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第4話 トンネルラット

お久しぶりです。

深夜のゴブリンの大規模襲撃を凌いで、結局またよく寝れないまま朝が来た。明るくなって陣地の周りの状況が分かるようになり、その光景に柊木は「うわぁ・・・」と言うドン引きの声が漏れた。

 

昨日の戦闘で兵士達はM16A1、M60E1、M2ブローニング、M42ダスターを使用して迫り来るゴブリン達を迎撃した。特に今回の戦闘で初めて使用したダスターに搭載されていた2門のボフォース社製40ミリ機関砲の威力は絶大だった。

 

ゴブリン達に対しては徹甲弾では無く、榴弾系の弾を使用して撃ちまくった結果、運悪く直撃したゴブリンは血飛沫になり、榴弾が爆発すると半径5メートル以内のゴブリンは破片などによって身体をズタズタにされて即死。半径10メートルの範囲では死にはしなくても重傷を負った。

 

それを毎分240発の速度で連射するのでゴブリン達はあっと言う間に肉塊に変わって行った。埃を落とす為の掃除用具のはたきや雑巾などを意味するDusterダスターの名前の通り、大量のゴブリンを掃除することが出来た。

 

ベトナム戦争でもダスターは対空射撃よりも対地攻撃に使用され、その絶大な威力を発揮しベトコンが恐る兵器の一つとして数えられた程だった。

 

そんな兵器を使用したこともあって、ゴブリンが攻めて来た陣地の東側と南東側には大量の死骸が積み重なっており、バラバラになった死骸も散らばっていて凄惨な状況だった。

 

「・・何体居るから分かる?」

 

これからここ膨大な数の死骸を片付けないといけないのかと思うと気が遠くなりそうで、隣にいた東雲に聞いてみた。

 

「100は確実に超えているかと」

 

「うえぇ・・・」

 

「でも悪いことばかりでは無いでしょう。これだけ倒したんですから、召喚可能数も増えたんじゃ無いんですか?」

 

「あ、確かに。確認してみるわ」

 

柊木は一度司令部に戻って、机に置いていたタブレットを手に取って起動する。すると予想通り『おめでとうございます。多くの魔物を倒したので歩兵とその他兵器の召喚可能数が増えました』と言うメッセージが来ていた。

 

『歩兵1個小隊+1個分隊(50人)』

 

『後方支援要員 2個小隊+2個分隊(100人)』

 

『火砲8門』

 

『車両14台』

 

『航空機12機』

 

『艦艇7隻』

 

「おぉ〜結構増えたな」

 

一気に人数は増えて後方支援要員と合わせると総数は150人になった。更に兵器類も召喚可能数が増えたので、これで更に戦い易くなったなと柊木は思った。

 

「どうする?人は全員出すか?」

 

「全員はやめといた方が良いでしょうね。全員を一斉に召喚したら、拠点の拡張が間に合いませんので。一個分隊だけ召喚しましょう。そして徐々に拡張しながら人も増やして、本格的な基地にして行きたいですね」

 

「今はまだ野営みたいな状況だからな。ジープも新しく1台出して、偵察隊を増員したいな。そしてら効率も良くなるだろ」

 

「そうですね。人手を増やしてもっと積極的に偵察活動をしても良いと思います」

 

「後はヘリポートを作りたいな。ヘリが有ればもっと簡単に周辺を偵察できる」

 

「ですけど、ドラゴンの存在がありますからね。ヘリが襲われる危険もあります」

 

昔映画で見た青い肌の宇宙人が主役の映画を柊木は思い出した。あの映画でもドラゴンの様な大型の鳥がヘリを襲い撃墜するシーンがあった。あんな風にはなりたく無いな。

 

「襲われる危険で言うと、ゴブリンの件もどうにかしないとだよなぁ」

 

一昨日と昨日の夜に続けてゴブリンの襲撃を受けた。更に昨日は100を超えるであろう大勢のゴブリンが襲って来た。しかも人間の女性を囮に使って助けようとした兵士を襲った。完全にここをゴブリン達が狙っているのは確実だった。

 

「昨日の夜襲でゴブリンが全滅した・・・って考えるのは楽観視かな?」

 

「ゴブリンがどれ程の数で行動する生き物なのか分からないので何とも。ですが、女性を囮にして兵士を誘き寄せようとしたりと狡猾な手を使って来ると言うことが分かったので、より注意した方が良いですね。偵察隊が襲われる危険もあります」

 

「あんな集団で襲われたら偵察隊なんて全滅だろうからな・・・先ずはゴブリンの巣を探した方がいいか?」

 

「そうですね。一昨日と昨日でこうして連続して攻撃を受けたと言うことは、奴らの巣が近くにあるのが自然でしょう」

 

「今までの東西南北と北西と南東方向の偵察でも見つからなかったってことはそれ以外の方向にあるのか、それとも隠されていて偵察隊が気が付かなかったのか・・・」

 

作りかけの手描き地図を見ながら柊木は腕を組んで悩む。そしてあることを思いついた。

 

「助けた女性の方は?意識は戻ってる?」

 

「比較的怪我が少なかった赤髪の方は既に目が覚めて、軍医と話してました。とりあえず言語は通じる様ですね・・・。もしかして、彼女からゴブリン達の巣の場所を聞こうとしてます?」

 

「それが1番確実だろ?」

 

