自己の認識
統合性自己同一症。私達はそう呼んでいる。
自己の同一性が薄れ、思考や性格が分かれてしまう。
そんなところでしょう。
けれど、趣味嗜好やアイデンティティ、記憶は一緒なんですって。
だから統合性と呼んでいるの。
何しろ誰に聞いてもどんなに調べても、わからなかったんだもの。
だから私達は最初の発症者だってね。
実験のためにこの病室で毎日毎日、カウセリングのようなものをする。
退屈で退屈だわ。生きている感じがしない。
でも、陽に当たると生きている感じがするの。
だからいつも屋上いるの。
まあ、これは私の方の考え方だけどね。
「……」
嘲笑うような顔で、真奈が言った。
そこまで話を聞いた爽は黙り込む。
「私はわたし。貴方はあなたよ?わたしはそう言いたかったのよ」
そう口に出す。
「……で…………に……」
「……?」
「いえ。そうですね、分かりました」
「なにが?」
真奈がそう問いかける。
すると爽は真剣な顔で言ってきた。
「貴方ならば……僕たちを救えますか?」
「え……?」
「いえ……やはり」
言いよどむ。
「救います。私は、わたしはあなた達を救ってみせます!」
間が空く。
「そう……ですか。期待してますよ」
目を瞑り、そして『それ』はもとに戻った。
「……陽、さん?」
「なんだ?」
声をかけると、頭を上げ声を返した。
「いえ……その……」
「……?」
何かを言い淀む真奈に、陽は首を傾げる。
「……今さっき、違うあなたと話しました」
「それは……どういうことだ?」
言われた内容を飲み込めない陽。
「多重人格なんですよね。記憶がなくなるんですよね」
「それはつまり……」
陽は察したように言葉を漏らす。
「はい、思っているとおりだと思います」
「そう、か……」
真奈はさっき起こったことや、自分自身のことを陽に伝えた。
「そうだったんだな……気づかなくてすまない」
「いえ……気づかなくて当然です……」
落ち込む陽にフォローするように言葉をかけた。
「ありがとう……。君はこれからどうしたいんだ?」
感謝をして真奈に聞く。
「わたしはあなたを救いたいです。だから……」
「そう……だな、わかった。俺を、救ってくれ。真奈」
初めて真奈の名前を呼んだ陽。
年下の女の子に助けを求める。
「はいっ! もちろんです!」
いつも無表情な真奈はとびっきりの笑顔で言った。
この瞬間、二人の繋がりは深くなったのだ。




