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イカサマハイスクールゲーム  作者: 長山久竜@第30回電撃大賞受賞
第二章 何故か僕だけデスゲーム
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第二章 何故か僕だけデスゲーム ⑦

ルール説明パート①です。

読んでいただいた方が嬉しいですが、お忙しい方は2ページ後へ。

箇条書きでルールを列挙しています。

 バスが到着したのは、金網で囲まれた森のような区画だった。


 無性に恐怖を煽るような場所だ。山奥の立入禁止区域とか、猛獣を飼ってる檻とか、そういうのを連想するような、外界と隔絶する意思みたいなものが感じ取れる。

 降車した受験生は、金属製の頑強そうな扉を通って中へ。


 そこは、大きな植物園だった。

 一五メートルはあろうかという金網の天井を支えるように伸びる大きな木々が鬱蒼と生い茂り、足元を見ても雑草はもちろん、カラフルな花も点在するように咲いていて、まるで原生林だ。少なくとも、舗装された道はなさそうに見える。


「皆さん、ようこそ。常盤城高校の第三ビオトープへ。今回の入学試験――『受験戦争ゲーム』は、こちらの施設で実施いたします」


 今入ってきた扉の前で話し始めた赤川先生の声が、植物園いっぱいに響き渡った。

 胸の辺りにピンマイクがあしらわれている。そこから音を拾って、園内のスピーカーから発声されているんだろう。


「では、先ほど桜崎さんからご質問いただいた内容にお答えしますね。結論から言いますと、金曜日までの五日間、受験者の皆さんにはこのビオトープ内で過ごしていただきます。なぜなら、『受験戦争ゲーム』の内容は……金曜日までの四泊五日、九六時間の『解答獲得サバイバル』だからです!」


 元気溌剌な赤川先生とは対照的に、受験生のテンションは割と地の底だ。

 常盤城高校の異質な試験については覚悟をしてきたとしても、いきなり森の中に放り込まれて「サバイバルをしてください」なんて、怖いに決まってる。


 ……しかも、僕だけは、本当の意味で生存競争(サバイバル)だし。


「皆さんには今から、このビオトープ内である封筒を探していただきます」


 赤川先生は、小さな紙を空にかざすように見せてくる。

 茶色の、なんの変哲もない洋封筒だ。


「これは大事な大事なアイテムです。なんたって中身は、金曜日に行われるペーパーテストで出題される一問の、解答ですからね」


 ざわっ! と音にならない音が沸いた。 

 何人かの受験者が、打って変わって真剣な顔つきで近くの人と話し始める。

 一方で、それほど喜んでいない人も一定数いる。きっと、学力に大きな自信があって、解答なんかあってもなくてもどっちでも良いと考えているんだろう。


「ペーパーテストは全九問。七問正答で合格です。……お気づきの通り、合格者に上限はありません。ここにいる六〇人全員が合格することもあり得るので、皆さん頑張ってくださいね」


 みるみるうちに、受験生の顔面に喜色が溢れていく。

 入学者の椅子に限りはない。そんなことを言われてしまえば、誰だって浮き足立つ。


『光輝クンは、喜ばないのかい。喉から手が出るほど欲しいだろう、解答(アレ)


 フェリスが、意外だとでも言いたげに耳打ちしてくる。


『……だって、僕の願いは特待生入学なんだろ。合格者に上限がなくても、解答が配られても、特待生枠の数は変わらないんだ。もらえるならそりゃ欲しいけど、僕にとっては不十分すぎるよ』


