第1話 初めまして世界
自己満足と私の趣味全開で書いている小説なので万人受けはしないんでしょうけど、1人でも多くの人に読んで貰えたら嬉しいです。
意識がお戻り再び目が覚めると、柊木は廃墟の中に仰向けで寝ていた。体を起こして周囲を見渡してみるが、崩れた建物内には柊木以外の気配は無かった。
「ここが・・・・異世界・・?」
まだ現実感が無くてそう言った実感は全く湧かなかったが、明からに知らない場所に寝ていたんだからあの神様が異世界に俺を転移させてくれたんだろう。
「ん?」
手元に何かあるのに気がついて、視線を下に向けると床にタブレットが置いてあった。柊木はもしかしてこれが神様の言ってたチート能力なのか?と思ってそのタブレットを拾い上げて操作してみる。すると、タブレットが起動して文字が表示された。
『このタブレットは貴方にしか操作出来ない様になっています。何かご不明な点がありましたら、質問して頂けるとお答えします』
そう言う文章が表示されて、文の最後に『次に』と表示されたところを柊木は押した。すると画面が変わって『説明』と書かれた欄に変わった。柊木は画面をスクロールして読み進めて行く。
『貴方の能力は、このタブレットを使ってベトナム戦争時代に使用されたアメリカ軍の兵器や武器と、それらを操作する兵士を召喚する能力です』
「はは、成る程。貴方にピッタリなチートの様な能力ってそう言う意味ね」
柊木は自他共に認めるオタクだったが、それはアニメや漫画などが好きでよく見ていたからでは無かった。それよりも好きでのめり込んでいたのがミリタリー関連の事。更に言うとベトナム戦争時代の兵器などが好きだった。
ベトナム戦争に関することが書かれたミリタリー雑誌を本屋で見つけると速攻で買い、その当時着ていたアメリカ軍の服と同じデザインのレプリカ品を買ってM16A1電動銃を持ってサバゲーに参加したりもしていた。
『敵を倒したりすることでレベルを上げることで召喚できる歩兵の数や兵器の数が増えます。一日で一回しか召喚は出来ず、戦闘中も召喚出来ません。小・重火器や弾薬、その他物資は一部例外を除き量に制限は無く、無制限に召喚可能。後方支援要員は歩兵とは別途で召喚する必要がありますが、複数人で運用が必要な兵器は、その兵器を召喚すると操作要員も一緒に召喚されます』
「成る程ね。流石に最初から好き放題召喚出来る訳じゃ無いのか」
『一度召喚したものは、削除することは出来ません。また、死んでしまった兵士と同じ兵士を召喚することも出来ません』
つまりもしお気に入りの兵士がいて、それが死んでしまった場合復活させることは出来ないってことか。俺の性格的に召喚した兵士と全く仲良くならずにただの兵士として見るってことは出来ないから、慎重に運用した方が良いだろうな。
『そして、神様のわがままを聞いてくださった特別報酬として、陸・海(海兵隊も含む)・空軍の大規模基地をそれぞれ一つずつ召喚出来ます。詳細は基地設営欄にて』
説明欄を粗方読み終えて、『次へ』と書かれたところを押すとホーム画面に移動した。すると、『秘書官を選んで下さい』と言う文章と共に選択欄が出て来た。先ず最初に出て来たのは『男性か女性か』。
「・・・やっぱり女が良いよな・・・・・」
どうせなら男より美人の秘書官の方が良いと言う男の要望には逆らえず、少し迷いながらも女性を選択した。そして次に出て来たのは、『性格や体格などの詳細設定をしますか?それともお好みにしますか?』
「お好みにしますか?って・・・どう言うことだ?」
柊木はお好みでって言うのはランダム生成ってことだろうと判断し、一々詳細に設定する気も無かったので、取り敢えず『お好みで』を選んだ。すると『服装を選択して下さい』と出て正装、礼装、通常勤務服、戦闘服から色々と選べる様になっていた。
「戦闘服で良いよな」
こんな廃墟の中て正装やら礼装などといったキッチリした軍服を着る必要も無いよな。と考えた柊木はオーソドックスはタイガーカモの迷彩柄の戦闘服を選んび、靴も軍用のブーツにした。服装も選択し終えると『秘書官の設定は以下の通りになりました。決定すると変更は出来ません。よろしいですか?』と言うか文と、『決定』と『戻る』のボタンが表示された。
少し考えて、今からでも自分好みの人間を作り出してしまおうかとも考えたけど、それは欲張り過ぎだよなと思った柊木は『決定』を押した。
すると、神様があらわれた時と同じ様に光の粒子が柊木の前に集まり始めた。そして、直視できない様な光になった後に、光が収まった。そして柊木が目を開けると、目の前に1人の女性が立っていた。
「ミア・東雲です。これからよろしくお願いします」
「なっ・・・・」
そう名乗ってから綺麗な敬礼をしてくれた東雲を見た柊木は敬礼をし返すことも、何か言うことも出来ずに顔を赤くして固まってしまった。彼女の容姿がもし街ですれ違ったら間違い無く振り向いてその姿を追ってしまうだろう美女だったと言うのもあるが、戦闘服越しにでも分かる程の大きな胸に、つり目の赤い瞳。そしてサイド三つ編みにした白い綺麗な髪に、低めの身長。
髪型も、胸が大きいのも、つり目なのも、低身長なのも、ビジュも何から何まで柊木のこんな女の子が良いなと言う欲望の姿をそのまま再現した姿だった。
そしてそこでやっとさっきの選択の『お好みで』の意味を柊木は理解した。俺の好みの姿でってことかよ!小学生から国語をやり直したいな畜生!
