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差し入れ




 そして十一月末の休日。

 家を出て車に乗り、病院の駐車場に行く。


 いつもどおりに病院の屋上へ行き、ベンチに座る陽。

 手に持っていたのは、真奈へ持ってきた果物類の差し入れ。


 緊張していたのか、屋上についたのは約束の時間より少し早い時間だった。

 慣れた仕草でタバコを手に取り、火を点ける。


「ふぅ……ちょっと早かったかな」


 陽は一息つきながら、口に出した。

 一通りタバコを吸って、いつも持ち歩いている携帯用の灰皿に入れる。


「すみません。遅れました?」


 後ろからドアが開く音がして、少し小走りでベンチに近寄る。


「いや。俺が少し早く来すぎたんだ、悪いな」


 言いながらベンチから立ち上がる陽。

 その姿はまるで付き合いたての彼氏のようで、真奈は少しかっこよく見えたようだった。


「あ、いえいえ。大丈夫ならいいんです」


 そう言って手を胸の前であわあわさせる。


「そうか?」


「はい。では、私の病室に行きましょうか」


「あ、ああ」


 やはり緊張しているのか、何だかそわそわしている陽。

 前を歩く真奈はその様子に気づいてないようだった。


 屋上から階段で降りる二人。

 パタパタ、とスリッパの音が妙に階段に響く。


 階段を降りて廊下を歩く。

 休日だからなのか、少し人が多い。知人の見舞いにでも来ているのだろうか。


 前を歩く真奈に着いていく陽。

 スリッパの音と胸から聞こえる鼓動の音がうるさく感じる。


「ここです」


 真奈は足を止めて、手を向ける。

 向けた先には病室があった。


「失礼します」


 そう言って病室に入る陽と、続くように入っていく真奈。


「どうぞ、座ってください」


 病室の中にあるイスを取り出し陽に促す。

 陽が座ったのを見ると、真奈はベッドに座った。


「あ、そういや」


 思い出したように声に出す陽。


「なんですか?」


「これ、差し入れ。忘れてた」


 ずっと右手に持っていた果物類を渡す。

 真奈はベッド脇の机にそれを置いた。


「あ……、ありがとうございます」


 少し嬉しそうに笑う真奈。

 いつもの表情のない顔から、真奈は微笑んだ顔を見せる。

 そんな真奈から、陽は目を離せない。


「あ、えと」


「どうしました?」


 表情のない顔に戻り、首を傾げる真奈。


「いや、なんでもない」


「そうですか?」


 それから二人は話し始める。

 暇をつぶすために、いつもの感じでどうでもいい話を。


 『それ』が来たのは昼前だった。




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