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イカサマハイスクールゲーム  作者: 長山久竜@第30回電撃大賞受賞
第二章 何故か僕だけデスゲーム
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第二章 何故か僕だけデスゲーム ⑧

ルール説明パート②です。

読んでいただいた方が嬉しいですが、お忙しい方は次ページへ。

箇条書きでルールを列挙しています。

「皆さん、身ぐるみ剥がされちゃいまいしたからね。試験中は、このベルノで必需品などを購入してください。中央ブロックにある中央棟に購買があるので、そこで食料品など色々買うことができます。

 また、説明が前後しますが、『メッセージ』で試験官に注文を行うこともできます。購買はそこそこ大きいですが、なんでも揃っているわけではありません。細かなものは、別途注文してくださいね。注文したものは、一人一人にコテージがありますので、二〇時にスマホの持ち主のコテージまでお届けします。キャンセルはできませんので、悪しからず」


『うおおっ! いいじゃないか! 光輝クン! これは好きな料理をデリバリーしてくれると言うことだよね! しかも、コテージなら人目も気にせず食べられる! 最高じゃないか!』


 ベルノという通貨と、注文のシステム。そしてコテージ。

 フェリスは大興奮だ。


 試験前のチーズドリア。彼女は、誰の目にも映らない建物の裏などで隠れるようにして食べていた。なぜか。彼女を視認できない一般人目線だと、ドリアが一人でに浮いて、そしてどこかへ消えていく怪現象が観測されるからだ。

 その点、コテージなら問題ない――けど、


『いやだよ。絶対に買わないからね』

『どうしてだい! 五日間も断食したら死んでしまうよっ!』

『悪魔は餓死しないんでしょ。ただでさえ試験は狭き門なんだ。フェリスのために割く余裕なんてあるわけないじゃん。僕には命がかかってるんだ』

『で、でもっ! お腹が空くのは事実で……』

『僕に死のリスクを背負わせのはフェリスでしょ。自業自得。絶対に買わないから』


 僕が強気で告げると、フェリスは翼をしゅんとしおらせる。目に見えて項垂れていた。

 なんだか、ほんの少しだけスッキリした気がする。


「支給するのは三万ベルノ。上手に使ってくださいね。なお、ベルノを使い切ってしまった受験者は失格とします。気をつけてくださいね」


 ベルノと円の価値がどれだけ違うのかわからないものの、使い切ったことによる罰則がわざわざ決められているってことは、五日間で使い切る可能性がある程度の価値なのかもしれない。

 わからないけど、ちゃんと管理して考えて使っていかないと。


「続いては、『メッセージ』。まぁこれはゲーム専用のLINEだと思ってください。試験官への注文や質問はデフォでできますし、友達登録をすれば受験生同士もやりとりが可能です」


 僕は『メッセージ』をタップした。

 すると、『神代光輝』というアカウント名と、『試験官』のアイコンが。

 なるほど、確かにLINEみたいだ。


「スマホの説明は以上です。続いて、腕時計の説明に移りますね」


 赤川先生は、次に腕時計を掲げる。


「こちらは、大きく分けて三つの機能があります。一つは、普通に時刻の確認ですね」


 僕も腕時計を見る。オーソドックスな、短針と長針で表示するタイプだ。

 現在時刻、一四時四七分くらい。


「二つ目は、皆さんのバイタルサインの測定。四泊五日の森に放り込むわけですからね。これくらいのセーフティネットはつけないと。異常があれば、すぐに試験官が駆けつけ、場合によっては失格にして搬送します。ですので、試験終了まで外れないようになっています」


 いいなぁ。

 他の受験生は命の安全が保障されてるんだ。


「三つ目は……ゲームのルールと一緒に説明した方が早いと思うので割愛します。ここまでで、質問のある方はいらっしゃいますか?」


 誰も手をあげない。

 質問お化けの桜崎も静かだった。


「では次に、生活についてです。先ほどもちらっと説明しましたが、皆さん一人一人に中央ブロックにあるコテージが与えられます。施錠については腕時計のボタンを三回押すと、格納されていた鍵が出てきます。腕時計と一体なので、失くすことはまずないかと思います」


 言われた通りに、時刻合わせ用のボタンを連続で押してみる。

 シャッ! と勢いよく鍵がスライドして飛び出してきた。引っ張ると、鍵のお尻の部分から細い鎖が引きずり出てきて、二〇cmくらいは伸びた。これなら施錠も難しくなさそうだ。