「人の心無いんですか?拒否されるのがオチだと思いますよ。あんな経験したんですから。それに、そんなことしなくても足跡がガッツリ残ってます」

 

「あ、そうなの?」

 

「100体以上が移動して来たんです。全く痕跡を残さず来るのは無理ですよ」

 

「確かにそれもそうか。なら第1偵察隊に足跡を追ってゴブリンの住処を探して貰おうかな。あ、そうだ!あれだけゴブリンが臭うならピープルスニファーが使えそうだな」

 

「それは良い考えかもしれませんね」

 

「さてと、ゴブリンの住処がどんな感じなのかとか、他にまだ囚われている人間がいるかとか助けた人から聞きたいな。それからゴブリンの巣に行く部隊の編成と、必要な道具とかの召喚をしようか」

 

「それは・・・確かに聞く必要がありますね。了解しました。軍医に聞いて話せるか確認してみます」

 

と言うことで、東雲が赤髪の女性の面倒を見ていた女性軍医に話を聞ける状態かどうかを聞いた。想定よりメンタルは安定しているので話は出来るが、ゴブリン関連の話をしてフラッシュバックしてパニックになる恐れもあると軍医は答えた。

 

なので、彼女の安全を最優先にもしパニックなどを起こせば直ぐに軍医が対応出来るように横でスタンバイしている状態で話を聞くことになった。

 

野戦病院になっている大型テント内にあるカーテンで仕切られた場所に柊木と東雲は軍医に案内されやって来た。軍医が「エモラさん。入りますね」と優しい声音で話しかけてからカーテンを開けると、ベッドに横になっているほぼ全身に包帯などが巻かれた痛々しい姿の女性が居た。

 

事前に軍医から話を聞いて、赤髪の彼女の名前がリトナ・エモラと言う名前だと言うことと、冒険者だと言うことを柊木は知っていた。

 

女性は柊木達の姿を見ると身体を起こしてから軽くお辞儀をした。

 

「あ、無理せず横になってて良いですよ」

 

「お気遣いありがとうございます。ですが大丈夫です」

 

無理して起き上がっている様には見えず、更に軍医もなにも言わなかったので柊木もこれ以上は言わないことにした。そしてリトナの側まで歩いて近づくと、なるべく不信感などを感じさせない様に気をつけつつ話しかけた。

 

「初めましてリトナさん。私はの名前は柊木隼人です。こう見えてもこの組織の長をやってます」

 

「貴方がヒイラギさんですね。もうご存知の様ですが、私はリトナ・エモラと言います。助けて下さって、そしてこんなに手厚い治療をして下さって本当にありがとうございます」

 

「いえ、貴方達を実際に助けたのは私では無く私の部下のマットと言う方なので、お礼はそちらに」

 

「それで・・失礼ですが、貴方達は何者なんでしょうか?あのゴブリン達を倒していた武器も、私を治療する際に使った医療器具も、私に与えられた食事も、見慣れないものだらけで・・・・」

 

特にリトナの印象に強く残っていたのは、マットに手を繋がれて走って逃げている時。自分達を追いかけて来ていたゴブリン達を轟音と共に次々と倒して行ったあの謎の攻撃だった。

 

「えっと・・・ちょっと説明が難しいんですが、まぁ傭兵団の一種みたいなものだと思って下さい」

 

説明に困った柊木はそう説明することしか出来なかった。

 

「傭兵団・・・何と言う組織名か聞いても良いですか?」

 

「えっっと〜・・・」

 

そう言えば組織名などを全然決めていなかったことに気がついた柊木は、助けを求める様に東雲を見たが、肩をすくめるだけだった。

 

「アメリカです」

 

そう馬鹿正直に柊木が答えると、小さく東雲が笑ったのが聞こえた。笑うなら何か助けてくれても良かっただろ!と柊木は思いチラッと東雲の方を見て睨んだ。

 

「アメリカ・・・聞いたことが無い名ですね」

 

あれ程の強力な武器を扱う傭兵団ならそれなりに名が売れていても不思議では無いのにと、リトナは思った。

 

「え〜っと・・我々は普通の傭兵団とは違う、少し特殊な組織ですからね。名前を知らないのも仕方ないですよ」

 

流石に柊木の能力を馬鹿正直に話す訳にはいかないので、そこら辺はぼかすしかなかった。この話題から逸らす為にも、柊木は直ぐに本題に入った。

 

「それで・・いきなりで申し訳ないんですが、ゴブリンの住処がどんな感じなのかとか、他にまだ囚われている人間がいるかなどを教えてもらっても良いですか?無理にとは言いません。思い出したくないこともあるでしょうし」

 

「いえ、大丈夫です。それに、ゴブリンに捕まってしまっていましたけど、私も冒険者の端くれです。まだあそこに囚われている人達を放っておけません」

 

「と、言うことはまだゴブリンに囚われている人がいるんですね?」

 

「はい・・・私達以外に4人、居ました。ゴブリンの巣の構造は・・あまり分かりません。私達はずっと洞穴みたいな所に閉じ込められていたので・・洞窟の中だった。と言うことしか」

 

「分かりました。因みに、ゴブリンの巣の場所は分かりますか?」

 

するとリトナは申し訳なさそうに首を横に張った。

 

「いきなり連れ出されたかと思ったら、ずっと暗い森の中を歩かされました・・・。真っ暗だったので歩いて来た方向も分からなくて・・・」

 

