30 楽しき誘い
ガブメロンの大量収穫を目指して森に入った。
経験者の彼らに収穫率の高い狩場まで案内された。
「このあたりなら100でも200でも収穫できそうよね!」
「いまのうちならゴブリンの気配もなさそうだし。手分けしましょう」
「この辺はbポイントと呼ばれている狩場だ。もっと奥に行けばaやsポイントがあるんだが、ゴブリンの巣窟が傍にあって難易度が上がるから採取だけならbでよいだろう」
採取における難易度を示すエリアのことをそう呼称するようだ。
魔物に遭遇しやすく戦闘率が上がり、味方の致傷率も増加する。
bポイントがまったく安全というわけでもないが。
周囲を視認したところ敵の潜む気配は今のところ感じられない。
「1個あたり200Gで売れるし。200Gなら『上等おむすび』2個買えるぞ!」
「果物にはそんなに価値があったんだな」
「栄養が豊富だから、薬の原料にもなるし結構な任務の数がでているわよ」
「美容にもとってもいいのよ!」
「わりと幼い頃から収穫で生きて来たから、取り方は心得ている見ててくれ!」
一個ずつ手で収穫していたのでは効率が悪いのだ。
こういうのは木にタックルをかませば大量に落ちてくるんだ。
一本の木にタックルをかました反動でとなりの木にも飛び掛かる。
時には枝葉をチョップしたり、蹴り飛んだりしておサルのように軽業で。
収穫時は勝手に落ちて来ることもあるから、揺らすのが一番効果的なのだ。
見る見るうちに、100,200と落ちて転がった。
「来て間もないというのにこの有様は……すごい!」
「リクルの身のこなしは人間離れしている。200は拾えるぞ」
「さすがは獣人ね。あら妖精さんだったかしら」
「俺は40でいいから、残りは3人で適当に分けてくれ」
「一人頭、50は取得できるぅ。短時間でこんなに収穫したのは初めてだわ!」
3人は驚愕しながらも必死にガブメロンの回収に勤しんだ。
「換金したら1万になる。ぼろ儲けだ!」
「俺はぼったくられて来たせいで収穫技に磨きをかけることが出来たわけだ」
「地道でまじめな頑張りがこの結果につながったのね、偉いわ!」
「ねえ! しばらく私たちと組まない? 戦闘のサポなら任せて。リクルも効率よく強く成れるわよ!」
しばらく【ゴールドピース】の一員にならないかという誘いを受けた。
「悪い話じゃないけど、俺があっという間に強くなれば初心者恩恵は終わるよ。それでも組んでくれるのか?」
「俺たちはそれを目当てに君に声をかけたわけじゃない。気にしなくてもいい。純粋に仲間をひとりふやしたかっただけだ。戦士をやる奴は強く成ると取り分を多く要求するようになって、前の奴とも別れたのさ」
「リクルくんとなら公平な契約で楽しくやって行けそうだと思ったの!」
いろいろと親切にしてもらい、勉強もさせてもらったことだし受けて見るか。
ツバクロ相手の地味な戦闘は飽きて来たからな。
「よし、その誘い引き受けたよ! 楽しく稼ごうぜ!」
「やったぁ! これで決まりよね。でもこの量の果物を抱えているとゴブリンどもが素直に森を抜けさせてはくれないでしょうけどね」
「バフと回復はリーダーに任せて。ゴブは魔法攻撃より素早くノドを掻っ切るのが有効だから魔法使いには後方から風魔法で奴らの目潰しに専念してもらう作戦にでるのがいいだろう!」
俺もゴブリンを相手にしてきたから分かる。
前衛は俺と、作戦を立てた盗賊の彼だな。
ちょうど短剣を装備している。
長剣だったら剣を逆手に構えて柄で殴り突くのが有効だ。
その旨を伝えると。
「よし、リクルと俺が蹴散らしていく。荷物はその度、地に置くから奪われない様に目潰しの風魔法は荷物に注意を払うんだ。マリ、よろしくな!」
戦法は盗賊が主導しているようだ。
女僧侶はPTのリーダーだが、きっと昔から冒険者をやって居るのだな。
昔のPTの僧侶は書記を担当していたらしい。
魔道具によって自動化になったから皆が楽しくLv上げに参加できる。
盗賊が魔法使いの名を呼んだ。
「他の2人の名もまだ聞いてなかったな?」
「私は、ニア。二十歳、よろしくね!」
「俺は大盗賊をめざしてる、ガクトだ。皆二十歳だ」
「そうか俺は40歳のおっさんだ……」
「やだリクルったらそんな可愛らしい容姿して、おっさんとか面白い妖精ね!」
そうこうしていると、噂のゴブリンの気配が近づいてきた。
皆の目は細くなり表情が緊張感で引き締まっていく。




