第七章 試験終了、そして ②
面談は、本当に簡単な内容だった。
どちらかと言うと、入学までのガイダンスのような位置付けだと感じた。
詳細は書類を送付するが、主だった内容については口頭でも説明がなされた。
最後に質問はあるか? と聞かれたので、一つだけ気になったことを尋ねた。
「もし仮に、全員が合格していたら、本当に全員入学できたんでしょうか?」
常盤城高校は、合格率が一%を割る超難関校だ。
それなのに、今回は僕の采配次第で五〇人以上が合格しかねない状況だった。
そしてそれは、特に能力がない生徒も含まれていたはずだ。
国が『特別な才を持つ人材を育成する』ことを目的として設立した高校に、そのようなものが混じる余地があるのか。それを確認したかった。
僕の問いに、長机の右端に座る男が答えた。
「あり得ない。我々は試験の様子を全てではないが出来うる限り把握している。この面談も、混入した異物を弾くことが一番の目的だ」
やっぱりな、と言うのが正直な感想だ。
仮に偽物の解答を一枚だけにして、ほぼ全員が試験をパスしたとしても、この面談で大多数は落とされていた。精々、足利グループの五人が残ったくらいだろう。
安心した。と言うことは、この高校の入学者は、本当に選ばれた優秀な人間たちばかりのはず。それは、仲間を募る僕にとっては朗報だ。
「ありがとうございます。他は特にありません」
頭を下げて、面談室を退室した。
入れ替わるようにして、外で待機していた柊が中へ入っていった。
***
僕は、近くのベンチソファで、給茶機で汲んだお茶を飲んでぼーっとしていた。
体に、異変はない。いや、正確には細かな部分にダメージは行っているが、それでも健康体と言って差し支えない。
フェリスの呪いは、完全に乗り越えたようだ。
『まずは、おめでとうと言っておこうかな、ミツキ』
普通の人間のように、僕の隣に腰掛けて笑うフェリス。
言葉こそやや捻くれているが、その破顔に邪悪な感情は感じ取れない。
『特待生入学――本当に成し遂げてしまうとはね。さすが、フェリスの見込んだ男だ』
お茶の紙コップを手渡すと、彼女は周囲に誰もいないことを確認して、口をつけずにそれを喉へ流し込んだ。
『ぷはぁっ、生き返るね。……それにしても、あれはビックリしたよ。まさか、偽の解答を掴ませることで自分が正答率一位に躍り出ちゃうなんてさ』
『あはは。君のいないところで柊に指示したからね』
昨日、柊へ解答の偽造を頼んだのは、電波妨害のためにフェリスに足利の監視を任せた後だった。
だからフェリスは、この話を知らなかったのだ。
『まったく、冷や汗をかいたよ。一人にしないでくれって約束してすぐ、キミがいなくなると思ってしまった。悪い男だね、キミは』
『わざとじゃないよ……。途中で思いついただけなんだ。僕もまだまだだなって思うよ。もっと色んなことをすぐに視えるようにならないと』
『……くくく。いいよ、実に面白い。あの日のキミに追いつく日が楽しみだ』
フェリスは顎に手を当てがい、楽しくて仕方がないといった表情だ。
『そうだフェリス。改めて、三つ目の願いを言っておくよ』
僕は、まだ笑いが収まらない様子の彼女へ、まっすぐ告げる。
『改めて?』
『僕自身の願いは、まだ二つしか言ってないからね。呪いとしての効力はないかもしれないけど。……そうだね、これは誓いだ』
その碧色の瞳を貫くように、僕は告げる。
『なぜか僕を追い回している組織を、潰したい。……潰して、みせるよ』
『くくく、茨の道だよ』
フェリスは妖艶に笑う。
それは、天使らしくない仄暗い笑みだった。