「どうしました?」
固まってしまった柊木に東雲が首を傾げながら聞いて来た。流石にここままは不味いと思った柊木は、深呼吸をして自分を落ち着かせてから挨拶し返すことにした。
「すぅーーふぅ〜・・・・。え〜っと悪い。初めて人を召喚したからちょっと驚いてた。知ってるかもだけど俺は柊木隼人。よろしく」
「はい。よろしくお願いします」
柊木と東雲はお互いに手を取り合って握手をした。何とか平然を装いながらも柊木は内心「うわっ、手が柔らかっ!」と人によってはちょっとキモいとも思われそうなことを思っていた。
「えっと・・東雲さんは日系人?」
最初に名乗った時にミア・東雲と名乗ったことから彼女は純粋な日本人って言うことでは無いのかなと思った柊木は聞いてみた。
ベトナム戦争でも日系人や黒人がアメリカ軍人として戦ったが、ベトナム戦争では今までには無かった変化があった。今までは日系人は日系人の部隊、黒人は黒人の部隊と分けられることが多かったが、ベトナム戦争ではそんな事はせずに全人種が一つの部隊に居た。
「はい。日系アメリカ人です。多分他の兵士を召喚した時も全員アメリカ人で、英語の名前になっていると思いますよ。でも英語じゃ無くてもこうして普通に話せるので、わざわざ英語を話そうとしなくても良いですよ。それと、貴方が上官なんですからさん付けもいりません」
一応アメリカ軍の兵器を使うから人種はアメリカ人って言うことになってるのね。でもこうして英語じゃ無くても話が通じるのは有難い。英語は会話するなんて出来ないからな。
「悪い。ついさん付けしちゃうんだよな。って言うか上官って柄じゃ無いんだよなぁ。まぁこんな感じの奴だからそっちもそんなに畏まらなくて良いからな。それと色々と迷惑をかけると思うけど、宜しくな」
「貴方を支える為の私ですから。こちらこそよろしくお願いします。それで、これからどうします?」
「まぁ取り敢えずはここを仮拠点にしようと思っているから拠点の設営に必要な物と、武器やら他の兵士もかも出さないとだな」
「ですね」
改めてタブレット画面を見ると、メニュー画面になっていた。メニュー画面の中にある『召喚欄』と書かれた所を見て見ると、様々な武器や兵器が書かれた欄が出た。
「すっげ〜これ全部召喚しようと思ったら出来るのか・・・」
リストには小火器欄、銃火器欄、車両欄、航空機欄、艦船欄など色々とあり、試しに小火器欄を押してみると多種多様な銃の名前が書かれたリストが出て来た。その量に柊木は驚いた。ド有名な物からそんな物まで⁉︎と驚き思わずニヤついてしまう様なマイナーな武器まで大量だった。
そして『召喚可能数』と書かれた所をタップして見ると今のレベルで出せる量が表示された。
『歩兵2個分隊(20人)』
『後方支援要員 1個小隊(40人)※後方支援要員も武器を使った戦闘は出来ますが、歩兵と比べて戦闘能力も練度も低いです』
『火砲6門』
『車両7台』
『航空機6機』
『艦艇5隻』
「まぁ最初だから数はこんなもんか。艦艇は今は論外として、さて何をどれくらい出そうか・・・」
一日に一回しか召喚出来ないから後からこれを出しとけば良かったのに!と思わない様によく考えて選んで召喚しないとだよな。召喚欄のリストと召喚可能数を交互に見ながら何を出そうか悩んでいると、東雲が柊木の隣に来て話しかけて来た。
「取り敢えず車両は欲しいですよね」
「うわっ⁉︎」
画面に集中していて東雲が近付いて来たのに気がついていなかったら柊木は驚き、横に飛び退いた。
「?どうしました?」
「い、いや。悪い。集中してたから驚いた」
「あ、すいませんでした」
「いや、東雲さん・・いや、東雲のせいじゃ無いから気にしなくて良い」
