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「話、ですか?」マサムネは呆れ顔で見返す。「それにしては、ずいぶんと穏やかではない感じがしますが」

「最初だけさ。それより、話についてなんだが……単当直に言おう。マサムネ、俺たちの仲間になれ」

「……拒否権は?」

「したいなら、どうぞ」


 男はマサムネを取り囲む組員たちを見せつけるように手を広げた。拒否したら、撃たれる様相だ。


(それってつまり、拒否権が無いってことじゃん)


 マサムネは渋い顔になる。


「まぁ、そんなに嫌がるな。この話はお前にとっても悪い話じゃない。生活基盤が無いお前に、生活するための場所を与えてやるのだから。どうだ? 悪くないだろう?」

「……衣食住が保障されるってことですか?」

「そうだ。まぁ、もちろん。タダではないがな。仕事はしてもらう」

「どんな仕事ですか?」

「そうだなぁ。最初は雑用が多くなってしまうだろう」

「雑用……」


 ギャングの裏稼業は手伝いたくないので、雑用ならマシに思えた。


(いや、でも、それも時間の問題か。いつかは阿漕なことをやらされるんだろうな。というか、そもそも、何で俺なんだ?)


 マサムネには自分が選ばれた理由がわからなかった。


「一つ聞きたいんですけど、何で俺なんですか?」

「使えそうだから」

「それほど、使える人間ではありませんよ」

「それを決めるのはお前じゃない」


 男は自信ありげに口角を上げた。


(面倒な連中に評価されてしまった)


 マサムネはため息を吐きたくなるが、グッと堪える。


「さぁ、どうする?」


 男だけではなく、他の組員からも圧を感じた。このまま黙っていたら、彼らに撃たれてしまいそうだ。


(まぁ、雑用をやりながら、頃合いを見て、離れるのが良さそうだな)


 それが今の自分にとって、最善の方法である気がしたので、マサムネは頷く。


「わかりました。なら、仲間にならせてください」

「よし。なら、オヤジに紹介してやる」

 ――その日の夜。マサムネは組長と盃を交わし、正式な組員となった。そのまま宴に参加し、他の組員たちとも話す。酒の場は好きではなかったが、久しぶりのごちそうを味わうため、参加した。久々の料理を楽しみながら、マサムネは他の組員とも交流を深める。

 そして、思った。


(案外、悪い人たちではないのかも)


 地獄組の組員たちは、多少の面倒くささはあるものの、情に厚い感じがあった。彼らは自分たちを家族と呼び、血縁を超えた絆でつながっていて、マサムネには彼らの関係性が眩しく見えた。


「俺たちには夢がある」と組長は語った。「今はまだ、200人くらいしかいないが、もっと大きくなって、最強のギャングになる。そのためにマサムネ。お前も俺たちに力を貸してくれ!」

急に名前を呼ばれたので、マサムネは「あ、はい」と頷く。

「そうか。頼んだぞ!」


 組長たちの期待を込めたまなざしに戸惑いながら、彼らと一緒に生活するのも悪くないと思い始めた。


 しかしマサムネは、すぐに後悔する。

 彼らは、マサムネにとって、関わるべき相手ではなかった――。

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