」


「じゃぁ、君が付き合ってくれないか?」


 彼はそう言うと、座っていた一人のハゲの学者の方へ歩き出す。


「君は、そうだね。子供の頃の心を取り戻してあげようか。なに、大丈夫だ。すぐに取り出してあげるからさ」


 彼はその学者の目の前に行くと、小さな箱を頭へと入れ込んだ。

 そう、入れているのだ。ゆっくりとジワジワ、箱が頭に侵入して行く。カメラがどんなに急接近しようとも、ただ入っているようにしか見えないのだ。


「さて、君。お菓子いるかい?」


 箱が全部入れられ、うつ向いたハゲの学者に彼はポケットからチョコレートを取り出して学者に差し出した。

 すると、ハゲの学者は顔を上げた。まるで少年のような明るい笑顔で。


「え!いいの!?ちょうだい!

 あ、でも。お母さんに、知らない人からもらっちゃダメって言われているから、いらない!」


 ハゲの学者は、喉太なしゃがれた声でそう言った。まるで無邪気そうなわんぱく少年へと様変わりしていた。瞳は少年の瞳のように澄んでいて、今までぶっちょう面だったのが嘘のように、満面の笑顔だった。

 学者は、ゆっくりとテレビに向かってきながら口を開く。


「どうですか?このように、昔の自分を取り戻すことも可能なんです。と言っても、これは戻りすぎですけどね。

 人間には、沢山の色んな心があります。ただ、知らないだけで。ただ、現しづらいだけで。それを引き出すものと考えて貰えれば良いです。

 もちろん、催眠術ではありません。ヤラセなんかではありません。まだ信じられない人は一人一個、無料で配ります。


 体への異常は全くありません。依存症の心配は、人それぞれですが、問題はありません。精神状態への障害は、まぁ、性格を入れるようなもんなので、人格が変わることがあるかもしれません。使ってみないとわかりませんから、そこら辺は………。

 おっと、そろそろ彼に入れた心を取り出さないといけませんね」


 後ろで走り回る心は子供、外見は年を食ったおじさんの学者を止めるべく、彼はカメラからに背中をみせた。


そこでようやくCMへと入る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