第7話 公爵家の日々はきらきらと
◆公爵家の日々はきらきらと◆
【エリーゼ視点】
「ウイリアム様~っ! またバラ風呂にお花浮かべすぎですよーっ!」
「ふふふ、きらきらな人生には、バラが欠かせないのだよ。バンダーム夫人♡」
ふわぁっ……!
窓から差し込む朝日よりまぶしい。金色のふわふわ髪をなびかせて、ちょっとだけ斜め上を見上げるウイリアム様。いつも通り、ポーズが決まりすぎです!
「今日のエリーゼは、すみれのブローチか。君の魅力にますます磨きがかかって……」
「って、さすがに朝からナルシスト過剰ですよ~!」
「ふふ、でもそれが僕だよ?」
──そんなわけで。
わたし、エリーゼ・バンダーム。桃色のふわふわ髪と元気いっぱいが取り柄の、元・魔法学院生。そして現在は──
「ルマンド王国第三王子、ウイリアム様のご夫人!」
夢のような毎日が続いています。
今は王都の公爵家屋敷に滞在中。お屋敷の窓を開けると、見渡す限りのバラの庭園!
金ぴかの噴水! 夜は星を映すガラスの天井!
……そして。
「冷却装置、また注文が入りましたーっ!」
「やったーっ! それで何件目ですか!?」
「えっと……今朝の時点で、計五十二件! 鉱山労働者用だけじゃなく、漁港の方や果樹園からも来てます!」
「おおおっ! まさかこんなに広がるなんて!」
そう、わたしたちが開発した**冷却装置“クールフローType-E”**が、予想以上の大ヒット中なんです!
始まりは、ただの坑道アイスづくりだったのに──。
◆ ◆ ◆
「でもさぁ、工場どうする? このままだと生産追いつかないよね?」
「実は、すでに手を打ってあるよ♡」
「えっ!?」
ウイリアム様がふふんと胸を張る。ふわふわ金髪が太陽に照らされてきらん、と輝いて……。
「鉱山から南、海沿いの村に、冷却装置専用の工場を建てたのだ!」
「えぇぇっ!? いつの間に!?」
「君がアイスの新フレーバーを開発している間にね。ふふ、僕って有能でしょ?」
「自分で言うー! でも……かっこいい……!」
そう、その海寄りの村って、わたしも視察に行ったことがある場所。
工場のまわりには、港町ならではの活気と、海の香り。そして何より、涼しい風が気持ちいい!
「そこには“クールフロー・ファクトリー”と名づけた工場があり、今や百人以上が働いているのだよ!」
「うわああ……王国の新産業じゃないですか……!」
「ふふ……きらめく未来のために、僕たちの愛の結晶を届けよう♡」
「それちょっと言いすぎですっ!」
でも、ちょっとだけ──ほんとにちょっとだけ──ウイリアム様の言葉が胸に響いてしまう。
わたしたちが開発した冷却装置が、鉱山の作業を楽にし、果物の鮮度を保ち、街の人たちの生活を涼しくする。
「やってよかったなあ……って思いますね」
「うん、君がいたからできたんだ。ありがとう、エリーゼ」
「……うぅ、そ、そういうの、ずるいっ……!!」
照れて誤魔化そうとした瞬間。
──コンコン。
「ご報告です、公爵。港の商工会議所から、次回の視察の申し出が」
「ほう、視察とは名ばかりで“視察アイス”の可能性が高いな」
「……えっ、視察アイス……?」
「今、工場の屋台で売ってる“冷却装置限定フレーバー”が、港の船乗りさんたちにバズってるらしいのだ」
「なにそれ! ずるい、私も食べたーい!!」
「じゃあ週末、海までミニ旅行と洒落こもうか?」
「えっ、デート!? ウイリアム様と港町でアイス食べ歩きデート!? ぜっっったい行きます!!!」
◆ ◆ ◆
そんなわけで──
日々、公爵家のお屋敷はちょっとした“冷却装置作戦会議室”になってるけど。
バタバタとした毎日も、金ぴか王子の癒しパワーがあれば、笑顔に変わっちゃうのです。
「次の新作アイス、私考えてますよ。“魔法桃のクリスタルアイス”!」
「ふふ、名前も君らしくて可愛いね。さすがはバンダーム家の閃き姫♡」
「えへへっ、ウイリアム様がそう言ってくれるなら、もう100個でも考えますっ!」
わたしのきらきら生活は、今日も元気に稼働中!
魔法もアイスも愛も、ぜんぶまとめてフルスロットル!
新しい風は、公爵家の屋敷から、王国中へと広がっていくのです──!




