断片
「断、片……?」
真奈は口にした。
爽が言った言葉を、真奈は理解できない。
「そう、断片だよ。所謂、人格みたいなものかな」
「それって……」
「多重人格。君が知ってる病気さ」
真奈は驚いた顔をする。
もしかして、と思った現象が目の前で起きたのだから。
「……」
声が出ない。口を閉ざす真奈。
「この子はね、とても不憫な子なんだ」
「不憫な子?」
爽が言った言葉に、真奈は聞き返した。
「そう、僕も詳しくは知らないけどね」
「なんで……」
声が漏れる。
「なんでもなにもないさ。言っただろう?僕たちは断片にすぎないんだから」
「……」
真奈は再度、口を閉ざした。
「そう、僕たちは断片。ばらばらで、まとまりのない、ただの切れはしさ」
「そんなこと……」
「ん……?」
爽の言い様に真奈は言う。
「そんなこと、ない……!」
「……なにがさ?」
「あなた達は……!切れはし、なんかじゃ、ない!」
叫ぶような声で言う。
「君は僕たちを何も知らないのに。どうしてそんなことが言えるんだい?」
そんなことを言われても、真奈は言い続ける。
「私は、あなた達を知りません。だけど!少ない時間で竜と爽、二人と接して分かることはあります!」
「それは……」
「二人とも、辛い記憶があるんですよね?目を見れば分かります」
「……」
目を見ればわかる、と言われ爽は言葉に詰まった。
「たしかに、最初はばらばらでまとまりのないものだったかも知れない。でも……!今の二人は……ばらばらなものじゃ、ないです!」
泣きそうな顔で、泣きそうな声で、真奈は言った。
「……」
「……」
「……」
数分の沈黙。
「ごめんなさい……。大きな声を出しちゃって……」
少し小さい声で言った真奈。
「……や、君の……とお…………もし……ない」
爽はうつむき、真奈には聞こえないような小さな声でつぶやいた。
「え……?」
「何でもないさ」
ところで、と話を変える爽。
「はい」
「君は一体、誰なんだ?」
太陽が高くなり、窓から陽射しが流れ込む。
開いた窓から、風でカーテンが靡いた。
「え?私は」
「いや……、君じゃない。『キミ』だよ」
真奈の雰囲気が変わる。
「何で、分かったの?」
少し低い声で、口に出す。
「僅かな違和感だよ。それに気付いただけさ」
「そう……」
「キミは……。いや、君たちも多重人格なのかい?」
問いかける爽に、真奈は笑う。
「私は多重人格ではないよ。でもまあ、似たようなモノかな?」
「それは……、どういうことだい?」
「私は私。多重人格とは違う点が多いよ。記憶は共有されているし、自己認識もできる。でも、性格や思考の仕方は違うかな」