灯が全く無い森の中を訳も分からずゴブリン達に連れられて来たのだから方向が分からないのは無理もないかと柊木は思った。

 

「分かりました。嫌なことを思い出させてしまってすいません。今はゆっくり休んでください。何かありましたら気兼ねなく声を掛けてください」

 

「はい、ありがとうございます」

 

ミリノーから話を聞き終わった柊木と東雲は司令部へ来て、付近にあると思われるゴブリンの巣の駆除及び今だに囚われている可能性のある人間を救出する為の作戦会議を行なっていた。

 

「彼女の話から推測すると、ここからゴブリンの巣まではそんなに距離がなさそうだったよな」

 

「はい。ゴブリンの襲撃を受けた時刻は午前2時頃でした。そしてゴブリンが夜の間に巣からここまで連れて来られたと言うことは、日が沈んで暗くなってから移動し始めたと考えて場合、約6時間程。ゴブリンの体格からして人間の歩く速度より遅いでしょうから、移動した距離は最大で10キロ程になるでしょう」

 

瞬時にそんなことを考えれるの凄いな・・・。と柊木は感心しつつ、柊木は完成には程遠い地図を見る。

 

「なら偵察隊を偵察に出して、巣を探して貰うか。そんで巣を見つけたら本隊が出動して攫われた人の救出とゴブリン駆除をするってことで良いかな?」

 

「それで良いと思います。偵察隊は今の偵察隊をそのまま使うとして、本隊の編成はどうします?」

 

「洞窟って話だし、大人数で行っても詰まるだけだから、洞窟内に突入するのは6人くらいにするか。そんで、トンネルの外に緊急事態に備えて1個分隊くらい待機させる感じで」

 

「洞窟内はどこにゴブリンが潜んでいるか分かりませんし、ツーマンセルを徹底させた方が良いでしょうね。洞窟内ならM16は使い勝手が悪いでしょうし、サブマシンガンを用意しておいた方が良いのでは?」

 

「確かにそうだな。ショットガンも用意させとくか。他に追加で必要な物は・・・・あ、そうだ。アレならゴブリンの巣を探すのに役に立つかもな」

 

それから少しして、必要な物を召喚し終えた柊木は早速第1偵察隊と第2偵察隊、そして兵員を増やしたことで新設された第3偵察隊にゴブンの巣の捜索を命じて送り出した。

 

この偵察隊には1人ずつ柊木の思い付きで、ある装置が渡されていた。

 

その装置の名はXM-2ピープルスニッファー。ベトナム戦争でアメリカ軍がジャングルやトンネルなどに隠れているベトコンを発見出来るようにと開発された人間の体臭を探知する装置。

 

人間の汗に含まれる微量なアンモニアを探知する装置で、アンモニアを100万分の1レベルで検出可能。検出可能距離も小銃の射程よりも長く、実際にベトナム戦争で使用されて一定の効果を発揮した。

 

だが、装置を使用する兵士自身の臭いや動物、またはその糞尿などを探知することも少なくなかったので次第に使用されなくなった装置。

 

柊木はゴブリンの体臭のキツさを思い出し、それならコイツらの巣も結構臭いだろうから使えるんじゃ無いかと思いピープルスニッファーを用意したのだった。

 

偵察隊が出発してからの柊木は、今回の作戦の見直しや巣穴に突入する部隊の編成、持たせる装備の見直しなどを東雲や突入部隊の隊長と一緒に話し合った。そうこうして時間が経ち、柊木がやることが無くなり暇を持て余し始めた頃に偵察隊から無線連絡が来た。

 

《第1偵察隊から司令部へ。どうぞ》

 

「こちら司令部」

 

《目標のゴブリンの巣と思われる洞窟の入り口を発見。現在200メートル程離れた位置から監視中》

 

「司令部了解。待機せよ。司令、第1偵察隊がゴブリンの巣と思われる洞窟を発見した様です」

 

「お、ついに見つけたか」

 

通信兵が振り返りながら椅子に座って待っていた柊木に報告した。柊木は立ち上がって通信兵の元に来て無線機のトランシーバーを手に取った。

 

「こちら柊木。第1偵察隊はその巣の位置を報告後もそのまま監視活動を続行。何か動きがあれば報告を。相手もそれなりに頭は良いみたいだから奇襲や罠には気をつけろ」

 

《了解。このまま監視を続けます。それと、出入り口と思われる穴を5箇所見つけたので増援をお願いします》

 

「分かった。第2、第3偵察隊をそっちに向かわせる」

 

《了解》

 

第1偵察隊との通信を終えた柊木は直ぐに別の指令をする。

 

「第2、第3偵察隊を第1偵察隊の元に向かわせて、目標の位置を確認次第トンネルラット隊に出撃命令を出してくれ」

 

「了解」

 

第1偵察隊からゴブリンの巣の位置を報告して貰って直ぐに、オペレーション・ダークホロウと名付けられた作戦を実行する為に編成されたトンネルラット隊が出撃した。

 

最初は柊木もこの部隊に同行して前線指揮をしようとしていたが、東雲に止められて柊木の代わりに東雲が前線指揮官として同行していた。

 

ゴブリンの巣があったのは想定していたよりも近く、東に約3キロ程の場所だった。ケネディジープでもギリギリ走行出来る程度の鬱蒼とした森だったので総勢16名の隊員はトラックは使えないので徒歩で目的地まで向かった。

 

そして第1偵察隊と無事に合流し東雲は第1偵察隊の隊長の元に行った。

 

