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わたし婚約破棄されました!ルマンド王国魔法学院の卒業式で婚約破棄されたエリーゼ・バンダームは、なぜか?イケメンきらきら王子に告白される?え?どういうことですの?  作者: 山田 バルス
第一章 エリーゼ婚約破棄からの結婚編

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第19話 わーい、つ、ついに疎水が完成しましたわ!

【エリーゼ視点:きらめく完成式典】


 朝、テントに差し込む柔らかな光で目を覚ました。

 今日は、待ちに待った疎水工事の完成式典の日。


「ふわあ……」


 大きく伸びをして、私はむくっと起き上がった。

 テントの外では、すでに準備が始まっているらしい。

 作業員たちの元気な声と、旗を立てる音が聞こえてきた。


 ウイリアム様と一緒に、式典に出席する。

 そのために——私はちょっと、特別な服を用意していたの!


「エリーゼ様、こちらを!」


 侍女のマリアが、ふわりとしたクリーム色のドレスを広げて見せる。

 疎水工事という場所柄、あんまり豪華すぎないように、でも晴れの日にふさわしく、上品なレースが施された一着。


「うん、これにするわ!」


 目を輝かせて、私は頷いた。


 髪も、今日はふんわり巻いてもらった。

 耳元では、小さな真珠のイヤリングがきらりと光る。


「エリーゼ様……とてもお綺麗です」


 マリアたちが感激して拍手してくれる。

 ちょっと照れくさいけれど、嬉しい。


 だって、今日はウイリアム様にも、ちゃんと「可愛い」って思ってほしいんだもん!


◇ ◇ ◇


「エリーゼ、準備できたか?」


 テントの前で待っていたウイリアム様が、私を見て、ぴたりと動きを止めた。


「……」


 無言で、ただじっと見つめてくる。


「え、えっと……変じゃない、ですか?」


 思わずスカートの裾をつまんで、もじもじする私。


 すると——


「……すごく、可愛い」


 少し頬を赤らめて、ウイリアム様は言った。


「う、うわあぁぁぁ!」


 私は顔から火が出そうになって、思わず俯いた。

 心臓がドクンドクンいってる!

 だめ、近くにいるだけでこんなにドキドキする!


「ありがとう、ウイリアム様……」


 小さく呟くと、彼は優しく私の手を取ってくれた。


「さあ、行こう。今日の主役は、俺たちじゃない。疎水だ」


「はい!」


 私は元気よく返事をした。


◇ ◇ ◇


 式典の会場は、仮設の広場に設けられていた。


 青空の下、色とりどりの旗が風にはためき、即席の舞台には花が飾られている。


 工事に関わった人たち、村人たち、周辺の領主代理や、町から駆けつけた商人たちも大勢集まっていた。


 みんな、晴れやかな顔をしている。


「わあ……」


 私は思わず声をあげた。


 こんなにもたくさんの人たちが、この疎水を祝うために集まったんだ。

 それだけ、この工事が大切なものだってことなんだ。


「ウイリアム様……」


「……ああ」


 隣で、ウイリアム様も静かに頷いていた。


 やがて、司会役の役人が舞台に上がり、声を張り上げた。


「本日は、バンダーム領疎水工事完成記念式典にお集まりいただき、誠にありがとうございます!」


 わあっと、拍手が湧き上がる。


 私はウイリアム様と一緒に、舞台の袖に控えた。

 次に、工事責任者の紹介がある。


「では、疎水本幹水路工事の設計および指揮を担当された、ウイリアム=エルフォード殿にご登壇いただきます!」


「行ってらっしゃいませ!」


 私はウイリアム様の背中を押した。


 彼は小さく笑って、舞台へ向かう。


◇ ◇ ◇


「——今回の工事が、これほど短期間で完成できたのは、皆さん一人一人の努力の賜物です」


 ウイリアム様は、堂々とした声で話し始めた。


 作業員たちが誇らしそうに胸を張り、村人たちが目を輝かせて見つめている。


「この疎水が、多くの田畑を潤し、人々の生活を支える礎となることを、心より願っています」


 また、拍手。


 それはまるで、空まで届きそうなほど力強かった。


 私は胸がいっぱいになった。

 ここまで、どれだけ苦労したんだろう。

 どれだけたくさんの汗と努力が、この一瞬に込められているんだろう。


「——ありがとう」


 ウイリアム様は、最後に深く頭を下げた。


 会場は割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。


◇ ◇ ◇


 式典の後は、ちょっとした祝賀会。


 炊き出しのシチューに焼きたてのパン、地元の果物やチーズも並んで、賑やかなお祭りみたい!


「エリーゼ様、こちらへ!」


 村の子供たちが手を引いて、私を連れ回す。


「わっ、ちょ、ちょっと待って〜!」


 気づけば、ウイリアム様と離れちゃったけれど……まあ、いいか!


 私も子供たちと一緒に、ゲームをしたり、花冠を作ったり、シチューをふうふう冷ましながら食べたり。

 もう、楽しくて楽しくてたまらない!


「エリーゼ様、これあげる!」


「わあ、ありがとう!」


 小さな女の子がくれた花のブレスレット。

 私はそれを大切に手首に結んだ。


 ふと見れば、遠くの広場で、ウイリアム様が男たちに囲まれて、楽しそうに話している。

 頼もしくて、ちょっと照れた顔をしていて——


「やっぱり、大好き!」


 私は胸の中でそっと呟いた。


◇ ◇ ◇


 日が暮れかけたころ、ウイリアム様が私を探しに来てくれた。


「エリーゼ、そろそろ行こうか」


「はい!」


 私はぱっと笑顔を向けて、手を差し出した。


 ウイリアム様は、その手をしっかりと握ってくれる。


 二人で並んで歩きながら、今日一日の話をした。


「子供たちと遊んだんだって?」


「はい! すっごく楽しかったんですよ!」


「ふふ……君は本当に、どこでも愛されるな」


 ちょっと照れくさそうに笑うウイリアム様。


 私だって、そんなウイリアム様に愛されていることが、何よりも幸せなんです!


◇ ◇ ◇


 最後に、工事の完成を記念して、谷間に小さな花火が打ち上げられた。


「わあっ……!」


 夜空にぱっと咲く光の花。


 その美しさに、私は思わずウイリアム様の腕にしがみついた。


「すごい……きれい……!」


「……ああ」


 静かに返事をしながら、ウイリアム様はそっと私を抱き寄せてくれた。


「これからも、君と一緒に、たくさんの景色を見たい」


 耳元で、そんな言葉を囁かれて——


 私は、胸がいっぱいになって、ただただ頷いた。


「はい……! 私も、ずっと一緒にいたいです!」


 夜空の花火が、ぱあっと二人を祝福するかのように広がった。


 幸せな未来が、きっとこの先にも続いている。


 私はそう信じて、ウイリアム様と、ぎゅっと手を繋いだ。

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