幕間②
私は彼と別れて、自分のコテージに来ていた。
汗と砂埃で不快な身体を一刻も早く洗いたかったけれど、まだ注文したシャンプー類が届いていない。
この汚い格好で、ベッドにも入りたくない。
仕方がないので、私は床に座り込んで足のストレッチを始めた。
今日は準備運動もなしに走り回ってしまった。足に疲れが溜まっている。
ふくらはぎの筋肉をほぐしながら、私は思考を巡らせる。
今日、神代光輝を名乗る少年を仲間に引き入れた。
彼は、私が見つけた時はすでに解答を入手していたため、勧誘しやすかった。
制御不能な負け筋を潰すためには、解答が最低三枚必要。それは本当だ。
だから、彼は勧誘しやすかった。
入手できていなかったとしても、何かと理由をつけて仲間に引き入れていたけれど。
気になるのは、時折、不自然に視線を巡らせることがあること。
目を泳がせる、とは明確に違う。アレは確実に、何かを捉えてその軌跡を追っている眼球の動きだった。
不正行為では無いようだから、今は追求しないけれど。
明日からも、この件については留意しておかなければ。
「……それにしても」
――もちろん! こっちがお願いしたいくらいだ!
――柊は、一緒に来てくれる?
思い出すのは、今日私に向けられた、彼の素直な表情。
「……あんな、かわいい顔もするのね」
あの少年は、中学三年生にしてはやや幼く感じた。
彼の特殊な出自に関係があるのだろう。
未知の組織に追われ、外界との交流を絶ったからこそ、人間的に、社会的に、成長が阻害された。
それは、察して余りある背景だ。
それを踏まえて、私は。
誰に言うでもなく、そっと呟いた。
「――絶対に認めない」




