第二章 何故か僕だけデスゲーム ⑤
万が一にも不正がないよう、スマホの所持は禁止。
宿泊用に用意してきていた物品や貴重品も金庫内に収納。
辛うじてゲームへの持ち込みを許されたのは、誰かが質問していたコンタクトレンズの洗浄キットと、メガネや髪留めなどの服飾品、持病などの常用薬だけだった。
僕はどれも持っていない。……変な悪魔はいるけど。
一メートル四方もないボックス内の密閉空間で、指定のジャージへ着替えていく。
『保護者の方に連絡をしたい人は今のうちに済ませてくださーい! 今からゲーム終了まで連絡は取れませんよー!』
赤川先生が、今更な注意点を叫んでいた。
僕が泊まることを恵理子さんは知っているし、特に何も言わなくていいだろう。向こうも特に連絡してこないと思うし。
鏡に映るジャージ姿の少年――僕は、見ていて可哀想になるくらい覇気がなかった。
ふと、耳をつまんで裏側を見る。
ムカデのような縫い痕が、真一文字に伸びていた。
「……はぁ」
僕は、支給品だという腕時計を装着し、拳銃をしまうホルスターみたいな腰のホルダーに、『受験戦争ゲーム』で使用するらしい専用のスマホを挿入する。
支給品はこれだけだ。ジャージに腕時計に電源のつかないスマホ。
これで五日間をどう過ごせと言うんだろう。まさか、自給自足なんてことにはならないと思うけど。もしそんなことになったら、二日だって生きていける自信がない。
……はぁ。不安だ。
いよいよ始まってしまう。
僕の、生死を賭けたゲームが。
「くそ、なんで僕だけデスゲームなんだよ……」
『いいじゃないか。キミだけ他の受験者と立ち位置が違う。文字通り命がけだ。窮鼠が猫を噛む姿、楽しみにしているよ』
『うるさい』
律儀に着替えの間は外に出ていた悪魔へ悪態を返し、ボックスの扉を開けて外に出る。
「お忘れ物はございませんか?」
直後、係の青年が、怖いほどにこやかな笑みで尋ねてきた。
「……はい、大丈夫です」
「では、こちらのボックスは施錠させていただきます。ゲーム終了後まで開けることはできませんので、ご了承ください」
言って、がちゃんと鍵をかけられる。
部屋を見渡すと、男子はほとんどが着替えを終えているみたいだった。女子はまばら。その中に、見覚えのある銀髪の少女もいた。彼女は、特に同級生はいないみたいで、一人で支給されたスマホや腕時計を舐めるように見回していた。
その後、男女に分かれてボディチェックを受けた。不正防止らしい。すごく厳重だ。
ボディチェックを終えた者から、待機室の外に泊まっていた大型バスに乗り込んでいく。
やがてバスは、校内のどこかへ向かって発車した。




