幕間③
私は、シャワーを浴びていた。
今日も走りまわった。
朝早くに起きて準備運動をしっかりしたものの、昨日よりも長い時間走り回ったおかげで疲労は溜まりに溜まっている。今日も、早めに寝よう。
それにしても、神代くんは相変わらず、自分が戦線の真ん中に立つことを恐れていた。
あの時の彼の主体性が失われてしまったのは、非常に残念だ。
初日の朝に売店で会った時。試験のルール説明を受けている時。
その消極的な態度が命取りになりかねないと思って彼にアドバイスを送った。
だけどそれは、あの時の自分を思い出して欲しい、と言うのが大きかった。
私が憧れた、ヒーローのような少年。
今日も自発的に作戦を整理したり、小日向さんを助けようとしたり、一定の自主性は見せてはいるものの。肝心の作戦は、ほとんど私頼りだ。
しかし一方で、彼が強烈に我を見せた瞬間がある。
初日の日没後。購買のゴミ箱から空のペットボトルを拾っていたあの時だ。
『僕は、絶対に、特待生にならなきゃダメなんだよ』
どうも、今日まで二日間見てきた彼からすると、あの瞬間だけ異様だ。
まるで、迫る何かから必死で逃れるような。逼迫した危うい感情が見てとれた。
あれは一体なんだったのだろうか。彼が常盤城高校へ一種のシェルターとして入学したい気持ちは聞いたが、それとあの欲望はイマイチ結びつかない。
彼は一体、何を抱えている?
――ばっかだなぁ、雨凛は。きちんと知りたかったから、納得いくまで追求したんだよ。
今は傍にいない、幼馴染の声。
そうだった。
彼のことを、さらに深く知るために。
もっともっと。彼の中枢にまで潜り込まないと。
そのためには。
彼の表面に巣食う理性を引き剥がして、心の内を引き摺り出す。