「・・もしかして、今までこうして女性と話したりする機会が無かったんですか?」
「うぐっ・・・・・」
そう若干ジト目で見られながら聞かれたら柊木は、核心を突かれて思わず胸を抑えた。生まれてから今日まで東雲が1番合った回数が多く、そして話した女性は母親だった。
「へへ、どうせ俺は寂しい青春を送った男さ・・・」
「何を言っているのか分かりませんが、取り敢えずドンマイと言っておきますね」
「言ってろ。ここで美少女の1人くらい作ってみせるさ」
「でもその様子だと、カッコよくエスコートとか出来なさそうですねw」
「・・一応、俺はお前の上官なんだからな?」
フッと嘲笑うように笑う東雲に対して柊木が恨めしそうに見ながらそう言ったが、東雲本人はどこ吹く風と言った表情だった。
「そんなに畏まらなくて良いって言ったのは貴方ですよ」
「だからって嘲笑うなよ・・まぁ良いや。で、車両だっけ?やっぱりジープとかを出しとくか?」
これ以上このことで話しても悲しくなるだけだと思った柊木は話を戻すことにした。
「そうですね。後は部隊全員が移動する必要が出た時に備えて人員輸送用のトラックも用意した方が良いと思います」
「確かに」
何らかの理由で部隊全員を移動する必要があったら、4人乗りのジープだと複数台必要だからな。出せる車両の数が7台しかない今は余計に出す訳にはいかない。
「それじゃぁ・・・周辺の探索もしたいし、出す車両はジープ2台にトラック2台にするか?」
「それで良いと思いますよ」
「よし、ならトラックはM54にしてと・・・」
タブレットを操作してM57トラックのM55カーゴを装備したタイプを選択。更にジープにはM151A1を選択。M151A1はケネディジープと呼ばれる二次大戦で活躍したジープ系の四駆の後継車でベトナム戦争などで広く使用されたジープだ。更に柊木はジープにM2重機関銃を搭載した。
「んで、火砲はどうする?拠点防衛用に105ミリを出せるだけ出しとく?」
「ここ周辺の脅威度がどれほどか分かりませんからね・・・。もし魔物や敵対的な人間が大勢攻め込んで来るようなら欲しくなりますが。でも今の私達に榴弾砲は手に余ると思うので迫撃砲で良いと思いますよ」
「あー確かにな。しかも迫撃砲なら量の制限もないしそうするか。ならM30とM29を何門か出しとくか」
「良いと思いますよ」
M30は107ミリの重迫撃砲で、M29は81ミリの軽迫撃砲。どちらもベトナム戦争では陣地防衛や前線部隊への火力支援用火器として大量に運用された迫撃砲だ。
「航空機は・・・1機か2機だけヘリ出しとく?」
「ヘリはまだ要らないと思いますよ。それに駐機して置く場所も無さそうですし」
そう言って外を見る東雲に合わせて、柊木も崩れた建物の壁の隙間から外を見て見る。確かに、ヘリが離着陸出来そうな広さを持った場所が無いね。草木が邪魔すぎるし、地面も平坦じゃ無い。
「確かに。それじゃ後は武器とか装備とか拠点設営に必要な物を用意するか」
そうして東雲に相談したり、助言を求めたりしながら必要な物をリストアップして行った。そして全部選択し終えた柊木は最後にそれぞれを物を召喚する場所を選択して、そして決定を押した。
「おぉ?」
辺りが光に包まれて、そして光が収まると同時に色んな物が一気に現れた。廃墟の外には榴弾砲や拠点設営に必要な物資と車両が。そして柊木の目の前にはM16A1とM60E1で武装した東雲と同じタイガーカモの戦闘服を着た20人の兵士と、後方支援要員30人が現れた。
「おぉ〜」
完全武装の兵士20人と、後方支援要員30人の合計50人が綺麗に整列して、一斉に柊木に向かって敬礼する壮観な光景に思わず感嘆の声が漏れた。だが、さっきの反省を生かして次は柊木はしっかりと敬礼をした。
