涙の証
「なんで……」
口に出す真奈。
ここは真奈の病室。
屋上から早足で病室に帰った真奈はベッドに座っていた。
「なんであんなこと……」
恥ずかしげに言う真奈。
陽の話を聞いて、どこか自分を重ねてしまったのだろうか?
ベッドに寝転がり、布団を被って身悶える。
「頭とか……背中とか……。撫でられた……」
そう言って身悶えるのをやめる。
そして、少しの間が空いて。
「俺がいるから、かぁ……。はあ……」
その言葉を思い出し、真奈は考える。
『私は独りでいいのに。』
少し憂鬱な気分になる真奈。
被っていた布団をどけてベッドから立つ。
窓が開いて風でなびくカーテンに近づき、外を眺める。
夕陽の光を眩しく感じ、目を細めたた。
ひとしきり外を眺めたあと、窓を閉めてカーテンを閉める。
そして、いつものように退屈な病室で何をするでもなくベッドに座った。
ベッド脇にある机の引き出しを覗いて、中にあるものを手に取った。
それは数枚の写真だった。
家族の写真、親友の写真。
今はもう、会うことのない人たちの写真。
真奈の家族は中学二年生のときに他界してしまった。
ショックで自失茫然になった真奈を支えてくれた親友。
その親友もいじめで自殺してしまった。
自分はいじめで苦しいのに、どうして私を助けてくれたのか。
そんなことを思う真奈。
真奈は分からなかった。
『どうして私を、どうして……』
写真にポタポタと落ちる雫。
雫を拭いて写真を戻し、涙を誤魔化すようにベッドに眠る。
「おやすみなさい」
誰に言うでもなく、習慣として出る言葉。
このまま永眠できればいいのに。
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ベンチに座り、自動販売機で買った缶コーヒーを飲む陽。
「はぁ……」
ため息が出た。
幸せが逃げるため息を。
幸せなんて人それぞれ違うものなのに。
「俺の幸せってなんなんだ……」
医者に言われた言葉。
陽は多重人格だと言われる病気。
何も分からない、そんな不安が胸に押し寄せた。
記憶が曖昧な陽は考える。
陽と手を繋ぐ両親、家でご飯を一緒に食べながら学校のことを話す陽。
運動会でお父さんとやった二人三脚。
お母さんが作ってくれたお弁当。
雨の日に迎えに来てくれたお母さん。
晴れの日の休日に遊んでくれたお父さん。
その全部の出来事、思い出をすべて嘘だと言われたような。
ガツン、と頭を叩かれたようだった。
「寂しい……。全部ニセモノなのかな」
ごくん、と。缶コーヒーを飲み干す陽。
夕陽で顔が照らされる。その瞳はどこか潤んでいた。
ベンチを立ち、自販機の横にあるゴミ箱に缶を捨てた。
屋上のドアをくぐり階段を降りていく。
「家に帰らないと」
車に乗り込み、エンジンをかける。
家へと車を走らせた。




