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真・意味がわかると怖い話 四時  作者: 妙原奇天


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7/8

既読の数.txt(提出用出力)

このテキストは、行方不明者届に添付したチャットのエクスポートです。改行やタイムスタンプは当時のまま。個人情報に関わる部分は伏せ字にしています。——提出者:□□□(渚の兄)


【グループ名】裏高尾ナイト

【参加者】

智哉ともち

なぎさ

陽斗はると

瑠依るい

(※当初、参加者は上記4名のみ。グループ作成者:智哉)


2025/09/20 17:01

智哉:みんな、18:30にJR〇〇駅西口集合ね。ライトと熊鈴、雨具、各自。

渚:了解ー!夜の山、初めてでちょい緊張。

陽斗:GPSアプリ入れとけよ。リンク貼るわ→ [位置共有の招待リンク]

瑠依:しれっと熊出すのやめてくれ……


2025/09/20 18:12

渚:電車遅れてる。18:35着。

智哉:OK。駅でおにぎり買っといてくれ。

陽斗:トイレ済ませろよー。山ん中で灯りつけたら虫地獄だぞ。

瑠依:既読3。渚まだ車内かーい。


2025/09/20 18:28

システム:「位置共有」の招待リンクが再生成されました

智哉:あれ、期限切れてた。再送→ [位置共有の招待リンク(公開)]

陽斗:おいおい、公開にすんなってw

智哉:駅前Wi-Fiでやったらそうなった。大丈夫でしょ、人混みだし。

瑠依:まあ、すぐクローズしなよ。


2025/09/20 18:37

渚:着いた!西口の像の前。

智哉:見えた。白パーカー?

渚:うん。

陽斗:集合写真撮るかー。

瑠依:のちほどな。まずバス乗るぞ、19:05発。


2025/09/20 19:11

渚:バス揺れる〜

智哉:20:00には登山口。予定どおり。

陽斗:気温21度。風吹いてる。

瑠依:既読5になってるけどバグ?

渚:え、4人しかいないのに?

智哉:電波悪いと表示おかしいよ。気にすんな。

陽斗:スクショしたわ。既読5。こわ。

(画像:画面キャプチャ/「既読:5」)


2025/09/20 20:01

智哉:登山口着。ストレッチしてから行く。

陽斗:位置共有オンにしとけ。

渚:オン!

瑠依:オン。

システム:「位置共有」に新しい参加者が参加しました(1)

渚:え。

陽斗:なんだよこれ。

智哉:アプリだろ。たまにある。歩くぞー。


2025/09/20 20:26

渚:星出てる!きれい!

瑠依:写真頼む。

渚:はい。→(画像:山道、先頭のライトが4つ、遠くに薄い光)

陽斗:おい、奥にもライトなかった?

智哉:車道の反射じゃね?

渚:先頭だれ?

瑠依:智哉。

陽斗:じゃあ後ろの点は何。

智哉:たぶん俺の首振りの残像。スマホカメ弱い。


2025/09/20 20:41

渚:分岐ついた。標識に「○○尾根」。

陽斗:左が近道、右が緩いけど安全。

瑠依:夜だし右で。

智哉:OK、右。

渚:既読5……まただ。

陽斗:もうやめてw 俺、鈴鳴らしとく。

(音声メッセージ:チリン、チリン……)


2025/09/20 21:03

智哉:休憩。水分とれ。

渚:はーい。

瑠依:渚、水筒軽い音してるけど中入ってる?

渚:あ、少ししか。自販機で買ってくればよかった。

智哉:分けるから節約で。

陽斗:お、位置共有マップにピン増えた。

渚:5つ目のピン……名前なし。

瑠依:距離3mって出てる。

陽斗:誰?

智哉:アプリ落として再起動。行くぞ。


2025/09/20 21:18

渚:足音、後ろから一個多くない?

陽斗:気のせいだよ。

瑠依:風の音。

智哉:列崩すな。間隔2m。

渚:うん……

(音声:ザッ、ザッ、ザッ、……ザッ)


2025/09/20 21:44

陽斗:トイレ行きたい。

智哉:小ならそこらで。ライト消すなよ。

渚:はる、ライト!

陽斗:つけてる。

瑠依:既読5。

智哉:はいはい。

渚:ねえ、誰か「うしろ、うしろ」って言った?

陽斗:言ってない。

瑠依:言ってない。

智哉:渚、疲れて幻聴。水飲め。


2025/09/20 22:07

渚:急に電波入った。通知いっぱい来た。

陽斗:山頂近いとこだからな。

瑠依:夜景えぐ。

渚:写真撮る!→(画像:夜景と4つのヘッドランプの光、画面端に白い袖がのぞく)

陽斗:渚、右端の白なに。

渚:え、私の袖?

