ヘッドホン
真奈と竜は病院の階段を登っていく。
「竜が好きなことって何?」
隣り合う竜に目を向ける真奈。
「んーとね、音楽かな?」
それを聞いた真奈はなにか思いついた様子。
「そうなんだ。あ、屋上に着いたね。先に入ってて」
「わかったー」
階段を登り終わり屋上のドアの前で真奈は止まった。
竜を先に促し、ドアの前にあった電話でどこかへかける。
「わあ、ひろーい」
先に入っていた竜は声を上げていた。
真奈は遅れてドアを開ける。
「でしょう?」
驚いていた竜に向けて真奈は笑う。
「うん! 何するー?」
入ってきた真奈に竜は振り返って言った。
「ん……、ちょっと待ってね。いいもの持ってくるから」
「いいもの?」
真奈が言ったその言葉に首を傾げる竜。
「ええ、いいものよ。音楽、好きなんでしょ?」
先程聞いた竜の好きなもの。
真奈は確認するように質問した。
「うん! 聞くと落ち着くから」
「……来たわね」
ふと、真奈がドアの方を向く。
目線の先、階段を登る音が聞こえた。
そのまま真奈はドアを開けて何かを受け取った。
「なに? それ?」
「どうぞ、ヘッドホンだよ」
真奈が受け取ったものはヘッドホンだった。
首を傾げる竜に向けて渡す。
「いいの?」
竜はヘッドホンを手に持ち、真奈に聞いた。
「ええ、自分のスマホで音楽を聞きなさい」
「わーい! ありがとー!」
ヘッドホンを空へ掲げ、嬉しそうに声を上げる竜。
そんな竜をいつも座っているベンチに座らせた。
そして、ポケットに入れていたスマホを取り出しヘッドホンを刺す。
「ふんふんふーん♪」
鼻歌を歌いながらリズムを取る竜に、真奈は見守るように眺めていた。
暗い部屋の中、ある女性が一人で誰かと喋っていた。
「そう……」
「…………?」
椅子に座って机に肘をついて、薄く四角い板を耳に当てている。
「そうよね、その通りだよ」
「………………!…………?」
そう、それはスマホ。
「まあ、それもあるかも知れないわね」
「…………、…………」
男っぽく喋る女性はスマホに喋りかける。
「うん、わかったよ」
女性の髪はボサボサで、隈が酷かった。
「…………、………………」
「ありがと……、ボクは平気だから」
その女性を見守るように、部屋の隅で座っている男の子。
そんな男の子を流し見て、スマホをきった女性。
どこか怯えている男の子に向けて、女性は話しかけた。
「ほら、おいで。怖かったでしょ?」
その言葉で男の子は女性に抱きつく。
「よしよし、そうだ。ママね、ヘッドホン買ってきたの。〇〇にあげる。また、怖くなったらヘッドホンを被るんだよ?」
女性は机に置いていたヘッドホンを男の子に手渡した。
これは、いつの記憶だろう……。