「今日から貴方達の上官になる柊木隼人です。よろしく」
「はっ!よろしくお願いします!」
やっぱり慣れないなこれ〜。と上官として扱われる事にむず痒さを感じながらも、お互いに挨拶を交わした。
「さて、それじゃぁ早速で悪いけど皆んなに働いて貰うよ。先ず、現状俺達は周辺の地理も分かって居ない状況だから4人1組の偵察隊を2組編成して、ジープに分譲。それぞれ南北方向に5キロ地点まで進出。人工物を見つけたら、人間を見つけたら近づく前に俺に報告を。特に何も無かった場合はそのままここに戻って、次は東西方向にそれぞれ向かって同じように5キロ地点まで進出。特に何もなければそのまま帰投して何処に何があってどんな地形だったかを報告してくれ。その他の人員は後方支援要員と一緒に仮設拠点の設営をして貰う」
「「「「「了解!」」」」」
柊木からの命令を受けた兵士達はそう言って敬礼をすると、テキパキと準備を始めた。直ぐに2組の偵察隊が編成されて、ケネディジープに乗り第1偵察隊が北に、そして第2偵察隊が南へ向かって行った。走り去って行くケネディジープの後ろ姿を見ていた柊木はふとあることをが気になり、東雲に聞いてみることにした。
「今ふと思ったんだけどさ、兵士が死んだり兵器が壊された場合ってその消耗した分は追加で召喚出来るのかな?」
「さぁ・・・それはそのタブレットに聞い方が良いと思いますよ」
「そうするか」
東雲に言われた通り質問欄で質問してみると、直ぐに返答が返って来た。
『消耗した分の追加召喚は可能です。なので例えば歩兵を現在の上限一杯の20名召喚して、戦闘で5名失った場合は5人だけ追加で召喚できます。また、兵器の場合も同じですが、消耗した兵器を召喚した後にその破損した兵器を修理して使用することも可能です』
「出来るみたいだな」
「良かったですね。これで損失分が補充出来なかったらなかなか厳しかったですよ」
「だな。でもだからと言って兵器も兵士も使い捨てるつもりは無いよ。んじゃ、俺も手伝うか!」
そう言って土嚢を運んでいた兵士の手伝いをしに行こうとする柊木を見た東雲が意外そうな表情をした。
「柊木司令は司令らしく座って部下の働きを見てても良いんですよ?」
「あ〜いや、みんな頑張っているのに俺だけ何もしてないのが、何だか申し訳なくなっちゃうからさ」
「はぁ〜。つくづく司令らしく無い司令ですね」
「さっきまで一般人だったんだ。仕方ねーだろ」
やれやれと言った感じで溜息を吐いた東雲は「まぁ人手も今は足りませんしね」と言って柊木と一緒に設営を手伝い始めた。
ただの大学生だった柊木と、鍛え上げられた兵士である部下とは体力や筋力に圧倒的な差があり、直ぐに柊木ばばててしまったが、それでも自分の出来る範囲で手伝いながら、色んな兵士と話して仲を深めて行った。
「そう言えば、皆んなって自分がどう言う存在かは認識してるの?」
「ええ。貴方の能力によって召喚された存在だって言うことは分かってますよ。あ、それはそこに繋げ下さい」
流石に天井すらも崩壊して殆ど無くなった廃墟で寝泊まりする訳にはと言うことで、テントを部下と共に組み立てながら柊木が隣に居た兵士に聞くと、そう答えた。
「これをここに繋げてっと・・出来た。分かってるのね。自分が召喚された存在って言うのは嫌な感じがしない?」
「いえ、特に。我々は司令の為に働く兵士ですので」
「俺の為に働いてくれるのは嬉しいけど、ある程度はわがままも言ってくれて良いからな。その方が俺としても気が楽だ」
「なら今度何か欲しい物があったら、ねだらせて貰いますね」
「おう、俺が用意出来る範囲でなら用意するよ」
「お、なら東雲少尉を俺の彼女にしても良いですか?」
話を聞いていた別の兵士がニヤッと笑ってそう聞いて来たが、柊木はどう答えたら良いか分からず「え〜」と言って苦笑いした。
