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わたし婚約破棄されました!ルマンド王国魔法学院の卒業式で婚約破棄されたエリーゼ・バンダームは、なぜか?イケメンきらきら王子に告白される?え?どういうことですの?  作者: 山田 バルス
第二章 エリーゼ、結婚生活編

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第3話 銅山広報プリンセス、王都へゆく

◆銅山広報プリンセス、王都へゆく◆

【エリーゼ視点】


「それでは、行ってまいりますっ!」


ぴしっと敬礼して、私は馬車に乗り込んだ。行き先は王都、目的は──「修理士スカウト」!


山小屋でのあの夜以来、ウイリアム様の計画に心が燃えている。未来をつくる仕事を、自分も手伝いたい。そのためにはまず、仲間を集めなくちゃ!


「……でも、どうやって集めればいいんだろ?」


馬車の窓から町の風景を眺めながら、私は悩んでいた。


技術者の卵たち。ものづくりに興味のある人たち。そういう人が集まりそうな場所って……。


「──あ! 学舎! 技術学舎だ!」


ぱっとひらめいて、私は笑みを浮かべた。王都には、貴族から平民まで学べる「技術学舎」がいくつかある。その中でも、平民が通える「蒼鋼工学舎」は、機械や修理に強いことで有名だ。


「まずは、そこに行ってみよう!」


◆ ◆ ◆


数日後、私は蒼鋼工学舎の門の前に立っていた。


「うわー、本当に機械だらけ!」


中から聞こえる音は、まるで音楽みたいだった。金属を打つ音、蒸気の音、歯車のまわる音。みんな、真剣な顔で道具を手にしている。


だけど──私が一歩足を踏み入れると、ざわざわと視線が集まった。


「お、お嬢様……?」

「いや、あれってまさか……貴族じゃない?」

「服、めっちゃかわいい……でも浮いてる……!」


う、うぅ。場違い感がすごい……!


でも私はめげない。ぐっと胸を張って、明るく声を張り上げた。


「皆さん、こんにちはっ! 私はラルデン公爵領から来たエリーゼ・フォン・リューデンベルク! “銅山広報プリンセス”ですっ!」


──しーん。


え、ちょっと、誰か反応して……?


「……銅山って、あの……山掘ってるやつ?」

「プリンセスって……何その肩書……」

「何の広報してんの……?」


ま、まずい! 興味どころか、完全に引かれてる!


私は慌てて、バッグから削岩機の模型を取り出して、頭を下げた。


「皆さんにお願いがあって来ました! 今、公爵領では鉱山を再開発しています。そこで、削岩機などの修理ができる人を探しているんです!」


「修理? 機械の?」

「輸入品の……? 海外製って、マニュアルもパーツもないやつ?」


一人の青年が眉を上げた。


「無理でしょ、そんなの。オレたち学生だし」


「そう思うでしょ? でも、日本ではそれができたんです!」


私は思いきって叫んだ。


「遠い国にあった“日立銅山”っていうところでは、削岩機を直すために社内に修理部門を作って、それが発展して“日〇製作所”っていう世界企業になったんです!」


「……ほんとに?」


「ほんとですっ! だって、ウイリアム様がすっごく熱く語ってましたから!」


「王子かよ!」


「そう! 王子様と一緒に、“修理から始まるものづくり”をやりたいんです!」


私は勢いで話し続けた。


「最初のうちは大変だと思います。でも、道具を自分で直して、使って、それが未来の会社になって……って、すっごくワクワクしませんか?」


沈黙。だけど──


「……面白そうじゃん、それ」


ぽつり、と。工具を握っていた少年が言った。


「オレ、昔から壊れた魔道具とか分解してたし。修理って、正直めっちゃ楽しい」


「私も、父が鍛冶屋で。道具の直し方とか、小さいころからやってたよ」


「ねえ、模型見せてくれない? これ、どこの国のやつ?」


次々に人が近寄ってくる。


「これが……海外製の削岩機です。分解していいですよ、壊さない範囲で!」


「じゃあ、分解図起こしてみようぜ」


「今の道具で直せるかどうか、調べてみたい!」


──どんどん輪が広がっていく。


さっきまで冷ややかだった視線が、今は真剣に模型をのぞき込むまなざしに変わっていた。


「皆さん……本当にありがとう!」


「でもさ、これって就職先になるの?」


「もちろんです! まずは“ラルデン鉱山技術班”として契約していただいて、そのうち、“王立修理技術研究所(仮)”になる予定です!」


「仮かい!」


みんなで笑い合う。なんだか、すごく……あたたかい。


「じゃあ……君が、その広報プリンセスってやつ?」


「はいっ! エリーゼです。これからよろしくお願いします!」


「こっちこそ! オレたち、“はんだ付け班”代表、ローレンス! 修理なら任せて!」


「私は溶接担当、ルナ! 火花飛ばすの得意!」


「パーツの再利用なら任せて! ガスパルって言います!」


次々に手が挙がる。


──未来の技術者たち。彼らの目がきらきらと光っているのを見て、私は確信した。


「この国には、希望がある──!」


◆ ◆ ◆


その夜、私はウイリアム様に手紙を書いた。


ウイリアム様へ

王都で、素敵な修理士の卵たちに出会いました。

みんな、“直すこと”が好きで、楽しそうに削岩機を触ってくれました。

ラルデンの山に、たくさんの才能を連れて帰ります!

広報プリンセスとしての初陣、大成功です!


追伸:

「坑道アイス」も開発中です。ミントチョコ味が人気でした!

ご報告は以上です♪


エリーゼより


──未来は、いつもワクワクする音を立てて、すぐそこにある。

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