智哉:渚は黒。

瑠依:寒いから俺も黒ジャケ。

陽斗:白い袖の人……?

智哉:夜露で反射。はい、歩く。


2025/09/20 22:26

システム:「位置共有」から参加者が退出しました(1)

渚:え。

陽斗:だれが入っててだれが出たの。

瑠依:名前なしのピン、消えた。

智哉:気にしすぎると危ない。手元見ろ。


2025/09/20 22:48

渚:ごめん、立ちくらみ。

智哉:5分休憩。

陽斗:行動食食え。

瑠依:渚、ほっぺ白い。座れ。

渚:ありがとう。

(音声:ボソ……「うしろ」)

渚:いま、また。

陽斗:録音に入ってない。

智哉:耳栓する?

渚:大丈夫……歩ける。

瑠依:既読5。


2025/09/20 23:06

智哉:山頂。風強い。

渚:やった!

陽斗:ラーメンタイム

瑠依:湯、沸かす。風よけ立てるわ。

渚:手、かじかんでうまく打てない。

智哉:火器まわり、慎重に。

システム:グループ通話が開始されました(参加者:5)

陽斗:え、5?

瑠依:だれw

智哉:電波拾ってアプリが……

(通話ログ:無言の呼吸音、風の音、時々マイクの擦れる音)

渚:いま、私の真後ろで息してる。

陽斗:風だって。

瑠依:通話落とす。→(通話終了)


2025/09/20 23:21

渚:顔、あったかい。火の前。

陽斗:スープ飲め。塩分。

智哉:30分で下る。ヘッデンチェック。

瑠依:渚、シューレース結びなおせ。

渚:ん。

陽斗:既読5。

智哉:寒さで脳が悪さしてる。言葉にするな。いいか?

渚:……うん。


2025/09/21 00:02

智哉:下降開始。ロープ場注意。

渚:了解。

陽斗:あ、靄。ライト弱くする。

瑠依:渚、手すり持って。

渚:持ってる。

(動画:渚の足元。ライトの円に靄が渦。画面外から白い袖がふっとかすめ、渚が振り向く)

渚:いま肩、触られた。

陽斗:俺ら前だぞ?

瑠依:後ろ誰もいない。

智哉:渚、立ち止まるな、足滑らす。歩幅狭く。


2025/09/21 00:19

渚:寒。

陽斗:もう少しで樹間抜ける。

瑠依:風、変わったな。

渚:耳が遠い。音が奥で鳴って……

智哉:渚、前見ろ。

渚:うん。

陽斗:位置共有、渚のピンが2つ?

瑠依:ほんとだ。1つは俺らと一緒、もう一つは数m後方。

智哉:キャッシュがおかしい。

渚:ねえ、私、いま何歩で歩いてる?

陽斗:どういうこと。

渚:足音が5つ聞こえる。

瑠依:気のせい。

智哉:渚、俺の声だけ追え。


2025/09/21 00:33

渚:白い服の人が、手招きしてる。

陽斗:見えてるの?

渚:木の間。顔が……ない?

瑠依:渚!こっち見ろ!

智哉:止まれ!

(音声:ザザッ、ザッ……ドン、乾いた音)


2025/09/21 00:34

陽斗:渚、返事しろ!

瑠依:ライト、照らせ!

智哉:渚、しゃがめ!

渚:だいじょうぶ。転んだだけ。

陽斗:位置、距離1m。

瑠依:手、冷たい。

渚:……あれ、指、曲がらない。

智哉:ヘッドライト目つぶしになる。角度変えろ。

陽斗:渚、チャットできてるなら喋れるはず。声出せ!

渚:でる。だいじょうぶ。

システム:「位置共有」から参加者が退出しました(1)

陽斗:誰が退出した。

瑠依:渚の後ろのピンが消えた。

智哉:担いで歩く。行くぞ。

渚:あるける。

陽斗:既読5。

瑠依:やめろって。

渚:もうひとり、いる。

智哉:言葉にするな。


2025/09/21 01:02

智哉:林道出た。救急に電話する。

陽斗:渚、寒さで眠くなるのが一番やばい。話続けろ。

渚:うん。

瑠依:渚、生きてる、あったかい。

渚:あったかい。

陽斗:救急?