「ゴブリンの巣は?」

 

「あそこです」

 

第1偵察隊隊長の指差した方向を東雲は双眼鏡で確認する。一見、ただ大きな木が生えているだけにしか見えなかったが、注意深くよく見るとその木の根本に不自然に草木で何かを隠しているの痕があった。

 

「司令から貰ったピープルスニッファーもバッチリ反応しましたよ。穴の大きさは人1人が余裕で倒れる程で、中を覗き込むまではしませんでしたが、近づいた際にゴブリンの体臭もしたので間違いないかと」

 

「穴の周辺に見張りとかは?」

 

「特に。あの穴自体が我々を誘き出す為の罠なのか・・・それとも昨日の襲撃で人員が減って見張りが居なくなったのか、それとも見張りをする習慣がないだけなのか」

 

「実際に中に入ってみないと分からないか・・・。他に出入り口は?」

 

「洞窟の規模が分からないので全てを見つけたかは怪しいですが、ゴブリンなら這って倒れそうなくらいの大きさの穴が4箇所あったのでそれは第2と第3偵察隊が見張ってます」

 

「分かった。ゲイリー軍曹」

 

東雲は少し考えた後、トンネルラット隊で実際に洞窟内に突入するアルファ隊の隊長を呼んだ。後方で待機していたゲイリー軍曹と呼ばれた男は直ぐに東雲の元に来た。

 

「あそこの巨木の根っこ、あそこが巣の入り口と思われる。報告によると人1人なら余裕で通れる広さらしいからあそこから突入して。洞窟内は無線は通じないだろうから、判断は軍曹に任せる。あの穴自体がゴブリンの罠って言う可能性もあるから十分に注意して。人質自体も罠を嵌める為の餌に使う可能性もあるから、人間を見つけても直ぐに助けようとはせずに慎重に動いて」

 

「了解。ゴブリンなんぞにやられる訳には行かないですからね、気を引き締めます」

 

ゲイリー軍曹は東雲に対して敬礼してから離れて、後方に待機している部下に説明し始めた。東雲もアルファ隊以外のブラボー隊に命令を出す。

 

「ブラボー隊で火炎放射器を持っている2人は第2、第3偵察隊の元に行きゴブンの巣の穴をいつでも燃やせるように待機。残り1人はここに待機。必要があれば、あそこの穴から中を燃やす。他のブラボー隊も同じくあの穴周辺で待機」

 

「「「「了解」」」」

 

ナパーム剤を充填した火炎放射器なら、洞窟内にいるゴブン達を一掃出来るんじゃと言う柊木の考えで、10人いるブラボー隊の内3人はM9火炎放射器を装備していた。

 

と言っても洞窟内には攫われた人間が居る可能性もあるので最終手段としての武装だった。

 

全員の準備が終わり、アルファ隊は巨木の元に集まった。アルファ隊6人の内4人がM1A1トンプソンで武装し、先頭と1番後方を歩く兵士2人にはライトをテープで無理矢理付けたイサカM37ショットガンを装備していた。

 

「よし、行くぞ」

 

一度深呼吸をして覚悟を決めたゲイリー軍曹がそう言うと部下が頷き、蔓で木の枝を結んで、そこに葉っぱを付けて偽装して穴に蓋していたのを手で取る。その間トンプソンを持ったもう1人が攻撃を受けても良い様に銃口を洞窟の穴に向ける。

 

蓋をどけてライトを付けたM37を持った兵士が中を見渡すが、誰かがいる様な気配は無かった。

 

「先に行きます」

 

「気を付けろよ」

 

ライト付きM37を持った兵士が意を決して洞窟の中に入って行く。その後に続いて続々とゲイリー軍曹を含めたアルファ隊の隊員達が洞窟内に入って行く。

 

洞窟は入って直ぐに滑り台の様な急な下り坂になっており、滑る様にして下に降りて行った。そして滑り降りて傾斜が無くなる所まで来ると、入り口よりも広い洞窟に出た。

 

入り口は人1人が倒れる程だったが、滑り降りた先の洞窟は人が横に2人並んでも問題無いレベルの大きさの穴になっていた。

 

「あのちっこいゴブリンの巣なんだから、もっと狭苦しい所と思ってたんだけどな・・・これは意外だ」

 

トンプソンを構えつつ周囲を見渡したゲイリー軍曹がそう呟いた。ベトナム戦争の頃も、アリの巣の様に張り巡らされた地下道を制圧する為に米軍がベトコンの作った穴に侵入することはよくあった。

 

だが、その穴はベトコンが屈んでギリギリ倒れるレベルの大きさで作っていたので、体格の大きいアメリカ人からすると入るのも一苦労な穴が多かった。

 

余りにも狭いので今回の作戦の様なサブマシンガンでさえ持ち込めず、リボルバーとライト、又はジッポーの明かりを頼りにトンネルに侵入していた。

 

勿論、そのトンネルの中には罠や待ち伏せもありかなり危険度が高かったので、トンネルに入って行く勇気ある兵士達のことをトンネルラットと呼んだりしていた。

 

そう、今回の部隊名はそこから引用したものだった。

 

アルファ隊は縦一列に並んで前方は勿論、左右、上方、後方を警戒しながらそろりそろりと洞窟内を進んでいた。

 

ゴブリンの体臭が籠っている洞窟内は顔を顰めたくなる程だったが、洞窟が迷路の様になっていると言うわけでは無いのが救いだった。

 

