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10話.[優しいふたりだ]

「一葉、さっき意地悪したでしょ」

「ふぇ?」

「可愛くとぼけても無駄だよ」


 兄なんだから一葉の考えていることぐらい簡単に分かる。

 あれはわざとそうしたんだ、揶揄したかったところもあるんだろうけど。


「だってにーの近くにいる異性は私だけでいいから」

「不安にならなくてもなんににもならないよ」

「じゃあにーがいっぱい相手をしてくれたらちゃんと相手をする」

「するよ、だって僕らは家族で、それに恋人同士でもあるんだからね」


 一葉は僕がこれまで延々非モテだったことを思い出した方がいい。

 それに片岡さんに限っては数秒もこちらに意識なんか向けてくれなかったんだから。


「ほら、そんな顔をしないの」

「……隠すのに苦労してる」

「そんな態度でいなくても僕の一番は一葉だよ」

「本当に? 由美先生に誘惑されてない?」


 されてないよ、それはどこの世界線の僕だ。

 血の繋がった妹にキスをするような人間がそんなわけがないじゃないか。

 中西先生に興味があるのなら相手が教師だろうと積極的にアピールしている。

 妹が相手でもこんな態度でいられているんだからね、教師に恋をすることぐらい余裕だ。


「それに誘惑してきたのは一葉でしょ? 好きな人を抱きしめればもっといいよとか言ってきてさ、その後になんかちゅーしたいとか言ってくるし」

「もう我慢できなかった、にーは私のだもん」

「分かったからこの話はもう終わりね、一葉の彼氏が僕って時点で答えが出ているでしょ」


 片岡さんに怖い顔をするのはやめてあげてほしい。

 隠すのに苦労していると言っているように、先程ももろに出ていたから。

 光がスムーズに連れて行ってくれたからよかったものの、という感じだ。


「一葉はまだ雨が苦手なの?」

「え? うん、髪の毛がぼさぼさになるし、濡れるから」

「そっか」


 そうか、髪の毛を伸ばしている人にとってはそうだよなあ。

 下手をすれば濡れる可能性もあるし、濡れたらテンションがだだ下がるのは確定していると。


「なんでいきなり変えたの?」

「いいでしょ」

「む」

「はいそんな顔をしない、ほら」

「……抱きしめさせておけばいいとか考えているよね」


 事実そうだからなにも言わなかった。

 いつものように頭を撫でて更になにも言えなくさせる。

 ただまあ、いつまでもこうしているわけにもいかないから課題をやったりもした。


「……まあいいや、にーがいてくれるなら」

「うん、僕はいるよ、離れることはないよ」

「破ったら殺して私も死ぬから」

「怖い怖い、じゃあ余計にいてあげないとね」


 これからも仲よく過ごしていこう。

 光や片岡さんとも忘れずに仲よくをしていくんだ。

 不満をぶつけられるかもしれないけど来てくれる優しいふたりだから。

 だからなんと言われようとそれだけは変えるつもりはなかったのだった。

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