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閑話休題:銀の髪の秘密

聖務院との激戦から数日後。港町ティルナは少しずつ復興の道を歩み始め、レリアたちはアカデミアに戻っていた。学園の医務室で休むレリアの病室の前に、リュシアンとリオネルが立っていた。レリアは疲労困憊ではあったが、命に別状はなかった。

「レリア先輩、本当に無事でよかった……」

リュシアンが安堵の息を漏らす。彼らは、レリアの体調が回復するのを待ち、改めてあの日の出来事を話すことにしていた。しかし、リュシアンには、どうしても気になっていることがあった。

「あの時……先輩の髪、銀色に輝いていましたよね?」

リュシアンが問いかけると、リオネルの表情も引き締まった。彼もまた、あの神秘的な光景を目撃していた。

「ああ。私も確かに見た。あの真紅の髪が、まるで月光を吸い込んだかのように、まばゆい銀色に……そして、その光は、偽りの聖女の歪んだ魔力を完全に打ち消した」

リオネルは、腕を組み、深く考え込む。彼の知る魔術や聖女の歴史の知識からしても、レリアのこの変化は前例のないものだった。

「あれは、一体……」

リュシアンが戸惑いを隠せないでいると、リオネルがゆっくりと口を開いた。

「おそらく、それが**『真の聖女』の力を極限まで解放した時の姿**なのだろう。古文書や伝承には、聖女の力が絶頂に達した際に『髪が白銀に輝く』という曖昧な記述が残されている。それは、伝説の域を出ないものだと思われていたが……レリアのあの姿は、まさしくそれを具現化したものだった」

リオネルは続けた。

「レリアの祖母が言っていた『魔力に依らない生命との共鳴』。あの銀髪は、魔力ではなく、この世界の生命そのものと一体になった証、あるいは、古の聖女たちの魂の輝きが、レリアの身体を通して現れたものではないだろうか」

リュシアンは、リオネルの言葉に深く納得した。レリアが魔力を持たない理由、そして彼女が不朽草を通して生命と繋がってきた意味。あの銀髪は、彼女が歩んできた道のり、そして彼女が到達した境地を示す、何よりも雄弁な証拠だったのだ。

「レリア先輩は、本当に……僕らの想像を超えていたんですね」

リュシアンの目に、レリアへの新たな尊敬の念が宿る。リオネルも静かに頷いた。

「ええ。彼女は、我々が信じていた聖女の概念を打ち破り、真の力を示した。あの銀髪は、単なる力の象徴ではない。それは、聖女の真の歴史と、この世界の生命の根源に触れた者が到達する、新たな段階の象徴だ。カサンドラ教授が血脈の『模倣』に固執したのに対し、レリアは血脈を超えた『真理』に到達したと言える」

病室のドアがわずかに開き、レリアが二人の様子を窺っていることに、リュシアンが気づいた。レリアは、自分の髪の変化や、それに対する彼らの考察を聞いていたのだろう。彼女は、少し照れくさそうに、しかし温かい微笑みを浮かべていた。その顔には、かつて見られた影はなく、未来を見据える確かな光が宿っていた。


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