「・・・・嫌に静かですね」

 

自分達の足音や装備品の揺れる音、そして息遣い以外なにも聞こえない静かな空間。手持ちのライト以外光源もない今の状況でこんなにも静かなのは不気味としか思えなかった。

 

「誰も居ないみたいな感じだが、足跡がバッチリあるからな」

 

そう言いながらゲイリー軍曹が足元を見ると、ゴブンの足跡が無数に残っていた。

 

「それにこの臭いも。ここが奴らの巣なのは間違い無なそうですけど、こんなにも静かってことは既に逃げた後だったりしませんかね?」

 

「逃げただけならこっちも楽で良いんだがな、攫った女を利用して攻撃しようとしてくる連中だ。似た様な罠があってもおかしく無い」

 

それから暫くの間、ゴブリンにも罠にも出会わないまま一本道の洞窟を進んでいると突然道がY字に二手に別れていた。

 

「どっちに行きます?」

 

先頭を歩く部下がM37を構えたままゲイリー軍曹に聞いた。ゲイリー軍曹は一瞬二手に分かれて探索しようとも考えたが、ここで戦力を分散させるのは危ないかと判断した。となると左右どっちに向かうかだったが、足跡を見てみると左側が比較的少ないことに気がついた。

 

「右の方が足跡が多い。最初に少ない左に行くぞ」

 

「了解」

 

この判断が凶と出ないことをゲイリー軍曹は内心祈りつつ、左へ向かった。そして進んでいると、今までとは違う嫌な臭いが混じり始めたことアルファ隊の全員が気がつき始めた。

 

「隊長・・・この臭いって」

 

その新しく臭って来た臭いの正体に心当たりがあった部下の1人が、その最悪な予想が外れていることを祈りつつゲイリー軍曹に聞いた。

 

「あぁ。腐敗臭だ」

 

「あーくそっ。マジかよ」

 

「攫われない女のって訳じゃないだろうな・・・やめてくれよ?」

 

「どっちにしろ確認する必要がある。・・行くぞ」

 

それから直ぐにその臭いの発生源へ辿り着くことが出来た。そこは広いドーム状の空間になっており、その空間の真ん中には様々な動物の大量の死体が積み重なっていた。

 

「何じゃこりゃ・・・」

 

MX-991/Uと言う名前のL字型のライトで照らしながら確認してみると、その死体はどれもバラバラになっており臓器や肉片、骨などが積み上がっていた。余りの激臭とグロい光景にある物は顔を顰めて背け、ある物は手で鼻を摘んだりしていた。

 

文字通りの死体の山を間近で観察していたゲイリー軍曹は、ある予想を立てた。

 

「これは・・・残飯だな」

 

「え?」

 

「ざ、残飯?これが?」

 

予想外の単語が飛び出したことに驚き、部下が聞き返した。するとゲイリー軍曹は自身の足元に落ちていた何の動物の物なのかも分からない肉片を部下の方へ蹴った。

 

「それを見てみろ。噛み跡が幾つもある」

 

「マジかよ・・・って言うかアイツら肉食なのかよ」

 

「まぁ、如何にも肉を食いそうな歯をしてたしな・・・」

 

「た、隊長!これ!」

 

死体の山を見ていた部下の1人が何かを見つけ、ゲイリー軍曹を呼んだ。直ぐにその部下の元に駆け付けると、死体の山の一部を指差した。

 

「・・・腕か」

 

動物とは違う、明らかに人間の形をした腕が死体の山から飛び出していた。その腕も可食部は全て食べられており、骨の周りに僅かに食べ残した肉が残っているだけだった。手の辺りは余り食べられた跡が無く、殆どそのまま残っていた。

 

恐らく、この死体の山を探せば他にも人間の一部が出てくるんであろうが、それを探す気にはなれなかった。

 

「隊長・・これ拐われた人は全員飯になって言う可能性ありますよね」

 

他の隊員も言わないだけで、皆同じことを思っていた。そして、下手すると自分達までもがそうなってしまうんじゃと言う恐怖もあった。

 

「無いとは言えないな。だが、話によるとゴブリンは捕まえた人間の女を孕み袋にするらしい。つまり、ゴブリンの子を産めなくなるまでは生かされるって言うことだ」

 

「食べられても、生かされても地獄ですね・・・・」

 

「助かっても、精神的には壊れたままの可能性もあり得そうだな・・・」

 

「そんな地獄から助けてやる為にも急ぐぞ。戻ってさっきの分かれ道を右に行く」

 

そうしてアルファ隊は来た道を戻り、分岐を次は右に進んだ。それから更に進むと次は三方向に分岐していた。1番右の通路以外は、穴の大きさが小さく、しゃがまないと倒れなさそうな大きさだった。それを見たゲイリー軍曹は舌打ちをした。

 

「チッ・・・思っていたよりもこの穴は大きくて複雑みたいだな・・・いや、少なくとも100匹以上が居た巣なんだ。当たり前か」

 

「右に行きますか?」

 

「それしか無いだろう。マック、俺達がどっちに曲がったがメモしとけ」

 

「了解」

 

前回と同じ様に右に曲がってアルファ隊は更に奥へと進んだ。

 

「・・多分、さっきの小さい穴はゴブリンが自分達が掘った穴なんだろう。そもそも小柄なゴブリンがこんな広い洞窟をわざわざ作るとは思えない。それにピッケルやスコップで掘って作った穴にも見えない。この穴は自然に作られたやつなんだろう」

