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イカサマハイスクールゲーム  作者: 長山久竜@第30回電撃大賞受賞
第二章 何故か僕だけデスゲーム
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第二章 何故か僕だけデスゲーム ④

 やがて、受験生の集合時刻を過ぎた頃、舞台にマイクスタンドが設置された。あそこで、校長先生のスピーチよろしく試験官が話をするのかもしれない。

 集められた受験生は、まばらに散らばっている。高揚と不安が入り乱れたざわつきが場を満たしていたけど、それはやがて止まった。


 壇上に、試験官と思しき女性が登っていったからだ。

 彼女は、鮮血のように真っ赤な長髪をたなびかせてマイクの前で立ち止まる。トントンと軽く叩いて音量を確認した後、勝気な笑みをこぼした。


「みなさん、こんにちは!」


 こんにちはー! と元気に返す人が二割。

 残りはうめき声みたいな遠慮がちな返答。


「この度は、常盤城高校の第一八回入学者選抜試験にお越しいただきありがとうございます!」


 常盤城高校は東京都に位置しているが、入学志願者は全国に数千人規模で存在している。

 だから、異なる会場・日程でいくつもの試験が実施されているらしい。今日行われる試験は、今年度の一八回目と言うことだ。


「私は赤川と言います。普段は常磐城高校の教員をしていて、今回の試験の試験官を務めます。この中から出た合格者の子と、一緒に勉強できることを楽しみにしています。よろしくお願いしますね」


 赤川先生は、名前を表すような眩しい赤髪を揺らして深くお辞儀をする。


「さて! あらかじめ通達しました通り、月曜日の本日から金曜日までの五日間をかけて、試験を実施します。……まぁ、みなさん、きっと色んな情報を集めていると思うのでご存知かもしれませんが、本校の入試は、普通の学校のソレとは一線を画します」


 しん……と会場は静かだった。

 ざわつかないところをみると、やっぱりこの場の誰もがそのことを理解しているのだろう。


「今回の試験。まずは、皆さんに、あるゲームをしていただきます」


 常磐城高校の特色として、自分が目指す分野の講義を受けるために必要なポイントがあり、それはとあるイベントによって取得しなければならない、というルールが挙げられる。


 それが『ゲーム』。


 金銭を模したポイントを、ゲームによってやりとりする。

 得られたポイントを消費して、夢への階段をひた走る。それが、常盤城高校の根底にある原則だ。


「皆さんが入学したら、ご存知の通り、『体育祭ゲーム』、『合唱コンクールゲーム』、『修学旅行ゲーム』など、普通の高校生が青春イベントとして経験するソレらを模したゲームをして学校生活を過ごしていきます」


 赤川先生は、天を仰ぐように両手を大きく広げる。


「皆さん、本校の卒業生の活躍については熟知していると思います! 彼らはいわば、『ハイスクールゲーム』の勝者です! 三年間のゲームを勝ち残り、退学せずに研鑽を積み重ねた。だから、人生の成功者となれるんです! ……ですので、この入試では、そんな常盤城高校の体験入学を兼ねて、皆さんには実際に本校で行われるようなゲームに挑んでいただきます」


 赤川先生は、拳を握る。それを力強く前へ突き出すと、



「その名も――『受験戦争ゲーム』!」



 戦争だなんて……穏やかじゃない言葉だ。『入学試験』とか『高校受験』とか他に言い方はあると思うんだけど。


『いやいや、悪くないよ、光輝クン。命のやりとりをするんだ。これくらい物騒じゃないといけないよ』

『命を差し出してるのは僕だけだよ……』


 頭を抱えていると、一人の女子学生が手を挙げた。


「赤川先生! 質問があります!」


 栗色の髪の、聡明そうな女の子だった。

 襟が水色の清らかなセーラー服に、紺色のスカーフが胸の前にあしらわれている。見るだけで涼しくなりそうな制服に身を包んだ少女は、育ちの良さそうな気品ある歩みで集団の先頭に躍り出た。


「きちんと挙手して偉いですねっ。質問はなんでしょう?」

「ありがとうございます。淑麓(しゅくろく)中学校の桜崎と申します。先ほど赤川先生は『まずは』とおっしゃられたと思うのですが、このゲームの後にはまだ何かあるのでしょうか?」


 桜崎と名乗った少女の質問に、赤川先生は「ふふ」とイタズラっぽく微笑んだ。


「さすが。頭の回転が早いですね。九六時間の『受験戦争ゲーム』が終わった金曜日の一五時よりペーパーテストを実施して、合格者のみ面談し、日程は終了です」


 その発言には、流石にほとんどの生徒がざわついた。

 九六時間のゲーム。それはつまり、今日この後から金曜日までぶっ続けということだ。

 いくらなんでも、それは覚悟していなかった。大半の受験生もそうだろう。現に、会場のざわつきは、一秒ごとに増大していっている。


「ちょ、ちょっと待ってください! そのゲームって、金曜日まで夜通し続くんですか!?」

「うふふ。詳しい説明は後ほど致しますので、一旦お話を進めてもよろしいですか?」

「……わかりました。ありがとうございます」


 釈然としない表情を見せながらも、桜崎は一歩下がった。

 会場のざわめきはおさまらない。しかし、赤川先生は慣れた様子で声を上書きしていく。


「では、ゲーム会場に移ってルール説明……と行きたいところですが、先に皆さんにやっていただくことがあります」


 赤川先生の発言を待っていたかのように、僕たちの左右の壁に並べられたボックスが一斉に開いた。近くに立っていた数人の生徒が尻尾を踏まれた猫のように飛び退く。


 中は、試着室みたいになっていた。カーペットが敷かれたようなふかふかそうな床に、奥には姿見の鏡。そして異質なのが、ハンガーで吊り下げられた深海のような青々しいジャージと……ダイヤル錠のついた大きな金庫。


 僕を含め、ほとんどの学生は察しがついたみたいだ。

 同時に戦慄する。

 つまり、僕たちは、これから。


「お着替えです♪」


 身ぐるみ剥がされた状態で、五日間のゲームに放り込まれるということだ。


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