既読の数.txt(提出用出力)
このテキストは、行方不明者届に添付したチャットのエクスポートです。改行やタイムスタンプは当時のまま。個人情報に関わる部分は伏せ字にしています。——提出者:□□□(渚の兄)
【グループ名】裏高尾ナイト
【参加者】
・智哉
・渚
・陽斗
・瑠依
(※当初、参加者は上記4名のみ。グループ作成者:智哉)
2025/09/20 17:01
智哉:みんな、18:30にJR〇〇駅西口集合ね。ライトと熊鈴、雨具、各自。
渚:了解ー!夜の山、初めてでちょい緊張。
陽斗:GPSアプリ入れとけよ。リンク貼るわ→ [位置共有の招待リンク]
瑠依:しれっと熊出すのやめてくれ……
2025/09/20 18:12
渚:電車遅れてる。18:35着。
智哉:OK。駅でおにぎり買っといてくれ。
陽斗:トイレ済ませろよー。山ん中で灯りつけたら虫地獄だぞ。
瑠依:既読3。渚まだ車内かーい。
2025/09/20 18:28
システム:「位置共有」の招待リンクが再生成されました
智哉:あれ、期限切れてた。再送→ [位置共有の招待リンク(公開)]
陽斗:おいおい、公開にすんなってw
智哉:駅前Wi-Fiでやったらそうなった。大丈夫でしょ、人混みだし。
瑠依:まあ、すぐクローズしなよ。
2025/09/20 18:37
渚:着いた!西口の像の前。
智哉:見えた。白パーカー?
渚:うん。
陽斗:集合写真撮るかー。
瑠依:のちほどな。まずバス乗るぞ、19:05発。
2025/09/20 19:11
渚:バス揺れる〜
智哉:20:00には登山口。予定どおり。
陽斗:気温21度。風吹いてる。
瑠依:既読5になってるけどバグ?
渚:え、4人しかいないのに?
智哉:電波悪いと表示おかしいよ。気にすんな。
陽斗:スクショしたわ。既読5。こわ。
(画像:画面キャプチャ/「既読:5」)
2025/09/20 20:01
智哉:登山口着。ストレッチしてから行く。
陽斗:位置共有オンにしとけ。
渚:オン!
瑠依:オン。
システム:「位置共有」に新しい参加者が参加しました(1)
渚:え。
陽斗:なんだよこれ。
智哉:アプリだろ。たまにある。歩くぞー。
2025/09/20 20:26
渚:星出てる!きれい!
瑠依:写真頼む。
渚:はい。→(画像:山道、先頭のライトが4つ、遠くに薄い光)
陽斗:おい、奥にもライトなかった?
智哉:車道の反射じゃね?
渚:先頭だれ?
瑠依:智哉。
陽斗:じゃあ後ろの点は何。
智哉:たぶん俺の首振りの残像。スマホカメ弱い。
2025/09/20 20:41
渚:分岐ついた。標識に「○○尾根」。
陽斗:左が近道、右が緩いけど安全。
瑠依:夜だし右で。
智哉:OK、右。
渚:既読5……まただ。
陽斗:もうやめてw 俺、鈴鳴らしとく。
(音声メッセージ:チリン、チリン……)
2025/09/20 21:03
智哉:休憩。水分とれ。
渚:はーい。
瑠依:渚、水筒軽い音してるけど中入ってる?
渚:あ、少ししか。自販機で買ってくればよかった。
智哉:分けるから節約で。
陽斗:お、位置共有マップにピン増えた。
渚:5つ目のピン……名前なし。
瑠依:距離3mって出てる。
陽斗:誰?
智哉:アプリ落として再起動。行くぞ。
2025/09/20 21:18
渚:足音、後ろから一個多くない?
陽斗:気のせいだよ。
瑠依:風の音。
智哉:列崩すな。間隔2m。
渚:うん……
(音声:ザッ、ザッ、ザッ、……ザッ)
2025/09/20 21:44
陽斗:トイレ行きたい。
智哉:小ならそこらで。ライト消すなよ。
渚:はる、ライト!
陽斗:つけてる。
瑠依:既読5。
智哉:はいはい。
渚:ねえ、誰か「うしろ、うしろ」って言った?
陽斗:言ってない。
瑠依:言ってない。
智哉:渚、疲れて幻聴。水飲め。
2025/09/20 22:07
渚:急に電波入った。通知いっぱい来た。
陽斗:山頂近いとこだからな。
瑠依:夜景えぐ。
渚:写真撮る!→(画像:夜景と4つのヘッドランプの光、画面端に白い袖がのぞく)
陽斗:渚、右端の白なに。
渚:え、私の袖?