「ちなみ東雲の何処が好きなんだ?」
「顔が良いって言うのもありますけど、やっぱりあのデカい胸でしょう!まぁもう少し身長が高い方が俺の好みですけどね」
「お前司令相手に・・・すいません。こいつバカなんです」
「あははは。まぁこのくらいの方が俺としても気を使わずに話せて楽しいよ」
「お、なら司令は彼女にするならどんな女が良いですか?やっぱり胸はデカい方が良いですよね⁉︎」
「うーん・・・まぁ、否定出来ないかなぁ」
そもそも東雲のビジュアルは俺の好みを100%再現して生み出された存在なんだよなぁと柊木は思いつつそう答えると、兵士は隣にいた仲間の肩をべしべしと叩きながら喜んだ。
「ですよね!ほらな言ったろ?やっぱり男なら誰しもデカい方が好きなんだよ!」
「何バカな話してるんですか」
そんな話しをしながらテントの骨組みを組み立てていると、東雲がやって来て呆れた様子で柊木達を見て来た。
「あー・・・・すまん」
何か言い訳を言おうかとしたが、とくに上手い言い訳も思いつかなったので柊木は素直に謝った。東雲は溜息を吐いてから要件を話し始めた。
「第1、第2偵察隊共に5キロ地点に到着したとのことで、今から帰投するそうです」
「分かった。報告ありがとう」
ここにこうして廃墟があるくらいだし、近くに村とかが無いかなと思ったけど無いみたいだね。まぁまだ北と南をざっと探しただけだしこれから見つかるかる可能性も十分にあるよな。
と考えつつ作業を再開していると、少し離れた所から他の兵士の叫び声が聞こえて来た。
「東側からドラゴンらしき生物がこちらに接近ッ‼︎」
「ドラゴン⁉︎」
その報告を聞いて柊木や他の人達も作業を中断して、東側の空が見える所に移動して空を見上げると確かに居た。腹以外が真っ黒の小型のドラゴンが1匹飛んでいた。初めて見る異世界の生物、それもドラゴンに柊木も周りの兵士達も思わず見惚れていた。
空を悠々と飛ぶドラゴンを暫く見ていて、そらそろ作業に戻ろうかと皆んなが動き始めようとした時、誰かが呟いた。
「・・・なぁ、アレってこっち来てないか?」
柊木がもう一度ドラゴンの方を見てみると、自分のいる所の上空近くまで飛んで来ていたドラゴンが緩降下し始めていた。それはどう見ても、ここに向かって突っ込んで来ていた。
「こっちに突っ込んで来るぞ!全員伏せるか何かに隠れろォ‼︎」
出来る限りの大声で柊木は叫んで周りの兵士達に警告する。
「司令も伏せてッ!」
東雲が走って来て柊木の頭を掴んで無理矢理地面に伏せさせた。
「わっぷ!」
直後、「グアガァァァァァア‼︎」と言うか聞いたこともない咆哮を轟かせてドラゴンが柊木達の居る所へ降下して来た。そして地面に衝突する直前で急上昇すると同時に、設営が終わっていた大型テントの一つをゴツイ足で鷲掴みにしてそのまま上空へ持ち去った。
ドラゴンが飛び去る際に強烈な風が柊木達に降りかかって来た。
柊木が目を細めながらドラゴンの後を目で追うと、持ち上げたテントが気に入らなかったのか、それとも食べ物では無いと分かったのかは分からないが、上空で捨てた。
そして上空を旋回しながら柊木達の方をじっと見て来た。そんなドラゴンの様子を見ていた柊木は「コイツ俺達を食うつもりか⁉︎」と思い叫んで全兵士に命令を出した。
「あのドラゴンには敵意があると判断!非戦闘は退避!戦闘員は総員戦闘用意!奴がまた近づいて来たら撃て!」
ドラゴンが襲って来ない今の内にと伏せたら物陰に隠れていた兵士が地面に置いたりしていた武器を拾い、そして銃に弾が装填されていることを確認した後に安全装置を解除した。
今ここに、異世界に来て初の戦闘が始まろうとしていた。




