終わりの始まり
アルマからのお願い…
作者の好きなアニメや漫画のオマージュが結構あるので、苦手な方又は許せない方は閲覧しないことをおすすめします!
また、元々は漫画作品として作成していた創作です。曖昧な箇所が多くあると思いますがお許しください。
趣味で緩く書いたものです。軽い気持ちでご覧になってくれれば幸いです!
一応グロ要素があります。そこまでないと思いますが想像して気持ち悪くなってしまう方はご注意ください。
それでは本編へどーぞっ!!
人類は、いつ起きてもおかしくない戦争といつ現れてもおかしくない魔物の恐怖に怯えながら過ごしていた。そんな中、エケネイスにある小さな村『デノアタウン』で何かが起きていた。
それはまさに地獄絵図だった。数時間前まで笑顔で過ごしていたデノアタウンの住民たちは皆、見るも無残な形で横たわっていた。首が跳ねられた者もいれば身体が真っ二つの者、臓器が散らばっている者や本来曲がるはずのない方向に曲げられている者など、ありとあらゆる方法で殺されていた。
「目的の子がいなさそうなんだけど、本当にここで合ってる?」
黒髪長髪の人間が同僚らしき人物に問いかける。その同僚はコクッと頷き、辺りを捜索する。
「まあいっか、別の目的には一歩近づいた訳だし。もうちょっとだけ探してみる?」
ふたりの人間が村を捜索している時、ひとりの少年が必死に森の中を走っていた。恐怖、怒り、悲しみ。この少年は喜び以外の感情全てを持ちながら、何も考えられずただただ走って村から離れていた。頭に流れてくる姉たちの声。
「アルマ、あんたはこっちから逃げなさい。私とノウスは違う方向から出てくから、早く!」
「大丈夫アルマ。また生きて会おうね」
玄関で母親が殺され、姉たちに連れられるがまま窓から家を脱出した少年は、姉ふたりの無事を祈る以外考えることが出来なかった。と言うよりも、無事な姿以外を考えたくなかった。
「クウロ…ノウス…生きててくれよ…頼むから」
止まりたくても止まれない。無我夢中に故郷から離れる少年の目には涙を流す余裕すら無かった。
「!!」
長髪の人間は身体の芯から感じ取った。明らかに力を持った人物が近くにいる、と。
「予定変更。早くここから撤退するよ、もうそろそろ面倒な奴らが来るかもしれない」
相方の人間も頷き、ふたりはあっという間にデノアタウンを離れた。その数分後、軍服を着た大勢の人間が現実世界の地獄と化したデノアタウンに足を踏み入れた。
「こりゃひでえな」
「これも魔物の仕業でしょうか…?」
「…魔物がここまで残酷なことをやるんだろうか?」
疑問が生まれながらも彼らは本部へデノアタウンの現状を報告し、遺体の埋葬や消火など村の後処理を済ませた。
暁七つ、デノアタウンの文明は滅んだ。
日が昇った直後だった。屋内から出てきた屈強な男ジェイはいつものルーティンとして訓練城に向かいトレーニングをしようとしていた。鍵を閉めいざ出発しようとした瞬間、彼の目に足が血まみれの少年が目に入った。ジェイはすかさず少年の元へ近づき、家の中へ上げた。
「おいお前、大丈夫か」
少年は安心したのか、目から水が沢山溢れ出した。まともに会話が出来ないと感じたジェイは同僚に電話を入れ、遅れることを伝える。
「すまんダイヤ、今日は少し遅れることになりそうだ」
「珍しいな。わかった、体調が悪いならゆっくりしてても大丈夫だぞ」
そうは言ったものの、この少年をどうしたらいいか分からないジェイは専用サイトにアクセスし、少年について調べ始めた。
「少年、名前はなんて言うんだ」
「…アルマ」
「ア、ル、マ…と」
ジェイはアルマのページに飛ぶと何かを悟ったように顔色を変えた。アルマを二度見した後画面を凝視し、ついに決意した。
「アルマ、お前身寄りがいないだろう。もし良ければなんだが、ここで暮らしていいぞ」
アルマはうんと頷き、早速ジェイに浴室へと連れていかれた。
「デノアタウン出身なんだってな。昨日の襲撃からよく逃げてこれたな」
「俺の他にも姉ちゃんふたりが逃げてるはずなんだ。探せない?えーっと…」
「ああ俺の名前か、ジェイだ」
「ジェイさん!俺の姉ちゃんたちも探して一緒に暮らせないかな…?」
ジェイは知っていた。あの専用サイトでデノアタウンの住民たちはアルマを除いて全員が亡くなったと表記されていたことを。だがそんな現実を11歳ほどの子供に伝えるのは酷だと思ったのか、ジェイは嘘をついた。
「もしかしたらどこかに逃げているかもな。ただ、探し切るのは難しい」
「そっか…」
アルマの曇った顔を見て少し罪悪感を覚えるも、それを紛らわすかのようにジェイはアルマにひとつの提案をした。
「なら、お前も真衛隊にならないか」
「真衛隊…?」
「ああ、それで一緒にお前の姉ふたりを探そう」
アルマの目に僅かな光が入りハイライトが出てくる。希望を見つけたかのようにはしゃいだアルマは大きな声で返事をした。
「うん!俺、真衛隊に入ります!」
ジェイは嬉しくもどこか突っかかる思いを持ちながら、アルマに一声掛けた。
「よし、じゃあ明日から真衛隊に入れるまでの約4年間、みっちり特訓だ」
「はい、頑張ります先輩!」
颯爽と風呂を上がったアルマは、ジェイの家をはしゃぎ走り回った。ダイヤには今日は行けないと連絡を送り、この少年を守らなければと強く決意した。そしてジェイは別の人物へ電話を掛けた。
「…もしもし、突然で悪いんだが調べて欲しいことがあってな」
「いつもの事だろ気にすんな。で、要件は」
「今日未明うちの国であった襲撃事件についてだ。まずその情報は入ってるか」
「ああ見たぜ。確かデノアタウンって場所だったよな」
「そうだ、それでそこの生き残りの子を…」
分かりやすく小声で話を進めるジェイ。そんな様子をアルマは気にする様子もなかった。
「なんだって……分かった、また何か分かったら連絡するぜ、じゃあな」
電話が終わり、再びアルマを見つめるジェイ。彼はこの後何が起こるのかが見えていたのか、上を向き腹を括ったようだった。
これが、終焉への扉にかかっていた鍵が動き出した瞬間である。