智哉:繋がった。足首骨折の可能性。住所これ……

渚:白い服のひと、道の真ん中で止まってる。

陽斗:見間違い。

瑠依:誰もいない。

渚:でも、いる。

智哉:前だけ見ろ。

渚:既読5。

陽斗:既読の話やめろ。


2025/09/21 01:18

渚:息が白い。

瑠依:体温落ちてる。アルミシート巻け。

陽斗:救急、あと20分だって。

智哉:よし。渚、兄貴に連絡しとけ。

渚:わかった。→(個別メッセージ:兄)「いま山にいる。ちょっと怪我したけど平気。帰ったら電話する」

兄:すぐに場所教えて。

渚:位置共有のリンク送る。→ [位置共有の招待リンク(公開)]

兄:これ公開になってるぞ。気をつけろ。

渚:もう遅いかも。

兄:どういう意味だ。

渚:うしろにいるの。

兄:誰が。

渚:わからない。

兄:電話する。

渚:いまはだめ。声が出ると、そっちが、気づく。

兄:そっち?

渚:いま、目があった。

兄:どんな顔だ。

渚:ない。

兄:すぐ救急が行く。

渚:既読5。

兄:既読?誰がいる。

渚:わたしたち、よにん。もうひとり。

兄:四人なら既読4のはずだ。

渚:うん。


2025/09/21 01:29

システム:グループに写真が追加されました(投稿者:不明)

(画像:夜景を背にした5人分の影。中央の影だけ首の位置が少し高く、白い袖が両側に伸びている。顔の部分は黒く欠け、左右の3と4の影に重なっている)

陽斗:誰が上げた?

瑠依:俺じゃない。

智哉:渚?

渚:送ってない。

陽斗:ファイル名、IMG_0001.JPG。

瑠依:お前のスマホ、昨日からの連番いくつだっけ?

陽斗:6000台。

智哉:拾い物か。

渚:私、撮った覚えない。

陽斗:権限、外部アプリ?

智哉:後でいい。今は下る。

渚:写真の真ん中、少し浮いてる。

瑠依:見るな。


2025/09/21 01:41

智哉:林道ゲート。あと500mで車道。

陽斗:救急と合流点、ここのはず。

瑠依:渚、手、温める。

渚:ありがと。

システム:外部からグループ通話がリクエストされました(端末名:Unknown)

陽斗:拒否。

智哉:拒否。

瑠依:拒否。

渚:……(拒否)

システム:Unknownが再リクエスト(3/3)

陽斗:しつこい。

智哉:切れ。


2025/09/21 01:52

渚:足音が増えた。

陽斗:救急だ。

瑠依:ライト、2つ見える。

智哉:旗振れ。ここだ!

渚:白い服のひとが、救急の間に入ってくる。

陽斗:渚、アルミ外すな。

瑠依:しっかり。

渚:既読5。

智哉:もういい、その話は。

(音声:サイレン、無線の声)


2025/09/21 02:03

渚:救急隊の人、二人。

陽斗:よろしくお願いします。

救急隊員A:搬送前に問診します。受傷機転は?

智哉:転倒です。

救急隊員B:バイタル計ります。

渚:白い服のひと、救急の背中に手を置いてる。

陽斗:見えてない。

瑠依:渚、目を閉じろ。

救急隊員A:寒いでしょう。これ掛けますね。

渚:温かい。

救急隊員B:SpO2すこし低め。

渚:白いひと、救急の人の肩に顔を近づけてる。

智哉:渚、息整えろ。

救急隊員A:では、担架に——

渚:白いひと、私の上に、乗って——

(音声:ザザッ)


—— ここで、グループへの投稿は止まっている ——

(以降、個別メッセージの断片)


2025/09/21 02:17(個別:智哉→兄)

智哉:搬送中。〇〇総合に向かってる。

兄:さっき渚から位置リンク来たけど、公開になってる。誰でも入れるだろ。

智哉:渚は意識が……すみません、あとで。


2025/09/21 02:18(個別:陽斗→兄)

陽斗:救急には俺ら2人でついて行った。もう1人は車回してる。

兄:救急、二人って言ってたな。

陽斗:はい。

兄:じゃあ、さっきの写真の「5人目」は誰だ。

陽斗:余計な話はやめましょう。


2025/09/21 02:22(個別:瑠依→兄)

瑠依:すみません。スマホの「既読」の数、バグだと思ってました。でも、トンネルを抜けたとき、足音が——

兄:トンネル? そんなルート、地図にないが。

瑠依:木橋の先に、小さい。標識がなかった。

兄:そこ、どこだ。

瑠依:分かりません。

兄:救急の人、名札は?

瑠依:見てません。

兄:車両番号は?