智哉:渚は黒。
瑠依:寒いから俺も黒ジャケ。
陽斗:白い袖の人……?
智哉:夜露で反射。はい、歩く。
2025/09/20 22:26
システム:「位置共有」から参加者が退出しました(1)
渚:え。
陽斗:だれが入っててだれが出たの。
瑠依:名前なしのピン、消えた。
智哉:気にしすぎると危ない。手元見ろ。
2025/09/20 22:48
渚:ごめん、立ちくらみ。
智哉:5分休憩。
陽斗:行動食食え。
瑠依:渚、ほっぺ白い。座れ。
渚:ありがとう。
(音声:ボソ……「うしろ」)
渚:いま、また。
陽斗:録音に入ってない。
智哉:耳栓する?
渚:大丈夫……歩ける。
瑠依:既読5。
2025/09/20 23:06
智哉:山頂。風強い。
渚:やった!
陽斗:ラーメンタイム
瑠依:湯、沸かす。風よけ立てるわ。
渚:手、かじかんでうまく打てない。
智哉:火器まわり、慎重に。
システム:グループ通話が開始されました(参加者:5)
陽斗:え、5?
瑠依:だれw
智哉:電波拾ってアプリが……
(通話ログ:無言の呼吸音、風の音、時々マイクの擦れる音)
渚:いま、私の真後ろで息してる。
陽斗:風だって。
瑠依:通話落とす。→(通話終了)
2025/09/20 23:21
渚:顔、あったかい。火の前。
陽斗:スープ飲め。塩分。
智哉:30分で下る。ヘッデンチェック。
瑠依:渚、シューレース結びなおせ。
渚:ん。
陽斗:既読5。
智哉:寒さで脳が悪さしてる。言葉にするな。いいか?
渚:……うん。
2025/09/21 00:02
智哉:下降開始。ロープ場注意。
渚:了解。
陽斗:あ、靄。ライト弱くする。
瑠依:渚、手すり持って。
渚:持ってる。
(動画:渚の足元。ライトの円に靄が渦。画面外から白い袖がふっとかすめ、渚が振り向く)
渚:いま肩、触られた。
陽斗:俺ら前だぞ?
瑠依:後ろ誰もいない。
智哉:渚、立ち止まるな、足滑らす。歩幅狭く。
2025/09/21 00:19
渚:寒。
陽斗:もう少しで樹間抜ける。
瑠依:風、変わったな。
渚:耳が遠い。音が奥で鳴って……
智哉:渚、前見ろ。
渚:うん。
陽斗:位置共有、渚のピンが2つ?
瑠依:ほんとだ。1つは俺らと一緒、もう一つは数m後方。
智哉:キャッシュがおかしい。
渚:ねえ、私、いま何歩で歩いてる?
陽斗:どういうこと。
渚:足音が5つ聞こえる。
瑠依:気のせい。
智哉:渚、俺の声だけ追え。
2025/09/21 00:33
渚:白い服の人が、手招きしてる。
陽斗:見えてるの?
渚:木の間。顔が……ない?
瑠依:渚!こっち見ろ!
智哉:止まれ!
(音声:ザザッ、ザッ……ドン、乾いた音)
2025/09/21 00:34
陽斗:渚、返事しろ!
瑠依:ライト、照らせ!
智哉:渚、しゃがめ!
渚:だいじょうぶ。転んだだけ。
陽斗:位置、距離1m。
瑠依:手、冷たい。
渚:……あれ、指、曲がらない。
智哉:ヘッドライト目つぶしになる。角度変えろ。
陽斗:渚、チャットできてるなら喋れるはず。声出せ!
渚:でる。だいじょうぶ。
システム:「位置共有」から参加者が退出しました(1)
陽斗:誰が退出した。
瑠依:渚の後ろのピンが消えた。
智哉:担いで歩く。行くぞ。
渚:あるける。
陽斗:既読5。
瑠依:やめろって。
渚:もうひとり、いる。
智哉:言葉にするな。
2025/09/21 01:02
智哉:林道出た。救急に電話する。
陽斗:渚、寒さで眠くなるのが一番やばい。話続けろ。
渚:うん。
瑠依:渚、生きてる、あったかい。
渚:あったかい。
陽斗:救急?
