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第3話 ウイリアム視点 お幸せに、って言っておきます!

ウイリアム視点:彼女は、ちょっと眩しい

卒業式当日。

本来なら、俺──ルマンド王国第三王子ウイリアム=ルマンド=グランフォード──は、もう少し祝福される立場だったはずだ。


だって、未来の王妃候補。しかも、隣国アルフォート王国の王女セザンヌ。

そんな姫を「俺のものにした男」になるはずだった。

なのに、現実はどうだ。

目の前で、セザンヌは他の男──レンブランドとかいう筋肉バカ──と腕を組み、堂々と懐妊宣言。

うん、痛い。心にぐっさりきた。

けど、それ以上に目を引いたのが、エリーゼだった。


あの子の笑顔。

痛みをごまかすための、無理やりな明るさじゃない。

ちゃんと、自分で未来を選び取ろうとする、強い意志をまとった笑顔だった。


王族の端くれとして生きてきた俺には、それが眩しく映った。


**


「お幸せに、って言っておきます!」


あの一言。

堂々と言い切ったエリーゼに、思わず拍手したのは、正直な感情の発露だった。

誰も文句なんて言えやしない。あんなに、まっすぐで、きっぱりとした言葉を聞かされちゃな。


隣でヘンリー兄上がうっすら笑ったのも無理はない。

セザンヌが涙ぐんだのも、当然だろう。


なのに、レンブランドだけが、まるで取り残されたみたいな顔をしていた。

まあ当然だよな。

いい女を手放したこと、きっと今頃になって後悔してる。


**


王家の会議室を出る時、俺は少しだけ悪戯心を起こしてしまった。

エリーゼの耳元に、そっと囁く。


「ねえ、エリーゼ。君みたいな子、嫌いじゃないよ」


……想像以上に、彼女は驚いた顔をした。


ぱちぱちと瞬きをして、顔を真っ赤にして、

それから、ぷんすか怒った顔で俺をにらんだ。


可愛い。


思わず笑ってしまったのは、仕方ないよな?

こんなに表情豊かで、元気な子、滅多にいない。

それに──


**


正直、俺はこれまで、ずっと「王子様」として見られてきた。

美しいだとか、格好いいだとか、

上っ面だけの言葉を浴びて育った。


でもエリーゼは違う。

彼女の言葉も、態度も、全部が本音だった。


たぶん、俺が本気で泣いても、笑っても、怒っても、

きっと同じようにまっすぐ向き合ってくれるだろう。

そんな気がした。


それが──ものすごく、嬉しかった。


**


もちろん、今すぐ何かを始めようなんて、そんな軽率なことは考えてない。

だって彼女は、今日、ひとつの別れを乗り越えたばかりなんだから。


でも、心のどこかで思う。


エリーゼとなら、

きっと、本当に笑える未来を作れるかもしれない、って。


**


その後、エリーゼが魔法学院を卒業して冒険者になると聞いて、

俺はこっそり「彼女の近くにいられる方法」を探り始めた。


王子という立場を忘れて。

ひとりの「男」として、彼女に近づきたくなったからだ。


あのまぶしい笑顔を、

もっと近くで、もっと長く、見ていたい。


そんな願いが、心に芽生えたことを、

この時の俺は、まだ──はっきりとは自覚していなかった。

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