瑠依:……記憶が抜けてる。

兄:救急の背中に何か白いものが覆いかぶさっていた、と渚が言っていた。

瑠依:……はい。


2025/09/21 02:31(個別:兄→渚)

兄:病院に着いたら電話しろ。

システム:メッセージ送信に失敗しました(受信者は現在オフライン)


2025/09/21 03:05(グループ)

智哉:病院についた。

陽斗:今、搬入。

瑠依:待機。

智哉:既読5。

陽斗:……

瑠依:……

兄(追加):グループに入れてもらった。状況教えてくれ。

智哉:すみません。医師の説明待ち。

陽斗:自販機行ってくる。

瑠依:俺、受付聞いてくる。

兄:救急、二人だったと言ったな。隊員の名札は?

智哉:見てない。

兄:搬送票は?

陽斗:……手元にない。

兄:おかしいだろ。

瑠依:兄さん、言いづらいですが、救急車、病院の正面玄関に入っていない気がする。

兄:どういうことだ。

瑠依:裏手に回った。建屋の影に消えて、気づいたら渚がいなかった。

兄:警備呼べ。

智哉:はい。


2025/09/21 03:27

システム:グループ通話が開始されました(参加者:5)

兄:5? 誰だ。

(通話ログ:無言。薄い呼吸音が4つ。もう1つは、呼気の形をしていない音)

兄:渚?

(応答なし)

兄:救急の隊員か。お前たち、どこの所属だ。

(応答なし)

(音:カサ……衣擦れ。遠くで自動ドアの開く音)

兄:おい。

(通話終了)


2025/09/21 04:02

陽斗:警備と警察に話した。救急車の搬入記録なし。

智哉:監視カメラ、裏口は故障中。

瑠依:受付、搬送の問い合わせもなし。

兄:つまり、救急車は来ていない。

智哉:でも渚は——

兄:彼女は、自分で歩けると言ったな。

陽斗:言った。

兄:なら、担架は使っていない。

瑠依:はい。

兄:それなら、あの白い何かは、何を「運んで」いた?

(既読:5)


2025/09/21 04:15

渚(このメッセージは送信に失敗しました)

システム:メッセージ送信に失敗しました(受信者は現在オフライン)


2025/09/21 06:20

兄:警察と山岳救助に連絡した。位置共有ログを提出する。

智哉:お願いします。

陽斗:俺らも同行する。

瑠依:俺、吐きそう。

兄:落ち着け。

システム:「位置共有」に新しい参加者が参加しました(1)

陽斗:今度は誰だ。

兄:……渚のピンが増えた。

瑠依:二つ目の渚……座標が、昨夜の林道脇。

智哉:なんで今——

兄:ログの再送かもしれん。

陽斗:でもアイコン、今さっきの時間になってる。

瑠依:移動速度0。

兄:現場に向かう。


2025/09/21 07:52

兄:現場着。林道脇。霧。

智哉:そこだ。

陽斗:俺らが休憩した丸太。

瑠依:渚を座らせた場所。

兄:何か白い布が引っかかってる。

(画像:白い袖。袖口が裂け、糸が霜で硬くなっている。地面に引きずった跡)

智哉:救急の制服?

兄:違う。これは——

(画像:白無地のワイシャツの袖。女性用。袖口のボタンが欠けている)

陽斗:渚、あの夜、白いインナーなんて持ってなかった。

瑠依:俺も白、着てない。

兄:救助隊到着。警察と一緒に範囲広げる。


2025/09/21 09:05

警察:位置共有ログ、確認しました。参加者数の一致が取れません。

兄:どういう意味ですか。

警察:時刻21:11、既読5。21:44、既読5。23:06の通話、参加者5。01:29、未知の投稿者から画像。

智哉:アプリのバグです。

警察:バグが、救急車の搬入記録まで消すことはありません。

陽斗:じゃあ、何がいたんだよ。

警察:……あなた方に聞いています。


2025/09/21 09:22

兄:さっきの写真(5人の影)、拡大して見た。

瑠依:どうでした。

兄:真ん中の影だけ、足が地面と接していない。

智哉:だから浮いてたって渚が。

兄:それだけじゃない。肩から伸びる白い袖の長さが左右で違う。片方が妙に長い。

陽斗:サイズの合ってない服?

兄:いや、手首の位置が肘より上にある。

瑠依:関節が逆ってことですか?

兄:写真のシャッター情報、EXIFで見た。撮影者は「渚」の端末になってる。

智哉:渚が撮ったのか?

兄:シャッター時刻01:28。お前たちが「白い何か」が渚に乗った、と言った直前だ。

陽斗:じゃあ撮ってたのは……

兄:渚の「手」じゃない。


2025/09/21 10:10

システム:「位置共有」に新しい参加者が参加しました(1)

陽斗:まただ。

瑠依:今度はピンが3つ。

智哉:渚が2つ、Unknownが1つ。

兄:Unknownの座標、病院の裏手。

陽斗:……

瑠依:病院に……戻ってる?