智哉:繋がった。足首骨折の可能性。住所これ……
渚:白い服のひと、道の真ん中で止まってる。
陽斗:見間違い。
瑠依:誰もいない。
渚:でも、いる。
智哉:前だけ見ろ。
渚:既読5。
陽斗:既読の話やめろ。
2025/09/21 01:18
渚:息が白い。
瑠依:体温落ちてる。アルミシート巻け。
陽斗:救急、あと20分だって。
智哉:よし。渚、兄貴に連絡しとけ。
渚:わかった。→(個別メッセージ:兄)「いま山にいる。ちょっと怪我したけど平気。帰ったら電話する」
兄:すぐに場所教えて。
渚:位置共有のリンク送る。→ [位置共有の招待リンク(公開)]
兄:これ公開になってるぞ。気をつけろ。
渚:もう遅いかも。
兄:どういう意味だ。
渚:うしろにいるの。
兄:誰が。
渚:わからない。
兄:電話する。
渚:いまはだめ。声が出ると、そっちが、気づく。
兄:そっち?
渚:いま、目があった。
兄:どんな顔だ。
渚:ない。
兄:すぐ救急が行く。
渚:既読5。
兄:既読?誰がいる。
渚:わたしたち、よにん。もうひとり。
兄:四人なら既読4のはずだ。
渚:うん。
2025/09/21 01:29
システム:グループに写真が追加されました(投稿者:不明)
(画像:夜景を背にした5人分の影。中央の影だけ首の位置が少し高く、白い袖が両側に伸びている。顔の部分は黒く欠け、左右の3と4の影に重なっている)
陽斗:誰が上げた?
瑠依:俺じゃない。
智哉:渚?
渚:送ってない。
陽斗:ファイル名、IMG_0001.JPG。
瑠依:お前のスマホ、昨日からの連番いくつだっけ?
陽斗:6000台。
智哉:拾い物か。
渚:私、撮った覚えない。
陽斗:権限、外部アプリ?
智哉:後でいい。今は下る。
渚:写真の真ん中、少し浮いてる。
瑠依:見るな。
2025/09/21 01:41
智哉:林道ゲート。あと500mで車道。
陽斗:救急と合流点、ここのはず。
瑠依:渚、手、温める。
渚:ありがと。
システム:外部からグループ通話がリクエストされました(端末名:Unknown)
陽斗:拒否。
智哉:拒否。
瑠依:拒否。
渚:……(拒否)
システム:Unknownが再リクエスト(3/3)
陽斗:しつこい。
智哉:切れ。
2025/09/21 01:52
渚:足音が増えた。
陽斗:救急だ。
瑠依:ライト、2つ見える。
智哉:旗振れ。ここだ!
渚:白い服のひとが、救急の間に入ってくる。
陽斗:渚、アルミ外すな。
瑠依:しっかり。
渚:既読5。
智哉:もういい、その話は。
(音声:サイレン、無線の声)
2025/09/21 02:03
渚:救急隊の人、二人。
陽斗:よろしくお願いします。
救急隊員A:搬送前に問診します。受傷機転は?
智哉:転倒です。
救急隊員B:バイタル計ります。
渚:白い服のひと、救急の背中に手を置いてる。
陽斗:見えてない。
瑠依:渚、目を閉じろ。
救急隊員A:寒いでしょう。これ掛けますね。
渚:温かい。
救急隊員B:SpO2すこし低め。
渚:白いひと、救急の人の肩に顔を近づけてる。
智哉:渚、息整えろ。
救急隊員A:では、担架に——
渚:白いひと、私の上に、乗って——
(音声:ザザッ)
—— ここで、グループへの投稿は止まっている ——
(以降、個別メッセージの断片)
2025/09/21 02:17(個別:智哉→兄)
智哉:搬送中。〇〇総合に向かってる。
兄:さっき渚から位置リンク来たけど、公開になってる。誰でも入れるだろ。
智哉:渚は意識が……すみません、あとで。
2025/09/21 02:18(個別:陽斗→兄)
陽斗:救急には俺ら2人でついて行った。もう1人は車回してる。
兄:救急、二人って言ってたな。
陽斗:はい。
兄:じゃあ、さっきの写真の「5人目」は誰だ。
陽斗:余計な話はやめましょう。
2025/09/21 02:22(個別:瑠依→兄)
瑠依:すみません。スマホの「既読」の数、バグだと思ってました。でも、トンネルを抜けたとき、足音が——
兄:トンネル? そんなルート、地図にないが。
瑠依:木橋の先に、小さい。標識がなかった。
兄:そこ、どこだ。
瑠依:分かりません。
兄:救急の人、名札は?
瑠依:見てません。
兄:車両番号は?
