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わたし婚約破棄されました!ルマンド王国魔法学院の卒業式で婚約破棄されたエリーゼ・バンダームは、なぜか?イケメンきらきら王子に告白される?え?どういうことですの?  作者: 山田 バルス
第二章 エリーゼ、結婚生活編

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第8話 エリーゼ、女性の職業について考える。

◆公爵家の日々はきらきらと◆

【エリーゼ視点】


「エリーゼ様~、朝のココアですよ~。蜂蜜ちょっぴり入りですっ!」


「ありがとう、ナナルカ!」


わたしはふわふわのラウンジチェアに座って、湯気の立つカップを両手で包み込んだ。甘い香りが鼻をくすぐる。


ここは、王都のどまんなかにある公爵家の離れ。ピンクのカーテンにレースのクッション、バラ柄のティーセット。ぜんぶ、ウイリアム様が「君らしくてかわいい♡」って選んでくれたお気に入りの空間。


「ふぅ~、今日も最高の朝です!」


「さすがエリーゼ様。バラ風呂の残り香が……すでに貴族って感じです~!」


「ウイリアム様、浮かべすぎなんですよ~! 今日なんて、バラ三束分くらい浮かんでたんですから!」


「ふふ、王子様の愛情ですからね~♡」


わたしたちは顔を見合わせて、くすくす笑い合った。


……と、そんなのほほんムードのなか、ナナルカがぽつりとつぶやいた。


「でも……やっぱり、働ける場所があるってありがたいですね」


「え?」


「実はこの前、実家に手紙を書いたら……妹の友達、就職先がなかなか決まらないって。学院出ても、女の子はやっぱり、限られてるんですって」


ナナルカの笑顔が、ほんの少しだけしぼんだ。


「ナナルカはすっごく優秀だったから、すぐうちに採用されたけど……」


「いえいえ、私なんてまだまだです! でも、あのとき、エリーゼ様が推薦してくれたから……」


「ナナルカの人柄があったからよ。わたし、推薦しただけ!」


そう、ナナルカは、魔法学院の下級生だった。まじめでよく気がついて、わたしが卒業する前から「公爵家で働くのが夢です!」って目を輝かせてた。


「でもね、ほんとに多いんですよ。働きたくても、働ける場所がない子。家の手伝いか、お嫁さんになるしかないって言われて……でも、夢があるのに諦めるの、悔しいですよね」


「うん……」


わたしも思い出す。魔法学院の友達の中には、卒業と同時に「実家に戻って嫁入りの準備」って子もいたし、「うちは女に学問なんて必要ない」って言われてるって涙ぐんでた子もいた。


「だからエリーゼ様が“冷却装置”作って、たくさんの人が働けるようになったって、あれ、本当にすごいんですよ……!」


「えへへ、そうかな?」


「はいっ! “クールフロー・ファクトリー”には、女性の作業員さんも増えてるって聞きましたし!」


「あ、それは……実はわたしが“女子更衣室に日傘を置いて!”ってリクエストしたから……」


「やっぱり~! そういうところが、エリーゼ様の“きらきら力”なんですよっ!」


わたしは照れて、ココアのカップをふーっと吹いた。……けど、なんだか胸の奥が、ぽっとあったかくなる。


就職できない女の子がいる。夢を叶えるチャンスが足りない。


でも、それをちょっとだけでも変えられたなら──。


「ねぇ、ナナルカ」


「はい?」


「わたし、今度、ウイリアム様に相談してみようと思うの。“女子のための就職支援プロジェクト”、みたいなやつ!」


「ええっ!? それ、すっごくいいじゃないですか!!」


「例えばだけどね、工場の中に“見学+実習体験”のコースを作って、地方の女の子たちが“自分にもできる!”って思えるような、そんなチャンスを作りたいなって……!」


「それ、それ、めっちゃ応援します!! エリーゼ様、最高ですっ!」


「うふふっ、まずは“女子の未来を応援する冷却装置”って、ポスターを作るとこから始めよっか!」


「それ、キャッチコピーにしますね~っ!」


◆ ◆ ◆


その日の夜。


わたしはウイリアム様の書斎で、勇気を出して提案してみた。


「“女子のための未来応援計画”をやりたいです! 冷却装置の関連施設で、見学・実習できる制度を……!」


「ふむふむ、それで?」


ウイリアム様は例のごとく、ふわっと金髪をかきあげながら、なぜか優雅にカモミールティーを飲んでいた。


「君の瞳が、いつになく真剣だ。つまりこれは、恋の新フレーバー……?」


「そういう話じゃないですっ!」


「ふふ、冗談だよ。実は僕も、女性の雇用について考えていたところだ」


「えっ、ほんとに!?」


「公爵家として“未来のきらめき支援制度”、名づけて《きらプロ♡》を立ち上げようかと思っていたんだ」


「ネーミングがウイリアム様~~~っ!!」


「ふふ、でも悪くないだろう? 女の子たちが、夢を叶える第一歩になれるような仕組み。僕らから始めよう、エリーゼ」


「うんっ……! わたし、ぜったい頑張ります!」


「君の笑顔が、王国を照らす光になる。愛と冷却装置と未来のために、我ら進軍だ♡」


「うぅぅ……やっぱり最後がナルシスト~!」


でも、ウイリアム様のそういうところ……ちょっと好きだったりする。


◆ ◆ ◆


翌朝。


わたしとナナルカは、大急ぎで“きらプロ♡”の企画書を作った。ピンク色のふせんを貼って、かわいいイラストもいっぱい入れて。


「タイトルは……『エリーゼとナナルカの! 女子パワーで王国きらきら計画』ってのはどうですか?」


「完璧っ! ウイリアム様に見せに行こっか!」


「うわぁ~、なんだかドキドキしてきました~っ!」


窓の外では、バラの花が今日もきらきら揺れている。


わたしの“きらきらな毎日”は、まだ始まったばかり。


でも──。


きらきらは、自分で作っていくものなんだ。


魔法とアイスと、ちょっとの勇気。


わたしとナナルカの小さな企画が、王都じゅう、いえ、王国じゅうの女の子たちの希望になりますように──!


そして今日も、バラ風呂の準備中のウイリアム様は、きらんと笑って言うのでした。


「未来もきらめく、エリーゼ♡ 君こそ、僕の運命の女神だよ!」


「はいはいっ、また始まった~!」


……でもちょっとだけ、顔がゆるんじゃう。


夢に向かう女の子たちを応援する、わたしたちの物語。


きらきらは、まだまだこれからです──!

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