兄:救助終わったら、病院も当たる。


2025/09/21 13:32

兄:捜索一時中断。足跡が川で途切れている。

智哉:すみません。

陽斗:本当にすみません。

瑠依:渚は俺らのせいじゃ……

兄:いいか、ここからは俺の推測だ。

智哉:……

兄:お前たちは「公開」の招待リンクを貼った。そこから「何か」が入り、既読が1つ増えた。

陽斗:リンクは人間用だろ。

兄:その「何か」は、人のふりをする必要はない。読むだけで十分だ。

瑠依:読む?

兄:このグループは、渚の「目」と「耳」だった。位置も、息も、温度も、言葉も。

智哉:既読が増えるたび、渚は「後ろ」を気にした。

兄:そのたびに、そいつは「渚を見た」。

陽斗:……

瑠依:じゃあ、救急は。

兄:救急の「形」を、真似たんだろう。白い袖で。

智哉:そんな馬鹿な。

兄:馬鹿な話で済めばいい。ただ——渚は最後に「既読5」と言った。

陽斗:俺たちは4人。

兄:俺が入って5。

瑠依:じゃあ、ちょうど合ってるじゃないか。

兄:違う。俺がグループに入ったのは03:05だ。渚が最後に「既読5」と言ったのは01:18。

智哉:……

陽斗:そのとき既読5だったなら、誰かがもう入ってたってことだ。

兄:お前たちは気づかないで迎え入れた。「読む」だけの参加者を。

瑠依:俺たち、最初から5人で歩いてたのか。

兄:たぶん。


2025/09/22 00:02

兄:警察から連絡。病院の裏口、昨夜の監視カメラ、故障してると言われたが——

陽斗:が?

兄:電源が抜かれていた。人の手の届かない高さで。

智哉:脚立でも使わないと。

兄:脚立は置いていない。

瑠依:じゃあ、誰が。

兄:知らない。だが、白い袖の長さなら届きそうだと思った。


2025/09/23 11:11

システム:「位置共有」から参加者が退出しました(1)

陽斗:Unknownが消えた。

瑠依:渚のピンは2つのまま。

智哉:1つは山。1つは病院の裏。

兄:どちらも、静止。

陽斗:渚は、どこにいる。

兄:知らない。でも、知らないふりをしないために、ここに残す。

瑠依:何を。

兄:最初の「ミス」。

智哉:公開リンク?

兄:それもそうだが、ちがう。「既読の数」を冗談にしたことだ。

陽斗:……

瑠依:あの時、俺が「やめろ」って言ったのに。

兄:あの瞬間、お前たちは「もう1人」を「読む人」としてだけ扱った。名前がないから。呼べないから。だから、そいつはずっと読むだけで、形は最後にしか示さなかった。

智哉:呼んでいたら、違った?

兄:知らない。でも、名前がないものは、呼ばれないまま「いる」。

陽斗:5の既読が、今も消えない。

兄:グループ、閉じるか。

瑠依:閉じよう。

智哉:……でも、渚が戻った時のために残しておきたい。

兄:分かった。閉じない。ただ、公開リンクは——

システム:公開リンクが再生成されました

兄:誰がやった。

智哉:俺じゃない。

陽斗:俺じゃない。

瑠依:……

兄:やめろ。

システム:「位置共有」に新しい参加者が参加しました(1)


ここでエクスポートは終了しています。


追記(提出者メモ)


9/20 19時台のバス移動時から「既読5」の表示が始まっているが、4人以外にグループ参加者はおらず、メンバー追加の通知もない。


「位置共有」アプリのログには、20:01に「新しい参加者が参加しました(1)」とある。参加者名は空欄。


01:29の写真(5人の影)は、渚の端末による撮影。渚の両手はその時点で手袋をしており、チャット入力の速度が急に落ちている。片手を怪我していた可能性はあるが、手袋表面についた泥の付着角度が、地面側ではなく空側に向かって伸びている(落下ではなく、上から擦られている)。


搬送と称した救急車は病院内に記録なし。裏口の監視カメラは電源プラグが物理的に抜かれていたが、床面から2.7mの高さ。


兄である私は03:05にグループ参加。渚が最後に「既読5」と言ったのは01:18で、時間的に矛盾がある。


以上は、警察の捜査の妨げにならない範囲で記す。


——もしあなたがこのテキストを読んでいるなら、最後の行の「新しい参加者(1)」は、あなたのことではないかと、念のため確認してください。

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