瑠依:……記憶が抜けてる。
兄:救急の背中に何か白いものが覆いかぶさっていた、と渚が言っていた。
瑠依:……はい。
2025/09/21 02:31(個別:兄→渚)
兄:病院に着いたら電話しろ。
システム:メッセージ送信に失敗しました(受信者は現在オフライン)
2025/09/21 03:05(グループ)
智哉:病院についた。
陽斗:今、搬入。
瑠依:待機。
智哉:既読5。
陽斗:……
瑠依:……
兄(追加):グループに入れてもらった。状況教えてくれ。
智哉:すみません。医師の説明待ち。
陽斗:自販機行ってくる。
瑠依:俺、受付聞いてくる。
兄:救急、二人だったと言ったな。隊員の名札は?
智哉:見てない。
兄:搬送票は?
陽斗:……手元にない。
兄:おかしいだろ。
瑠依:兄さん、言いづらいですが、救急車、病院の正面玄関に入っていない気がする。
兄:どういうことだ。
瑠依:裏手に回った。建屋の影に消えて、気づいたら渚がいなかった。
兄:警備呼べ。
智哉:はい。
2025/09/21 03:27
システム:グループ通話が開始されました(参加者:5)
兄:5? 誰だ。
(通話ログ:無言。薄い呼吸音が4つ。もう1つは、呼気の形をしていない音)
兄:渚?
(応答なし)
兄:救急の隊員か。お前たち、どこの所属だ。
(応答なし)
(音:カサ……衣擦れ。遠くで自動ドアの開く音)
兄:おい。
(通話終了)
2025/09/21 04:02
陽斗:警備と警察に話した。救急車の搬入記録なし。
智哉:監視カメラ、裏口は故障中。
瑠依:受付、搬送の問い合わせもなし。
兄:つまり、救急車は来ていない。
智哉:でも渚は——
兄:彼女は、自分で歩けると言ったな。
陽斗:言った。
兄:なら、担架は使っていない。
瑠依:はい。
兄:それなら、あの白い何かは、何を「運んで」いた?
(既読:5)
2025/09/21 04:15
渚(このメッセージは送信に失敗しました)
システム:メッセージ送信に失敗しました(受信者は現在オフライン)
2025/09/21 06:20
兄:警察と山岳救助に連絡した。位置共有ログを提出する。
智哉:お願いします。
陽斗:俺らも同行する。
瑠依:俺、吐きそう。
兄:落ち着け。
システム:「位置共有」に新しい参加者が参加しました(1)
陽斗:今度は誰だ。
兄:……渚のピンが増えた。
瑠依:二つ目の渚……座標が、昨夜の林道脇。
智哉:なんで今——
兄:ログの再送かもしれん。
陽斗:でもアイコン、今さっきの時間になってる。
瑠依:移動速度0。
兄:現場に向かう。
2025/09/21 07:52
兄:現場着。林道脇。霧。
智哉:そこだ。
陽斗:俺らが休憩した丸太。
瑠依:渚を座らせた場所。
兄:何か白い布が引っかかってる。
(画像:白い袖。袖口が裂け、糸が霜で硬くなっている。地面に引きずった跡)
智哉:救急の制服?
兄:違う。これは——
(画像:白無地のワイシャツの袖。女性用。袖口のボタンが欠けている)
陽斗:渚、あの夜、白いインナーなんて持ってなかった。
瑠依:俺も白、着てない。
兄:救助隊到着。警察と一緒に範囲広げる。
2025/09/21 09:05
警察:位置共有ログ、確認しました。参加者数の一致が取れません。
兄:どういう意味ですか。
警察:時刻21:11、既読5。21:44、既読5。23:06の通話、参加者5。01:29、未知の投稿者から画像。
智哉:アプリのバグです。
警察:バグが、救急車の搬入記録まで消すことはありません。
陽斗:じゃあ、何がいたんだよ。
警察:……あなた方に聞いています。
2025/09/21 09:22
兄:さっきの写真(5人の影)、拡大して見た。
瑠依:どうでした。
兄:真ん中の影だけ、足が地面と接していない。
智哉:だから浮いてたって渚が。
兄:それだけじゃない。肩から伸びる白い袖の長さが左右で違う。片方が妙に長い。
陽斗:サイズの合ってない服?
兄:いや、手首の位置が肘より上にある。
瑠依:関節が逆ってことですか?
兄:写真のシャッター情報、EXIFで見た。撮影者は「渚」の端末になってる。
智哉:渚が撮ったのか?
兄:シャッター時刻01:28。お前たちが「白い何か」が渚に乗った、と言った直前だ。
陽斗:じゃあ撮ってたのは……
兄:渚の「手」じゃない。
2025/09/21 10:10
システム:「位置共有」に新しい参加者が参加しました(1)
陽斗:まただ。
瑠依:今度はピンが3つ。
智哉:渚が2つ、Unknownが1つ。
兄:Unknownの座標、病院の裏手。
陽斗:……
瑠依:病院に……戻ってる?
