表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき草原に咲くⅡ  作者: ゼルダのりょーご
35/47

35 猿飛スライムの日常


 東京都内、一軒家。

 猿飛家の嫡子スライムはその日、留守番をしていた。

 八人という多家族で、スライムの他七名。

 彼には家族がいっぱい居た。


 父母とその長兄でもあるスライム。下に合わせて六人の弟、妹がいた。

 スライムは早起きが超苦手な十七歳、男子。

 ゴールデンウイークに家族そろってショッピングモールへドライブ。

 大きめのライトバンの車内に咲く一家団らんの


 そこにスライムの姿はない。

 その予定からスライムだけが外されて、家に置いて行かれたのだ。

 


「──大丈夫、食べてるから。ゆっくり楽しんできてよ……うんうん、じゃあね」



 リビングで寛ぎながら、彼は耳元にスマホを当てて気楽に応対している。

 もう昼過だった。

 ご飯は用意しておいたからしっかりと食べて……。

 恐らく、そう言った内容の母親からの電話だろう。



「ショッピングなんて、人出の多いGWに行けばドツボでしょ。それに今日は、あおぬま堂から神ゲーのアプデがあるんだ。買い物なんか、ついて行ってたまるか」



 つまり計画的に寝坊をしたわけだ。



『ゲームやりたさに一人で留守番をする』を選択したのだ。

 


 通話を終え、電話を切った。

 彼のニヤけた顔がそこに浮かんでいる筈だが。



「ゆうべの内に大型アプデは完了している。それなのに……こっちのやつもか」



 整理整頓がなされて清潔感に満ちた四十帖のリビングルーム。

 ソファー数個、テーブル数個。

 大画面テレビ数台がリビングに設置されている。

 動線もしっかりと保たれた、寛ぎ空間のソファーの上で彼が呟く。


 テレビボードの収納スペース。

 最新のゲーム機や音響機器が見える。

 壁際に並ぶ机には、PCとモニターも複数見て取れた。

 それぞれにネット環境も整備されているようだ。


 どうやら猿飛家は皆、同じ方向性の趣味があるようだ。

 ゲーマーズファミリーといったところだ。

 動画配信や実況の為のマイク、チェア、デスク。

 その他の機材も人数分の用意があるように見受けられた。


 座っていたソファーの正面、3メートル先に鎮座する大画面テレビ。

 両手の中には、ゲームのコントローラを握りしめている。


 「ちっ……なんでだよ!」



 彼は、舌打ちとともにソファーから腰をおろして前方へ身をせり出した。

 テレビにでかでかと映し出されるゲームのタイトル画面。

 だが──。

 ゲームを開始する彼の表情は、どうにも浮かない。


 兄妹を出し抜くように、家族サービスを蹴ってまで手に入れた一人占めの空間。

 苦虫を嚙み潰したような顔で、舌打ちをする猿飛スライムがいた。

 テーブルよりも前方、テレビのすぐ手前に敷かれたラグの上に這い出して、胡坐あぐらをかいて画面を見上げた。



「ソファーに座ってやりたかったんだよ、俺は。──それなのに」



 ゲーム機から伸びているコードをギリギリまで手前に手繰り寄せて、



「コントローラーのバッテリーもなくなっている。充電も抜かりなくやった筈だ。くっそ……、あいつら」



 ゲーマーの兄妹を出し抜いて先に一人で楽しもうとした矢先、コントローラーの電池が限界まで減らされていることに気づく。


 予備の物も含めてだ。『コントローラのバッテリーが少なくなっています』と。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