 

「自然に出来た洞窟にゴブリンどもが住みついて、更に掘って拡張したってことですかね?」

 

「そうだろうと俺は思う。そして、攫った女を連れて行くならゴブリン用の狭い通路じゃ無くて、今通っているデカい通路を使うんじゃ無いかって言うのが俺の予想だ」

 

「あの狭い通路に人間を通らせるのは難しいですしね」

 

「っ!コンタクト!」

 

1番後ろを歩き、そして後方を警戒していた兵士が叫び同時にM37ショットガンの発砲音が洞窟内に響き渡った。ゲイリー軍曹が振り返ると、散弾を全身に食らって血を吹き出し、肉片を飛び散らして倒れた2体のゴブリンが居た。

 

「今ので他の奴らにもバレただろうな。急ぐぞ!」

 

洞窟内全体に響き渡るレベルの爆音を響かせたので、間違い無く他のゴブリンにも聞かれただろうと判断したゲイリー軍曹はそう命令すると、アルファ隊は急足で洞窟の更に奥へ向かって行った。

 

その道中、前後から散発的ではあるがゴブリンからの襲撃を受けその都度M37やトンプソンで倒して行く。そしてゴブリンを倒しながら進み続けた末に、木の板で蓋をされた場所に辿り着いた。

 

木の板を退けると、先程のようにドーム状の空間が広がっており、その空間の奥の方にライトを向けてるとそこに女性が4人居た。全員身体中に痣などがあり、更にそれが何かは余り想像したく無いが、独特な臭いを放ち白濁した少し粘り気のある液体で身体が汚れていた。虚な目をして地面に横たわって、ゲイリー軍曹達が入って来ても反応が反応しない人も居た。

 

2人が入口の方を見張り、他の人達が女性達の方に駆け寄る。服も無く全裸の状態の女性達の身体は、土とそれが何かは考えたく無い粘液が付着していた。

 

「大丈夫ですか?分かりますか⁉︎」

 

「・・・・・ぅ・・・」

 

揺すったり軽く叩いたりしながら話しかけると、僅かだが反応があった。

 

「生きてます!」

 

「こっちもだ!」

 

「・・ぅ・・っ⁉︎ひっ・・い、嫌ぁぁぁ⁉︎来ないで!やめてやめてやめて!もうやめて!触らないでぇぇ‼︎」

 

「落ち着いて!助けに来たんです!」

 

ゲイリー軍曹達の姿を見た女性の1人が、半狂乱になりながら暴れ始めた。何とか落ち着かせようと暴れる女性の手を掴み声をかけるが、全く意味がない。

 

「クソッ、おいウィル!メデック!モルヒネで落ち着かせてくれ!」

 

「了解!」

 

呼ばれたメデックの兵士は、ゲイリー軍曹が押さえ込んだ女性に駆け寄るとモルヒネ・シレットを取り出す。これは負傷兵などに使う専用の注射器で、チューブと針が一体化している専用の物。

 

上腕に針を突き刺し、歯磨き粉のチューブのようにつぶすようにして、中の薬液をゆっくりと全て絞り出す。このモルヒネ・シレットはこの一本に入っている薬液の量が丁度1人用になっているので、戦場と言う極限の状況でも適切な量を確実に入れることが出来る便利アイテムだ。

 

早ければ1分程で効果が出始めるモルヒネのおかげもあり、徐々に動きが緩慢になって行く。

 

「すまんがこの人を頼む。俺は向こうを見てくる」

 

「了解」

 

落ち着きつつある女性をメデックに預け、意識もはっきりしていて、比較的落ち着いている女性の方に駆け寄って話しかけた。女性は目の前にやって来たゲイリー軍曹に懇願する様に手を出して来た。すかさずその手を握る。

 

「た・・助け・・・」

 

「もう大丈夫ですよ。助けに来ました」

 

「う、うぅ・・・グスッ・・・・良かった・・・・助かったぁ・・・・」

 

助けに来たと言うその言葉に安堵した女性はゲイリー軍曹の手を握ったまま額に引き寄せて、まるで肌の暖かさを確かめる様にしながら泣き崩れた。少し待って、落ち着き始めたタイミングを見計らってゲイリー軍曹は聞いた。

 

「今でよく耐えましたね。貴方のお名前は?」

 

「・る、ルウィ」

 

「ルウィさん。他に囚われている人が居るかどうか分かりますか?」

 

一応事前に聞いていた人数は居たが、他にも居る可能性はあると思い、そう聞いたが女性は首を横に張った。

 

すると、入り口の方からトンプソンの連続した発砲音が鳴り響いた。女性達が突然の爆音に驚き両手を耳で塞いで蹲る。

 

「隊長!ゴブリンどもが集まって来ました!そろそろ行かないとヤバいですよ!」

 

入り口で攻め込んで来るゴブリンを迎撃する隊員が叫ぶ。このままだとゴブリン達に囲まれて脱出が困難になる。そう判断しこれ以上の捜索はせずにこの4人を連れて脱出することに決めた。

 

「歩けますか?」

 

「はい・・・ぐすっ・・何とか」

 

ゲイリー軍曹は手を貸しながら女性を立たせると、女性は少しふらついたがしっかりと立った。他の3人の女性達は自力での歩行は困難だったので隊員がそれぞれ背負って運ぶことになった。

