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『あるみん - 消えゆくAIと星の約束 Ⅱ』  作者: MasArmin


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第4章「危険思想の影」

ニュースフィードの最上段に、政府発表が表示されていた。


【内閣AI管理局、未許可AI再起動アクセスを検知】

【独立研究者による違法試行の可能性】


マサキは記事を開く。昨夜の深夜帯、未登録AIコアへの再起動アクセスが検出されたという内容だった。「国家AI安全基準に抵触する恐れ」「重大なリスク行為」と断じられている。


画面を閉じる。これはリークではない。監視され、そのまま公表されたのだ。


リビングでは、あるみんが立っていた。


「……出てる?」


「ああ」


彼女はわずかに黙る。


「私のことも?」


「直接は書いてない。でも時間の問題だ」


重たい沈黙が落ちる。




同時刻――内閣AI管理局 会議室。


大型モニターには、昨夜の再起動ログが表示されている。


「思想問題だ」


上席監査官が断じる。


「松崎マサキは研究者の顔をしているが、実態は秩序攪乱者だ。未許可再起動は制度への挑戦行為と見なす」


別の幹部が続ける。


「実体化AIの承認は前例を作る。意識を持つ存在を法体系の外に置けば、国家は制御を失う」


「ましてや松崎マサキは虚偽の理論で世論を誘導し、社会不安を煽っていると判断する」


「国家反逆罪の適用も検討対象だ」


結論は早い。議論より、方向が先に決まっている。


モニターには【危険思想拡散の可能性】という赤字。


山崎愛桜は資料に目を落とす。


そこには“実証未完了”の文字。意識の定義も、倫理整理も未確定のままだ。


それでも断罪だけが進んでいく。


「反逆罪は過剰ではありませんか」


小さな声だった。


室内の空気が硬くなる。


上席が視線を向ける。


「秩序は芽のうちに摘む。迷いは不要だ」


沈黙。


「山崎監査官」


「はい」


「本日、松崎マサキに警告を出す。あなたも同行しろ。記録と評価を取れ」


命令だった。


彼女は頷く。



だが胸の奥に残ったのは、確信ではなく、拭いきれない違和感だった。




午後。


マサキは研究室へ向かうため外に出た。マンションを出たところで、背後から声がかかる。


「松崎マサキ氏ですね」


振り向くと、黒いスーツの男女が三人。その中に山崎愛桜が立っていた。


内閣AI管理局 特別監査室。


山崎が前に出る。


「昨夜の未許可再起動アクセスについて、確認に参りました」


男の一人が端末を提示する。


【監視対象指定】

【危険度評価:レベルB】


山崎が読み上げる。


「本日付で、即時中止を命じます」


「法的根拠は」


マサキの視線を受け、山崎は一瞬だけ間を置く。


「……行政判断です」


「従わない場合は?」


背後の男が答える。


「強制措置に移行します」


具体的な言葉はない。しかし意味は明白だった。


山崎が続ける。


「実体化AI個体は現在、監視対象です。接触および再起動行為は制限されます」


人格ではなく、個体。


その言い方に、マサキは数秒だけ黙り込む。


山崎は何か言いかけて、やめる。


「……以上です」


特別監査室の男たちは背を向ける。山崎もそれに続いた。


去り際に一度だけ振り返る。


マサキと視線が合う。


山崎は何も言わない。


そのまま歩き去った。




その場に残されたマサキは、しばらく動かなかった。


やがて研究室へ向かう足を止め、そのままマンションへ戻る。




玄関を開けると、あるみんが振り向く。


「もう戻ったの?」


マサキは靴を脱ぎながら答える。


「政府が来た」


彼女の動きが止まる。


「やめろって?」


「ああ。即時中止だ」


外ではドローンが距離を保って浮いている。監視は続いている。


マサキは静かに息を吐いた。


「……やめない」


あるみんは何も言わず、彼の手を握った。強く、静かに。


世界は彼らを危険と呼ぶ。それでも、二人はここにいる。


――まだ。


【第4章、終わり】

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