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名もなき草原に咲くⅡ  作者: ゼルダのりょーご
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24 ギルド登録②


 勇者達からおおむね聞かされた。

 以前は紙の台帳が存在したが今は魔導のシステムが管理しているらしいことを。


 俺は、素直にポッポルン・ガガーだと言えない現実がある。

 人間達は竜神を神だという解釈を示しているというのだ。

 そうなると皆に説明して歩くわけにはいかないのでな。

 むしろ伏せなければ自由に冒険などできないという観点からはすでに助言を得ている。


 これはシンピ村で会った賢者の智慧なのだが、妖精の一種で『ポポクロン』と名乗ったらどうかとの提案があった。


 実質それに近しい名の妖精がけっこういるらしい。

 俺の毛並みが黒いことからも黒を意味する、「クロン」を付けるのがよいと。

 それで通用するだろうと推してくれていたのだ。

 


「年齢は40だ。人間でいうところのおっさんという奴だ。種族は妖精の一種で『ポポクロン』というのだが……」


「おっさんは人間だけのステータスですから可愛いキミが気にすることはないのよ! はい、ポポクロンですね。……なんというキュンキュン種族なんでしょう」



 ピピピ……ピピィ。

 なにやら店屋に置いてあるレジのような端末で照合してくれている。

 照合……どうか上手くいってくれ。



「はい、ございました。画像がありませんが妖精は希少なのでよいです。ではまず職種(ジョブ)を決めてくださいませんか?」


「では戦士でお願いします。魔力はあまりないみたいなので」


「戦士ですか。どこかで討伐などの訓練を積まれたり、戦いの経験があったりしますか?」


「故郷のヘンピ村で討伐依頼の手伝いを二十年ほどしてきたが、どうかな?」



 冒険者登録をするぐらいなら、この経歴で充分なはずだと聞いているが。


 どうしたのだ?

 彼女は険しい表情を見せて来た。



「そちらで冒険者に成られていないのは何故ですか?」


「辺境の村では討伐隊を結成していて、代表者が依頼を受けてから出動するのが決まりだったのだ。そして皆で力を合わせて楽しく任務に当たっていたんだ」



 彼女は、俺の経験はギルドでのルールとは大きく異なると言った。

 冒険者とは極小人数で依頼をガツガツと受けこなすものだと。



「戦士は近接攻撃が主流になるので武器もかなり腕力を必要としますし、武器が火力として入らないときはほぼ殴り合いになるジョブですよ。リクル様はナイフなんかを装備して、まずは採取の依頼を受けてその道すがら弱い敵でレベル上げをなさるのがよろしいかと思います……」



 うむ。

 大変勉強になる案内で、とても親切である。


 まぁ冒険者としては初心者だからな。

 だがそれは、俺には荷が重すぎて向かないジョブだと言っているのか。

 だからどの道、採取などしか受けられないなら僧侶あたりを目指せと言いたいのだな。


 これは四十のおっさんということが災いしてはいまいか。


 でも妖精といえば、回復のイメージがあるからな。

 だけど俺は戦士タイプなのだ。

 うまく説明を加えられないが、それで行きたいと頼んでみた。



「わかりました。強いご希望であるなら受理します。ではパーティーを組まれて見るのはいかがですか?」


「パーティーを組む……なるほど。仲間がいれば助け合えるからな。その線でいってみるよ、ありがとう」



 まずは経験を積んで強くなろう。

 レベルを上げる準備段階だというのだろう。



「こちらでPTになれそうな方を手配して差し上げたいのですが、いまは生憎見つかりません。最後に【魔力帯】の耐性造りのため血清を飲んでくださいね」


 

 PTの件を彼女は申し訳なさそうにそう言った。

 そして血清ドリンクというものを手渡され飲まされた。

 果物ジュースの味がした。

 身体に異常はないかと言われ、魔道具による体温などの検査計測を受けた。

 べつに異常はなかった。

 そこはなんなくクリアした。健康には自信があったのだ。


 ナイフの装備品ならすでに荷物にあったのでそれを使う。

 俺は街の外れに出て、その辺で戦っている冒険者を誘うからいいよ、と笑った。



「近場ならランクFの採取依頼があります。そばの森林で採れる果物のガブメロンを10個。という依頼ですがやって見ますか?」


「もちろんだ。始めたばかりなのに依頼をもらえるなんてラッキーだよ」


「ガブメロンの周辺には稀にゴブリンがうろついています。無理はしないでね」



 モフったお陰か、やたらとやさしい声援をくれるのだ。

 悪い気はしないよ。



「それでは最後にこちらがギルドカードになります。冒険者登録おめでとう!」



 受付嬢は猶も屈託のない笑顔で見送ってくれた。

 おまけに回復薬のポーションを20回分もプレゼントしてもらった。

 ポーションは指の爪ほどの小さなチップで、このカードに入力するみたいだ。

 ギルドカードからピピピィと電子音がした。

 宿泊20回分なんて、もらっていいのかよ。

 喜ばしいことだ。


 周辺は初心者レベルの魔物しかいないことは先刻承知なのだ。

 これで、まぁなんとかなるだろう。


 俺は板チョコ並みに分厚いギルドカードを受け取って、ロジャスミッドの北口からを街を出ていく。


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