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名もなき草原に咲くⅡ  作者: ゼルダのりょーご
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36 これどうすんだろ


 どれも試すが同じ画面表示が出る。スライムは暫く周囲に目をやってみた。

 どうやら、兄妹の分のコントローラーを探していたようだ。


 だが隠されていることをついには悟り、結局、自分のコントローラーをコードでゲーム機に直結させるために、ソファーから離れざるを得なかったのだ。

 そして、しぶしぶとお目当てのゲームを起動したのだ。


 それなら電源を確保しながら充電も出来て、プレイが可能となる。


「あいつら……」と言い、その犯人についての心当たりが頭に浮かんだようだ。

 その口振りから兄妹がスライムのいつもの行動に先回りをして、先手を打っていたようである。このような場面は過去に照らして、いくらもあったのだろう。


 コードの長さは1.5mだ。テレビは60インチはある。


 テレビモニターから僅か1.5mしか離れられない。

 テレビは大画面のため、何だかやりづらそうである。



「うわぁ、目がチカチカするわぁ……やばいな。何と言っても鼻の頭が痛いし」



 そう言って掛けていた眼鏡を外して、鼻をさすって目をぎゅっと瞑った。

 眼鏡は軽量タイプのようだが。

 たしかに長期の使用は顔面に負担がかかる。


 さらに至近距離から大型テレビを見上げる為に、顔が上向きの姿勢だと耳と鼻の付け根にかかる負担は大きいものがある。


 一定時間置きに眼鏡を外し、目をつむる頻度が増していく。

 それにより、サクサク進められないストレスによって苛立ちが募り始めた。


 何が何でも導入された最新のコンテンツがしたくて、スライムは劣悪なプレイ環境でゲームをスタートさせ、続行するのだが。




 やがて──。



「首もだるくなって来たな……うおっ! ゴブリンの拠点が強化されている。数も増しているぞ……囲まれたら絶対やばいヤツだ」



 すっかりゲーム世界に没入して奮起している。

 ゲーム内で、ゴブリンの集団に囲まれたその時!

 またしても顔面が眼鏡の苦痛に苛まれる。



「ああ──、やられてしもた。ぐぬぬ……。眼鏡がうっとうしい……」



 長年、掛けているのならその感想は不自然。

 近年、眼鏡が必要になり掛け始めたのだろう。

 そして我慢の限界が来たのか。手元が狂ってあっけなくゲームオーバーに。

「リトライ」という項目にカーソルを合わせるも、画面を見据えながら一泊置いた。

 そして、スライムはなぜかコントローラーを手放した。


 おもむろに眼鏡を外し、その場に置いた。休憩をするかのように。

 喉が渇いて飲み物を欲したのか、キッチンスペースをチラッと見ると、



「──アレを試してみるか」



 彼はすぐさまリビングの端に行き、母親が使う鏡台へと向かった。

 リビングの全域はゲームのための遊び部屋と化している。

 化粧直しの鏡台はキッチンの傍へと追いやられたようにリビングルームの端に置いてあった。

 鏡台の引き出しを開け、そこに手を突っ込むと、



「目が悪いあいつらは、生意気にもコンタクトレンズ派だ。

 俺はずっと怖くて避けてきたが、あいつらがつけても平気なんだから…俺だってつけてやるさ」



 兄妹も同様に視力が弱く、コンタクトレンズを使っているようだ。

 確かに、目に入れるには少しの勇気がいるかもしれない。

 言葉通り、意を決してコンタクトレンズを拝借しようというのだな。

 安直な行動とも思えるが、そこはゲーム脳が優先してしまう、花の十七歳。



「俺のゲーム魂に火をつけてしまったな! いつまでもチキンの俺だと思うなよ、へんっ! ざまぁ3倍返しだ!」



 勇気を出して、コンタクトレンズに手を伸ばす。

 キャップを外し、仲を覗くと。

 フィルム状のレンズが塊で入っていた。


 レンズの塊というのは、ソフトレンズのゆえに一枚一枚は極薄で出来ている。

 その極薄の100枚のセットが入っていたのだが。


 スライムはレンズを使用するのは生まれて初めてである。

 中に指を入れて取り出そうとした。

 手付きがぎこちない。


 レンズはデリケートなものだとは聞いて知っている。


 薄皮を剥がす様に、いかに一枚を素早く取り出すかの術もまだ知らないままだ。

 ベタベタと素手でもたついていては不衛生だ。



「これ、どうすんだろ?」


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