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名もなき草原に咲くⅡ  作者: ゼルダのりょーご
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6 書記のテンデ① 迷宮恋愛やけっぱち

書記のテンデ編①。


テンデは、オープンワールドの住人。


 魔物の討伐依頼を受けて生計を立てる仕事がある。

 俗に言う「冒険者」である。

 平和な街を一歩出ると討伐先は森林樹海に山岳、砂漠や火山地帯にも至る。

 洞窟や地底にまで渡り、果ては海底や神聖な空の大地までも存在するという。


 

「書類がよごれない様に場所をあけてあげてね」


「ああ、おやじ! 書記のテーブルをひとつ借りるぞ!」


「へい! 30Gになります」



 冒険目的の記録を取るのが書記。

 採取、探索、戦闘の三つがある。


 戦闘の場合。

 魔物が出現した場所。詳しい位置。屋内(フロア数)

 魔物の種類。特性、属性、強弱、経験種の有無。それぞれの個体数。

 戦闘に参加したパーティー名。(PT)

 その職業。(ジョブの組み合わせも)

 倒した手順。(企業秘密でも可)物理、魔法等。

 その日時。(天候も記す)


 戦闘(討伐)だけならこれぐらいだ。

 採取も探索も含むと情報量はさらに増え、相当なものになる。

 

 その戦いの詳細を記した報告書を作成し、ギルドにまとめて提出する。

 それも冒険者の仕事なのだ。



「おい、テンデ! 仕上がったのか?」


「やってる途中だよ。つーか、さっき始めたばかりじゃん。飯食っててよ」


「もう喰っちまったよ。戦士の吸引力を舐めてもらっちゃ困るぜ。ガハハ」


「ガギーはバキュームカーですか? 消化に良くないから食事はもっとゆっくり摂ったほうがいいよ」



 俺だって早く晩飯にありつきたい。

 料理屋の片隅のテーブル席で冒険パーティーの雑用を任されていた。

 ついでに日誌もつけている。

 いま俺を呼んだのが戦士のガギーだ。三十歳の男。

 注文した料理は大盛りステーキ。

 横目にガギーのテーブルに運ばれて来たアツアツの肉料理を見る。



「もう喰っちまった割には……」



 注文をし過ぎたのか、四皿あるうちの一皿にギガントボアの肉団子が手つかずで乗っかっていた。食べ盛りのガギーのことだ。夜食用にお持ち帰りでもするつもりだな。

「ぐるるるぅ……」見てるだけで口から漏れそうになったヨダレを飲み込んだら見っともなく腹が鳴り出した。

 おっと、集中しなきゃ。


 この面倒な記録に戸惑う者も少なくはない。

 討伐隊や高名な勇者PTも提出義務が課せられていた。

 いわゆる書記というやつだ。


 剣や鉄球を力任せにぶんまわす。

 知らない内に敵に当たり、知らない内に敵を倒すことがかなう。

 そんな脳筋連中には悩みの種であった。彼らにとって地獄の作業である。



「はやく仕上げて次の依頼の予約を取らなきゃな。提出が済まねえと次の仕事にありつけねえからな、しっかり頼むぜテンデ!」



 ガギーが店主に申し出て借りてくれたテーブル席について、紙面に向かう。

 すぐ隣の席にいる脳筋戦士のガギーにどんと肩を叩かれる。

 頼りにされているのは嬉しいことだ。それが俺の仕事だからな。

 


「テンデはよくやってくれてるよ。わたしたちテンデが来てくれなきゃ、今頃ノイローゼになって精神科通院を余儀なくされてたわよ。もっと労わってあげてよ」


「わりぃ、わりぃ。仕事が波に乗って来たもんで気が気じゃないんだ」


「食事も終えて退屈なら、控室で横になってなよガギー。こっちも慣れて来たんで、マミーだけいてくれれば情報の整理はできるからさ」


「そんなこと言ってオレの大活躍を記さなかったら承知しねえからな。ガハハ」


「ガギーの攻撃パターンはちゃんと頭に入れてあるから大丈夫だよ!」



 傍でいつもやさしく気遣ってくれるのが魔法使いのマミー、二十五の女。

 

 腕力もなければたいした学がある訳でもない。

 戦士系は腕力、魔法系は学力。

 どちらもてんでダメな俺は万年アルバイト。

 だからジョブはない。

 落ちこぼれ組の辛うじて文系が俺。テンデ、二十歳の男。

 とある勇者パーティーにダメもとで拾われた。

 以来バラ色の人生を送っていたのは、つい先日までのことだ。


 俺を雇っていたPTは今でこそ僧侶も勇者も入って来た有名チームだが。

 雇ってくれたのは戦士ガギー。

 当時はその戦士と魔法使いの二人だけだったが居心地はとても良かったんだ。


 ガギーは書記が大の苦手。

 その作業に追われさえしなければ持ち前の要領と運の良さで、瞬く間に出世街道へと上り詰められるのに、と嘆いていたそんな男だった。


 魔法使いの奴も、魔法を使いたい一心でその勉強に日夜打ち込んだと聞く。

 資格を取得した彼女も、ペンを執るのは時間の無駄だと感じる様になった。


 机の前にかじりついて資料と報告書の山を前に働きアリのように、安月給で。

 そんな文官のような仕事が大嫌いだ、だから冒険者を選んだのだと。

 というより自分だけ負担が大きいのに報酬の分け前が同じ。


 精神的な苦痛が指先から肩に掛けて現われた。

 指先から放たれる魔法弾の威力や精度に支障がでて、獲物を仕留め損なうのだ。


 雇ってくれたガギーも筆記ぐらいはできたが。

 でも計算は苦手だ。

 間違いだらけの報告書が上がれば、かえって手直しに余計な時間を取られた。

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