第二章 何故か僕だけデスゲーム ③
校門を通ると、運動会で使われるような簡易テントがあり、受験生はそこで受験票を提示するみたいだった。その後は、すぐ後ろの待機室に案内された。
待機室といっても、内装はほとんど学校の体育館だった。バスケットボールのコートが三つ並べられるほどの縦長の空間の奥に、高さ一メートルほどの舞台があった。
しかし、明らかに異質だったのが、左右の壁にずらっと並べられた仮設トイレみたいなボックスだ。
これは一体何に使用する物なのだろうか。まさか、本当に便所じゃあるまいし。
とりあえず僕は、比較的人が少ないエリアで腰を下ろした。
『おおー。ここにいる人間、みんな光輝クンのライバルか。大変だねぇ』
『他人事みたいに……』
『他人事だからね。キミが死のうが願いを達成しようが、フェリスにはなんの影響もない。そんなことより、どれだけ醜い足掻きが見られるかの方が大事だよ』
フェリスは、悪魔らしい悪辣な笑みを浮かべる。
彼女の行動は癪に触るけど、大変なのは紛れもない事実だ。
同じ制服で親しげに話している人も多い。グループ受験も多いのかもしれない。もし試験内容が「サバゲー」とか集団戦の内容だったら、彼らは非常に手強いだろう。
そして、誰も彼も、明確にビジョンを持っていそうな人たちばかりだ。インテリっぽい子、アナウンサーでも目指していそうな華やかな子、政治家になりそうなピシッとした身なりの子。
全員が全員優秀そうで、この人たちを押し退けて特待生になることがどれほど困難か、しっかり理解できているかどうかすら、僕には自信がない。
『光輝クン、光輝クン。自信がないじゃなくて、もっとこう、必死になるんだよ。出来なければ死だ。それを覆すために、なりふり構わず足掻く。そんな姿が、フェリスは見たいんだよ』
フェリスの小言を無視して、僕は待合室の中央のグループを眺める。
「だーっ、はっはっ!」
円を描いて座り込む男女五人グループ。そのうちの少年の一人が、高笑いをあげる。
「お前、昔っからそうだよな! 信臣君を見習え!」
一際体格の良い少年が、隣の坊主頭の少年をこづいている。なんだか楽しそうだ。
この状況下でリラックスできていることが、純粋に羨ましい。それは余裕なのか虚勢なのかはわからないけど、僕みたいに不安で押しつぶされそうになっている人間とは雲泥の差だ。
そして、グループのリーダーらしき人物。
ついさっき売店で言い争っていた、青髪の男だった。
多分、会話は彼中心に回っている。
唯我独尊で、自己中で、だけど、その威圧感で敵を黙らせそうなオーラを持つ男。相手があの銀髪の女の子だったから彼は我を通せなかったけど、一般人相手だったら、その底知れない威圧感だけで怯ませることができるだろう。
彼も、受験生だった。もう、怖くてたまらない。
本当に、僕は願いを叶えられるんだろうか。