兄:救助終わったら、病院も当たる。
2025/09/21 13:32
兄:捜索一時中断。足跡が川で途切れている。
智哉:すみません。
陽斗:本当にすみません。
瑠依:渚は俺らのせいじゃ……
兄:いいか、ここからは俺の推測だ。
智哉:……
兄:お前たちは「公開」の招待リンクを貼った。そこから「何か」が入り、既読が1つ増えた。
陽斗:リンクは人間用だろ。
兄:その「何か」は、人のふりをする必要はない。読むだけで十分だ。
瑠依:読む?
兄:このグループは、渚の「目」と「耳」だった。位置も、息も、温度も、言葉も。
智哉:既読が増えるたび、渚は「後ろ」を気にした。
兄:そのたびに、そいつは「渚を見た」。
陽斗:……
瑠依:じゃあ、救急は。
兄:救急の「形」を、真似たんだろう。白い袖で。
智哉:そんな馬鹿な。
兄:馬鹿な話で済めばいい。ただ——渚は最後に「既読5」と言った。
陽斗:俺たちは4人。
兄:俺が入って5。
瑠依:じゃあ、ちょうど合ってるじゃないか。
兄:違う。俺がグループに入ったのは03:05だ。渚が最後に「既読5」と言ったのは01:18。
智哉:……
陽斗:そのとき既読5だったなら、誰かがもう入ってたってことだ。
兄:お前たちは気づかないで迎え入れた。「読む」だけの参加者を。
瑠依:俺たち、最初から5人で歩いてたのか。
兄:たぶん。
2025/09/22 00:02
兄:警察から連絡。病院の裏口、昨夜の監視カメラ、故障してると言われたが——
陽斗:が?
兄:電源が抜かれていた。人の手の届かない高さで。
智哉:脚立でも使わないと。
兄:脚立は置いていない。
瑠依:じゃあ、誰が。
兄:知らない。だが、白い袖の長さなら届きそうだと思った。
2025/09/23 11:11
システム:「位置共有」から参加者が退出しました(1)
陽斗:Unknownが消えた。
瑠依:渚のピンは2つのまま。
智哉:1つは山。1つは病院の裏。
兄:どちらも、静止。
陽斗:渚は、どこにいる。
兄:知らない。でも、知らないふりをしないために、ここに残す。
瑠依:何を。
兄:最初の「ミス」。
智哉:公開リンク?
兄:それもそうだが、ちがう。「既読の数」を冗談にしたことだ。
陽斗:……
瑠依:あの時、俺が「やめろ」って言ったのに。
兄:あの瞬間、お前たちは「もう1人」を「読む人」としてだけ扱った。名前がないから。呼べないから。だから、そいつはずっと読むだけで、形は最後にしか示さなかった。
智哉:呼んでいたら、違った?
兄:知らない。でも、名前がないものは、呼ばれないまま「いる」。
陽斗:5の既読が、今も消えない。
兄:グループ、閉じるか。
瑠依:閉じよう。
智哉:……でも、渚が戻った時のために残しておきたい。
兄:分かった。閉じない。ただ、公開リンクは——
システム:公開リンクが再生成されました
兄:誰がやった。
智哉:俺じゃない。
陽斗:俺じゃない。
瑠依:……
兄:やめろ。
システム:「位置共有」に新しい参加者が参加しました(1)
ここでエクスポートは終了しています。
追記(提出者メモ)
9/20 19時台のバス移動時から「既読5」の表示が始まっているが、4人以外にグループ参加者はおらず、メンバー追加の通知もない。
「位置共有」アプリのログには、20:01に「新しい参加者が参加しました(1)」とある。参加者名は空欄。
01:29の写真(5人の影)は、渚の端末による撮影。渚の両手はその時点で手袋をしており、チャット入力の速度が急に落ちている。片手を怪我していた可能性はあるが、手袋表面についた泥の付着角度が、地面側ではなく空側に向かって伸びている(落下ではなく、上から擦られている)。
搬送と称した救急車は病院内に記録なし。裏口の監視カメラは電源プラグが物理的に抜かれていたが、床面から2.7mの高さ。
兄である私は03:05にグループ参加。渚が最後に「既読5」と言ったのは01:18で、時間的に矛盾がある。
以上は、警察の捜査の妨げにならない範囲で記す。
——もしあなたがこのテキストを読んでいるなら、最後の行の「新しい参加者(1)」は、あなたのことではないかと、念のため確認してください。