「続いて注意事項です。とはいっても、一般的な中学生なら当たり前に守れることですけどね。……えっと、まず、陽が落ちている間は危ないので、森の中は一七時〜翌七時の間、立ち入り禁止です。その間は、中央棟かコテージにいること。また、二〇時〜翌六時は深夜時間です。必ずコテージの中にいてください。どちらも、破れば即失格の厳しい措置をとらせていただきます」


 即失格、という単語にドキッとした。

 つまり僕は、門限を守らなければ即死亡、と言うことか。


「コテージには人をあげてもいいですが、一日一人までです。もし一日に二人以上入室させた場合は、コテージの家主と二人目以降の入室者を失格にします。くれぐれもハメを外したりしないでくださいね。これはゲームですが、立派な入学試験です」


 また失格の条件か。

 破れば死。しっかり頭に入れておかないと。


「また、もちろんですが法に触れる行為は禁止します。このビオトープ内は監視カメラが常に見張っているのと、皆さんが装着している腕時計からも音声を拾っています。なので、発覚次第失格とします。あ、この集音機能が腕時計の三つ目の機能です」


 赤川先生は、『以上、質問はありませんか?』と受験生へ問う。

 しかし、誰も発言する者はいなかった。


「では質問もないようですので、ゲームの根幹に関するルールを説明します。各ブロックに隠された九枚の解答……この取り扱いについてのルールです」


 そう。それこそが一番重要だ。

 六〇人の受験生に対してたったの九枚と、少なすぎる解答。

 そして、九六時間にも渡る、長すぎるゲーム時間。


 つまりこれは、単なる宝探しじゃない。

 誰かが見つけた解答を、あらゆる手段を用いて手にいれる『サバイバル』なのだ。

 ここが、ゲームの肝になってくるはずだ。


「解答の譲渡や交換・内容の共有は、中央棟にある『取引ルーム』で行わなければなりません。『取引ルーム』は二名が定員で、自分以外には一日二人しか会ってはならない制限をかけます。これらのルールを破る……例えば、『森の中で解答を共有』『取引ルームに三人が入室』などは、発覚次第失格といたします」


 なるほど。

 解答そのもの、あるいはその内容だけでも、知る手段や数に制限をかけるのか。


「腕時計から収集される音声は、AIが二四時間監視しています。失格なんて残念なことにならないよう、しっかり考えて行動してくださいね」


 これだけ広大な森なら、不正の手段は考えれば出てきそうだ。

 ……だけど。

 万が一発覚するリスクを考えたら、冒険はできない。なんたって、こっちは命がかかってるんだ。


『そろそろ終わるかい? フェリスは飽きてきたよ』


 フェリスが欠伸をしながら文句を垂れるも、無視することにした。

 試験が間も無く始まる。緊張はすでに上限いっぱいで、だけど逆に冷静になっていた。

 まるで、酷すぎる傷に、むしろ痛みを感じなくなるみたいに。


 頭が働かなくなるよりマシだ。アドレナリンに頼って、とにかく全力を尽くすまでだ。

 初日の方針は、まず、解答を手に入れていそうな人間をピックアップすること。


 倍率が約七倍の解答捜索は、分が悪い。お尻に火のついた受験生六〇人との戦いは避けたい。

 それよりも、最初から他人の解答をもらう前提で動いた方が効率がいいはずだ。

 だって、結局のところ、解答を頑張って一枚手に入れたところで、残りの解答は他の人からもらう必要があるのだから。


「……神代くん。まさかとは思うけど」


 ふと、柊が呆れたような瞳で声をかけてくる。


「できるだけ競争は避ける、とか考えていないでしょうね」

「えっ?」

「……やっぱり。もう一つだけアドバイス。悪いことは言わないから、甘い考えはやめて、まずは一枚、解答を確保することに全力を注ぎなさい」

「それって――」


 どう言うこと? と聞く前に、赤川先生が再び口を開く。


「最後に。このゲームで得た情報を以って、金曜日のペーパー試験に臨んでください。七問正答で合格と言いましたが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。トップが複数いた場合は、残ベルノが多かった一名を特待生とします。是非みなさん、合格だけでなく、特待生を目指して頑張ってくださいね!」

『おおっ、聞いたかい、光輝クン? 特待生だって。よかったじゃないか、明確なラインを教えてもらって』

『……』

『光輝クン?』


 フェリスの声は耳に入らなかった。

 それどころか、一切の思考が消え去った。


 特待生。僕の命。

 絶対に手に入れてみせる。

 もはや、それしか考えられなかった。


 そして。

 左腕に嵌められた腕時計が、一五時を示す。


「では、四日後に会いましょう――『受験戦争ゲーム』、スタートです!」


 ビオトープ内に、始まりの鐘の音が響き渡った。


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