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第六章 叛逆の四日目 ⑫

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 時は戻る。


 足利信臣は、驚愕しながら神代から事の顛末聞いていた。

 全ては、ベルノを騙し取るために仕組まれた行動。

 柊の接触も。神代の理解不能な行動も。小日向の醜い足掻きすらも、全て。

 メッセージの妨害についてはぼかされたが、瑣末なことだ。


(手のひらの上だった……とでも言うのですか)


 足利は、この状況を信じることができなかった。

 彼はこれまでの一五年間、常に勝者として覇道を突き進んできた。

 妬みも嫉妬も、掃いて捨てるほど浴びてきた。下剋上だって狙われた。

 だがそれを、全て力と知略で叩き伏せてきた。


 なのに、この様は一体なんだ。

 この神代光輝は、一体なんだ。


「さて、()()()()()()()()()()()()、元・王様の足利信臣」


 土砂降りの雨に打たれる彼は、瞳の輝きをくすませない。


「取引の時間よ」


 その後ろで大雨を傘に受け、毛先を血の色に染めた妖狐のような女――柊が冷たく笑う。

 彼女は懐から三枚の洋封筒を取り出した。


「ここに、私たちが持つ、三枚の解答がある。これと、あなたたちが持つ六枚の解答――交換して欲しいの。応じてくれるのなら、私は、あなたが払うはずだった百万ベルノを肩代わりする。キャンセルは無理でも、その購入者を変更することは両者の同意があれば可能と聞いているわ。疑うのなら、書面にするけれど」


 足利は、屈辱感に奥歯を噛み締める。

 この提案に、拒否権はない。応じなければ、一時間後に失格が待っている。

 元より、こちらにデメリットはない。

 その他大勢の受験生との契約が守れなくなるわけでもない。足利が特待生になれるほどのベルノを残すことにも変わりない。


 ただ一つ。神代光輝と柊雨凛の入学を許す。それだけ。

 一度宣言した内容を、撤回して。

 たったそれだけで、失格の窮地からは脱することができる。

 そのわずかな妥協が、この上なく癪に触るのだが。


「……ッ!」


 足利は、血が吹き出しそうになる程唇を噛み締め、グループから預かっていた六枚の解答を掲げる。

 それだけで、全てが伝わった。

 柊は、見下すように笑っていた。


「――いい子ね」


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