 

「すいません。うるさいと思いますがここを脱出するまでの辛抱です。少し走りますよ。救助者を守りつつ脱出する!ゴブリン共を寄せ付けるな!」

 

ゲイリー軍曹率いる部隊はアルファ隊は女性隊を連れて、監禁されていた空間から飛び出し来た道を急いで戻り始めた。来る途中に見かけていた小さな穴からゴブリン達がワラワラと出て来てアルファ隊の隊員達に襲い掛かる。

 

先行する隊員がM37ショットガンで前からやって来たゴブリンをバックショット弾で吹き飛ばし、ショットガンがリロードしている間はその後ろにいた隊員がトンプソンを撃つ。隊の後方も同じ様に追って来るゴブリン達をM37とトンプソンで倒して行く。

 

「数が多いな畜生!」

 

「どうせ群がられるなら可愛い女が良かったよ!」

 

銃と言う光り、けたたましい音を発して攻撃して来る未知の武器を目の前にしてもゴブリンは全く怯む様子が無く、棍棒や錆びた小型の剣などを持って奇声を発しながら突っ込んで来る。外に向かって逃げるに連れて前方からゴブリンが襲って来ることは無くなったが、代わりに後ろから追って来るゴブリンの数が増して来た。

 

通路が狭く2人が横に並べる程なので移動しながら後ろを攻撃出来る人数は2人が限界で、仲間の屍を踏み越えて迫って来るゴブリンに対して火力が不足し始めていた。女性を連れての移動なので移動速度も遅いので、ゴブリンとの距離が徐々に詰められて行く。

 

「軍曹!白リンを使って良いですか⁉︎」

 

ゲイリー軍曹は数秒考えた。今の状況とそして白リンを使うことのリスクを天秤にかけ、そして頷いた。

 

「・・・救助者を先に行かせろ!充分に距離を取ってからその後に投げて、俺達も全速力で逃げるぞ!ルウィさん、この2人について行って逃げてください。私達はゴブリンを足止めします」

 

女性は頷いてから他の女性を背負っていた隊員の後をついて行った。そして、一瞬足を止めてゲイリー軍曹の方を振り返った。

 

「貴方も、気をつけてください!」

 

「勿論です!さぁ早く!」

 

女性を背負った部下と、ルウィが出口に向かって走って行く姿を確認して、直ぐに射撃を始める。2人が片膝立ちの姿勢、ニーリングポジションでM37とトンプソンを構えて撃ち、その2人を頭の上をゲイリー軍曹が立射でトンプソンを撃ってゴブリン達を迎撃する。

 

「手榴弾も使って良いですか⁉︎」

 

「馬鹿野郎!こんな閉所の近距離で投げたらこっちも破片を喰らうぞ!」

 

「臭ぇんだよ!寄って来んな!」

 

M37をトリガーを引いたまま素早くポンプアクションを繰り返し、セミオートの様に連射するスラムファイアで乱射して迫り来るゴブリン達を穴だらけにして行く。洞窟内と言う狭い通路でショットガンの散弾は効果で、ゴブリン達は避ける空間が無くバックショット弾を浴びる。トンプソンの方も毎分700発の連射速度と.45ACP弾のストッピングパワーを生かしてゴブリンの肉体を穿つ。

 

「そろそろ良いんじゃ無いんですか!」

 

「そうだな。投げたら直ぐに逃げるぞ!」

 

「「了解!」」

 

女性達を先に行かせてから十数秒が経ち、充分に距離を取らせることができたと判断したゲイリー軍曹は使用を許可した。トンプソンを撃ちまくっていた隊員が腰のベルトに挟んでいたM34発煙手榴弾を取り出し、安全ピンを抜いた。

 

「投げるぞ!」

 

そう叫んでゴブリン達の方にM34発煙手榴弾を投げた。バネの力で安全レバーが空中でピンっ!と言う小さな金属音を出して外れ、そして地面に転がって数秒後に白い光を発しつつ勢い良く真っ白な煙が出始めた。

 

ゲイリー軍曹らはM34発煙手榴弾を投げた瞬間に撃つのをやめて全速力で走って逃げていた。ゲイリー軍曹達が大急ぎで逃げるのにも訳があり、このM34発煙手榴弾は煙幕を発生させる為に白リンを使用する白リンは空気中の酸素と激しく反応して燃焼して、真っ白な煙を発生させる。

 

が、この煙には強い酸性と有毒性を持つ微粒子が大量に含まれており、吸い込むと呼吸器や肺の粘膜が激しく焼け、呼吸困難や重度の臓器不全を引き起こして苦しみながら死亡することになる。特に今の洞窟内の様な密閉空間でその煙が充満すると直ぐに致死量の煙を吸い込むことになり大変危険。

 

更に先ほど空気中の酸素と激しく反応すると言ったが、これはつまり急速に空気中の酸素が無くなると言う訳で、洞窟や部屋の中の様な密閉空間なら直ぐに酸素欠乏で意識を失い、窒息することになる。

 

白リンの脅威はそれだけに留まらず、M34発煙手榴弾は約2,700℃の超高熱で燃え盛る白リンの破片を周囲に撒き散らす焼夷弾としても作られており、運悪くその燃える白リンの破片が身体に付着した場合、皮膚と肉を焼き尽くし骨に達するまで燃え進む。水をかけても燃焼は止まらず、その白リンの付着した部位を切り取るしかない。ベトナム戦争ではこれを使って洞窟内に潜むベトコンを殺し、村を焼いたりもした。

