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「だから、持ってないってお金なんて…」
とあるアメリカの片田舎。車どころか人すら一日に両手以下しか通らないような道で、二人の男に私は脅されていた。
日は肌が痛くなるほど照り、風は吹くたびに少量の砂を体に当てる。正直不愉快である。
一人の手には鈍く黒光りする物が握られていた。端的に言えば銃である。
数年前、激化した他国同士の戦争の仲介によって反感を買ったアメリカは、敵国側の人間や国内のアメリカ意見否定派によって大規模デモやテロ事件等が発生。幾つかの主要都市に大きな被害が及んだ。
その結果、自国の銃火器の管理が行き届かなくなり、銃所持資格も持たない民間人にまで違法に銃が出回るようになってしまった。
しかも、偽造資格も出たときた。資格の効力も薄れ、もはや犯罪大国である。
銃所持資格自体、民間人の銃による犯罪の増加対策だったはずが、皮肉にも民間人の犯罪によってシステム崩壊を招いてしまった。
当たり前のように治安は悪化。政府も何とかしようとはしているようだが、事実今の私の状況が改善の兆しがないことを物語っている。
「だったら何しにこんなところに来やがったんだ?チャイニーズ」
銃を持っていないほうがわざとらしく笑いながら私を指さす。
銃を持つことで自分が強くなったと勘違いした馬鹿どもが、こうやって差別発言をすることももはや普通である。
ただでさえ差別自体は存在していたのに、違法銃の拡大により一層ひどくなった印象だ。しかも、アジア人のか弱い女の子な私は格好のカモなのだろう。呆れる。
「私は日本人だ。いい加減にしてくれない?」
「開放してほしいってんなら潔く所持金全部、こっちに渡しな。チャイニーズ」
今度は銃を持った方が銃をグイっとこっちに突き付けながらニヤッと笑う。あぁ面倒くさい、バカ、アホと呼ぼう。
バカがグイっとしたことで頭と銃口の距離はもう1メートルもない。下手に動けば天国か、将又地獄か。
アホも目尻を指で引っ張り細目にする。典型的なアジア人差別のジェスチャーだ。
というか本当に今提げているバッグにはお金が入っていないし、入っているものなんてアレくらいだ。
正直、バッグを強引に奪いにでも来たならば対応はできる。しかし中途半端にアタマがあるおかげか脅すだけで動かない。ほんと、クソッたれな法律である。
「だったらバッグを奪ってでも持っていけば?」
両手は上に上がっているため、腰を回して二人の方にバッグを向ける。誘ってみたがどうだろうか。
しかしアホはそろそろ痺れを切らしたのか、バカに「もう奪っちまおうぜ」と耳打ちする。聞こえてんだよ。
バカはバカにあるまじく一瞬迷ったような表情を見せたが、「相手は女だ」と自己完結したようで、ほら奪え。と顎をしゃくってアホに指示した。やっとか。
バッグを下すために挙げていた両手を下げながら、ばれぬ様自然に右手を腰に回す。
少しでも気を抜いた瞬間、お前らの負けだ。この腐れメリケンが。
肩ひもが肩から外れきってないというのにアホが無理やり奪い取っていく。少々重たかったことも相まって、擦れた肩が少し痛む。
奪い取ったアホがバッグのチャックを開ける。バカは本当にバカの様で銃口はこちらに向けているものの、顔をバッグの方に持っていく。その瞬間、銃口がぶれる。
これは銃の所持が資格化された時にできたクソッたれな法だが、一言一句は覚えていないものの要約すると「こちらに被害が及ぶまではこちらから発砲ができない」というものだ。さらに端的に言えば、「先に撃ったもん負け」となる。
被害というとなんだか大層なものに感じるが、今回の様に物を脅し取られた程度でも被害の範疇に入る。
しかしそのような被害がなかった場合、下手したらこちらの資格が失効してしまう。それこそ、街中で撃って過剰防衛が証明されでもしたら一生以上、死刑以下で塀の中だろう。
しかも政府もが腐っているお陰で国中がカオス化してからも改正が加えられていない。そのため、資格のあるなしに関わらずこのような法の穴をかいくぐるような犯罪が発生しているのだ。
だが逆に、被害さえ受けてしまえば発砲可能だ。しかし、殺してしまうと過剰防衛となる。
じゃあどうするか。勿論、過剰防衛にならない程度にぶっ放す他ない。
太ももあたりまであるジャケットを右手でどかしつつ隠してあったホルスターの銃を掴み、抜く。
人差し指でサムセーフティを解除し、トリガーに指をかけ、発砲。
一応左手も添えたには添えたが、45口径のインパクトがほぼダイレクトに右手首に伝わる。
飛び散った血と、耳鳴りと。空薬莢の跳ねる音と、ガシャーンという音が落ち着いたのち、バカが右手を抑える。
言葉で言い表せない発狂をしながら崩れ落ちるバカに手を差し伸べながらアホが叫ぶ。
「FUCK!おい大丈夫か!」
バカは差し出された手を掴むこともできずに地面にうずくまる。チッ、バッグ落としやがって。中身ダメになってたらどうすんだ。とはいえ
「はーやっとバッグとったね。あー、痛ったい」
まだ微かに煙が上がる銃口を二人の方に向けたまま左手に持ち替え、衝撃の加わった右手首をぶんぶんと振る。
「この…ファッキンチャイニーズが…」
ここまでされてもまだ悪態をつく余裕があるのか。完全に素人だと思ったが、もしや違うのだろうか。
「さて、とりあえずさっさとどっか行ってくれない?」
そろそろ右手首も落ち着いてきたので、スライドを引いて一発排莢してから再び右手に持ち直す。
バカはうめき声をあげてうずくまったままだ。
やめときゃいいものを、アホは転がった銃を二度見して、手を伸ばした。
二発目の発砲音。今度は金属とプラスチック。あとは軽く抉れたコンクリートが飛び散った。
「あなたのグロック、もう使い物にならないよ。残念」
一発目の時点でダメになっていた可能性はあるが、保険はかけておいても損はないだろう。
バカとアホももう何か言う気力もなさそうだ。私も別に、人を殺す気はさらさらないし、誰かに見られでもしたら過剰防衛×2で物理的に首が飛ぶ。
しかし動く気配はなさそうだ。人を脅しておいて資格持ちに撃たれたら弱者ムーブですかそうですか。
はーっとため息を吐いて左手を腰に添える。銃口を外し、ひらひらと振ってあっちいけとジェスチャーをする。
「ほら、行った行った。それとも二人そろって自殺願望?やめてよメンヘラじゃ無いんだから」
まだバカが何か言おうと口をもごもごしていたが、アホに体を支えられながらやっと背を向け逃げ始めた。
「お前…絶対に殺す…背中に気を付けるんだなファッキンチャイニーズ」
「今背中向けてるのそっちだし、あとそれ遠回しな中国批判だからやめときなよ。私、中国人の友達いるんだから」
厄介者も追い払ったことだし、大事なバッグを回収しますか。
と思ったが、これが油断だった。
警戒はしていたつもりだったが、バッグを拾うためしゃがんだとたん銃を持っていないと思っていたアホがどこからか銃を取り出した。
まずい。と思うより先に、乾いた発砲音が響いた。
設定は適当。銃撃てるちょっとぶっ飛んだかっこいい女の人書きたかっただけ
yuuki