 あれがもし「特待生になる権利」とかだったら僕は文字通り死ぬ気で獲得に動いていただろう。

 だけど、今のところそれほどの価値はない。


『くっくっく。それもそうだね』

『それに、ここは合格率が一%を切る超難関校なんだよ。合格者に上限がなくてもどうせ「理論上」とか枕詞がつくに決まってるんだ。浮かれるわけないじゃん』

『かもしれないねぇ。なんだ、光輝クン、案外頭回せるじゃないか。これは期待しちゃうなぁ』


 僕は、楽しそうにくすくす笑うフェリスを一瞥すると、小さくため息を吐いた。


「ねぇ、神代くん。ちょっといいかしら」


 ふと、隣から声をかけられる。柊だった。

 気が付かなかったけど、彼女はバスを降りてからもなんとなく近くにいたみたいだ。


「あまりキョロつかないでくれるかしら。気が散るわ」

「あ、ご、ごめん……」


 そんなに大袈裟に動いていたつもりはないんだけど、柊にとっては目障りだったらしい。

 細かな動作から心の中を読める彼女にとっては、些細な動きも目につくのかもしれない。


 僕の後ろでフェリスが『やーいやーい、怒られてやんのー』とか笑っているけど、無視だ。

 赤川先生の説明に集中しよう。


「さて、この広いビオトープ内で『解答獲得サバイバル』に挑んでいただく皆さんに、お助けアイテムがあります。ここにくる前に、支給されたものがありますよね? ……そう、スマホと腕時計です」


 赤川先生は、僕たちが支給されたモノと同じ型のスマホを顔のすぐ横で弄ぶ。


「電源がつかなかったと思いますけど、今ロックを解除しました。確認してみてください」


 僕は、腰のホルダーからスマホを取り出す。

 なるほど、確かに電源が入るようになっている。


 通常のスマホのようなホーム画面はなく、三つのアイコンが縦に並んでいるだけのシンプルな画面が表示された。上から順に『リスト』『ベルノ』『メッセージ』だ。


とりあえず『リスト』をタップして開くと、ルービックキューブの一面みたいな3×3のマス目が出現した。


「皆さん開けましたか? では、一つずつ説明していきますね。まずは『リスト』。これは、ビオトープ内に隠されている解答のリストです。東西に三、南北に三、計九つに分かれたそれぞれのブロックに違う解答があり、マス目をタップすると、隠し場所のヒントが表示されます……あ、まだ見れないですよー。ふふふ、ゲームが始まってから、確認してくださいね」


 見事にやられた。

 タップしても「NO DATA」と出てきて閲覧できなかった。


「そして、左下のマスに注目してください。小さな光が点滅してますよね? これは、現在地です。つまり、今皆さんがいるこの場所は、南西ブロックということですね」


 なるほど、つまりこの『リスト』は大雑把なマップ機能も兼ねてるということか。

 今自分がどこにいるのかわかるのは、単純にすごく助かる。


「はい、赤川先生! 質問があります!」


 手を挙げたのは、またしても桜崎という女の子だった。


「はい、なんでしょうか?」

「解答は、隠し場所に一枚しかないんでしょうか?」

「はいそうです。なので、早い者勝ちということになりますね」


 ざわざわ。再び受験生がざわめく。

 と言うことは、たった九枚しかない解答を、六〇人もの受験生で奪い合うことになる。


「となると、誰かが先に見つけた場合、それを知る手段はあるのでしょうか?」


 桜崎の追加質問に、確かに、と思った。

 例えば誰かが先に解答を見つけていて、それを知らずに探し続けるのはすごく無駄だ。


「はい、もちろん。解答の入った封筒には、QRコードが付いています。ほら、こんな風に」


 言って赤川先生は、封筒の裏側を見せてくる。

 確かにそこには、細かいオセロ盤みたいな複雑な模様が印字されている。


「解答を入手した方がこのQRコードをスマホで読み込めば、『持ち主登録』がされます。登録が完了すると、リスト上の対応するブロックのマス目には『済』とマークが出ます。南西ブロックの解答で持ち主登録をすれば、画面の左下のマスが『済』となるわけですね。これで、どのブロックの解答が残っているか、一目瞭然というわけです」

「なるほど。ありがとうございました」

「あ、補足ですが、QRリーダーは『リスト』画面の右下にアイコンがあるので、そちらからカメラを起動して読み込んでくださいね。他に質問はありますか?」


 誰も手をあげない。

 大体の受験生は、手持ちのスマホを凝視して何かを操作している。多分、カメラの起動の仕方でも確認しているんだろう。


「では、次に『ベルノ』の説明に移ります。みなさん、これが一番気になっているんじゃないでしょうか? うふふ、これはですね……」


 赤川先生は、やけにもったいつけて、


「この試験で使用できる通貨――つまり、お金です」


 片手でOKサインを作り、それをひっくり返す。

 すごくいやらしい笑みだった。

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