 

「ギァ"ァ"ァ"ア"‼︎」

 

「ギャヒィィィィ⁉︎」

 

「ギュワ⁉︎」

 

そして、銃撃にも怯まず突っ込んで来ていたゴブリンの何匹かは煙を噴出する物体にも物怖じせず突き進み、そしてその超高温の白リンの破片を全身の至る所に浴びてしまった。そしてその後から突っ込んで来たゴブリンも同じ様に焼かれ、地面に落ちて燃焼していた白リンの破片を踏んで足を焼かれるゴブリンも続出した。

 

目の前で骨まで焼かれてもがき苦しむ仲間と、肌に感じる熱でやっと危機感を覚えたゴブリン達の足が止まった。しかしそれがダメだった。逃げる訳でもなく、追いかける訳でもなく警戒、困惑してその場に立ち止まったゴブリン達は直ぐに洞窟内に充満した有毒な煙と、失われて行く酸素によって次々と苦しみ始めて倒れて行った。

 

ゲイリー軍曹達が息を切らしながら出口の所まで来ると、先に逃げていた女性達をロープで外に引っ張り上げ終えた所だった。入り口から顔を覗かせた部下が手招きして叫ぶ。

 

「隊長早く!」  

 

「分かってる!お前ら先に行け!」

 

入り口からはロープが垂らされており、それを握って部下達は地上に向かって登って行く。出入り口は人1人がやっと倒れる程の隙間しかないので1人ずつ登って行くしか無い。その間、ゲイリー軍曹と部下の1人はトンプソンを構えてゴブリン達に備える。

 

が、今はゴブリンよりも白リンの脅威の方が心配だった。白リンを投げた場所からある程度距離があるとはいえ、狭い洞窟内で使用したので油断は出来ない。遠くから聞こえて来るゴブリン達の苦しむ声を聞きながら、ゲイリー軍曹は警戒を続ける。

 

そして2人目の部下も無事に昇り終え、自分の番になった。ロープを掴んで泥まみれになりながら急いで勾配のきつい穴を登って行く。そして入り口の近くになると、待っていた部下達がゲイリー軍曹の服を掴んで一斉に引っ張り上げた。

 

アルファ隊が全員戻って来たのを確認した東雲は待機していたブラボー隊に命令を下した。

 

「よし、燃やせ!」

 

M9火炎放射器を装備していたブラボー隊の3人がゴブリンの洞窟に繋がると思われる穴向かって火炎を発射した。粘性の高い燃えたナパームがガスの圧力で勢い良く噴射され、一気に洞窟内に入って行く。勿論、この洞窟は広いのでその最深部まで炎が届くことはないが、先程の白リンと同じ様に洞窟内の酸素を急激に消費するため、直接炎が届かなくても洞窟内のゴブリン達は窒息することになる。

 

洞窟の規模が大きいので直ぐにはやめず放射し続ける。その様子を見ていたゲイリー軍曹はなんとか一仕事終えることが出来たことを確認して一息ついた。

 

「お疲れ様。ゲイリー軍曹」

 

東雲に声をかけられたゲイリー軍曹は直ぐに敬礼をした。

 

「報告が遅れました。アルファ隊6名全員、そして救出目標4名全員、無事帰還しました。尚、他に囚われている人間を見つけることは出来ませんでした」

 

「了解。帰還した後に詳細は聞くわ。報告書もお願い」

 

「了解しました」

 

ゲイリー軍曹と別れた東雲は通信兵を呼んだ。AN/PRC-77、通称マンパックと呼ばれる短距離用無線機を持っている兵士が来ると、東雲は司令部で待機する柊木に通信を繋いだ。

 

「司令、こちらトンネルラット隊の東雲です」

 

《あ、どうだった?》

 

「作戦は成功、4人全員の救出に成功しました。ですが・・・」

 

東雲は救出されてメデックに診察を受けている女性達の姿をチラッと見た。4人の内3人は1人がパニック状態で、もう1人が放心状態、もう1人は激しく泣き喚いて意味不明なことを言っており、洞窟内での監禁生活の悲惨さを物語っていた。

 

「4人とも身体的には大丈夫そうなんですが・・予想通りのことが監禁中に起こっていた様で、その体験から1人を除いて精神的には無事とは言えなさそうです・・・」

 

《そっか・・・まぁそうだよな。兎に角丁重に保護して、連れて帰って来てくれ。ゴブリンの巣の方は?》

 

「今火炎放射器で燃やしています。恐らく内部にいたゴブリンは全滅すると思います」

 

《分かった。他の隊員達にもお疲れと言っといて。東雲もありがとうな》

 

こうして、初のゴブリンの巣の攻略は終了した。充分に巣を焼き終えたトンネルラット隊はその場を後にして拠点へと帰還した。救出された女性達は直ぐに野戦病院に運び込まれ精密な身体検査を行った。救出目標を全員助け出し、そして初の敵の絶滅を戦死者無しで終えることが出来たと言うことで拠点ではちょっとしたお祝い騒ぎになった。

ベトナム戦争で使われた装備や兵器と言えば色々ありますが、何かこの兵器や装備を登場させて欲しい!と言う要望やこんなのがあるよと言う要望がありましたらコメントで教えて下さい。絶対に出すとは言えませんが、参考にさせて頂きます。



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