第11話 え? もう結婚式? 展開が早すぎですわ?
「きらり王子と私の、とんでもない結婚」
はい、エリーゼです。
昨日の衝撃から一夜明けて、まだ現実についていけてません。
だって、ウイリアム王子、通称「きらり王子」が——なんと、「結婚したい」と言い出したんですよ? しかも即決で。
父は「よし、これで財政難も解決じゃ!」って大喜び。
私はって? うーん、正直言うとちょっと複雑。でもお断りできないムードって、ありますよね。あれです。
王命だし、条件も悪くない。悪くないけど……この人、いろいろキラキラしすぎて、正直怖い。
で、迎えた翌日。
朝から執事さんが慌てた声で、
「エリーゼ様、王子殿下がお見えです!」
って叫びまして。
いや、早くない?
昨日の今日だよ!?
展開の速度がここまで早いと、さすがに心の準備が追いつきません。
慌てて髪を整えて、そこそこ可愛めのワンピースに着替えて応接間に向かうと——いました。
きらり王子、ウイリアム様。
今日も完璧なブロンドヘアに、王子スマイル全開。
うわ、まぶしい。目がチカチカする。
「やあ、エリーゼ。昨日は驚かせちゃったね」
ふんわり微笑むその姿に、心臓がバクバク。
夜もぐっすり寝たくらいには、逆に疲れ切ってた私。
で、どうしても気になったことを聞いてみました。
「それで……私のどこが気に入ったんですか?」
だって、昨日までまともに会話した記憶、ないんですけど!?
卒業式の日に、いきなりプロポーズ。なにそれ。どこの恋愛ファンタジー?
するとウイリアム様、きらんっと目を輝かせて、
「やっぱりピンクの髪がいいよね。千花とか、まどかとか、ラムとか……あ、ラムはちょっと髪が短いから違うかな?」
……え?
今、何人名前言いました?
千花? まどか? ラム? 誰それ?
ライバル? 元カノ? まさか愛人候補?
パニックになりかけた私に、王子様は軽く笑って、
「誤解させちゃったかな? ボク、恋人も愛人もいないよ。君だけだから」
って、さらっと言いました。
ふつうなら「きゃー♡」ってなるはずのセリフ。
なのに私の背中を、冷たい風が吹き抜けたのは何故でしょう。
ぞわっ。
なんか、怖い。
ただのナルシストじゃない。
何か、もっと深いところで、目覚めた感じがする。
でもね、話はどんどん進んでいきます。
貴族たちも「バンダーム家と王家の繋がりですか、素晴らしい!」とか言って、拍手してくれるし、
セザンヌ姫からは「今度お茶しましょう♡」ってお手紙まで届くし。
いやいや、私まだ心の整理ついてませんけど!?
みんな早い、早すぎる。
そして、怒涛のように結婚式当日を迎えました。
王都のそこそこ大きな教会で、王子の第三王子らしい、派手すぎず地味すぎずの絶妙な式。
純白のドレスは、鏡の前の私にぴったりフィットしていて——
「うわ、私って案外イケるじゃん」って、ちょっとだけ自信が湧いたのはナイショです。
ウイリアム様も当然ながら王子スマイル全開。
神父様の前で指輪を交換する瞬間、彼はふわっと笑って、
「ボクの姫になってくれてありがとう」
って囁きました。
ああ、これ。
乙女ゲームだったら間違いなく最高ルート。
なのに、私の頭の片隅に、なぜか「ゲームオーバー」という赤い文字がちらついたのは、たぶん気のせいです。たぶん。
——その後も、怒涛。
式が終われば、すぐに宮殿での披露宴。
各国からお祝いの手紙や贈り物が届いて、父はまたもや満面の笑み。
「これで我がバンダーム家も安泰じゃ!」
……うん、たしかにそうなんだけど。
これ、私の人生なんですけど?
誰か、もうちょっと私に寄り添ってくれませんか?
ウイリアム様はそんな私を気遣うように、
「エリーゼ、何か欲しいものがあったら何でも言ってね。ボク、君の願いを全部叶えたいんだ」
と優しく微笑みました。
それはそれは、完璧な王子様の笑顔で。
でも、だからこそ思ってしまった。
——この人、本当に私のこと、ちゃんと見てるのかな?
私が欲しいのは、贅沢な暮らしでも、宝石でもない。
ただ、普通に、普通に……好きになって、好きになられて、そんな、当たり前の恋がしたかっただけなのに。
きらきらした世界に囲まれて、
私はひとり、静かにため息をつきました。
「……これから、どうなるんだろう」
そう、小さく呟いた私の声は、誰にも届くことなく、
宮殿の天井に吸い込まれていきました。
——きっと、ここからが本当の始まり。
そんな気がして、私は、そっと目を閉じました。
【続く】




