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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
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82話 愛は傷つかないが、プライドは傷つく

「そうかな?あの時も、今も、僕はひとつひとつの感情に名前をつけて分析したり、理由にしたりするつもりはない」



【でも、そうやって、人は逃げる理由を探すだろ?】


「無駄な事だな。どの感情も僕であることには違いない。ひとつの理由で、ひとつの感情で決められることなんてないよ。人は沢山の感情で作られているのだから」

「まあ、そうだな、そう言われてみれば、そうかも知れない。たしかに、今の俺は、ひとつの気持ちで成り立っていない」

「それと同じで、一見、特別に幸せそうに見えた夏梅が、実はそうでもないと言う話だ。夏梅もまた、孤独だったから、親の言う通りに僕に従順であろうとしたのだろ。蒲もそういう意味では同じだった。蒲の母親は一緒にいたが、別の意味で、孤独だった。僕から見ていると、親は、蒲を言葉で傷つける事しかできず、その傷を夏梅にぶつけていたような気がする。本人がどう思っているかわからないが…」



【そこまで話すと】


 僕は、天十郎に、深く頭を下げてから、あらためて顔をみて

「だから僕は、天十郎、君に感謝している。少なくても、蒲に痛めつけられ、男に追いかけまわされる人生よりも、母親としての人生の方が良い。お前たちが夏梅を捨てたとしても、子供だけは残るだろ?」


 天十郎は急に頭を下げた僕に驚き、なんと答えるかやっと探し出したように、

「いやそれは…。どうかな、いくらでも険悪な親子は、いるからな」

「夏梅とお前が、あれだけ愛情をかけているなら、大丈夫だろ?」

「まあ、そうだが、確かに可愛いよな」

「求めても、得られない幸せを追って地獄に落ちるよりも。幸福でも不幸でもない人生で、いいのではないのか?俺だって、寝ている時間しか、一緒にいなかった両親でも、愛されているのはわかった。それだけで子供は親を捨てないさ。それに、お前が来てから夏梅が変わった。嫌だと、声に出すことを覚え、今、自分に足りないものを、偽りでも足すことを覚えた」


「確かに、めちゃくちゃな女だ。お前がいるから俺の理性が保たれない」

「やはりそこが問題なのか?その話なら、着物のモデルで、全身に火傷や湿疹が出た事があった頃からかな?お前は夏梅を保護しだしたよな?夏梅を甚振ろうとしている、蒲の本性に気づいた瞬間に、お前は臆病になって隙だらけだった。だから、あの時にお前に入れた」



【お?スーツがずぶ濡れになった時か?】


 僕は思い出すように頷いた。天十郎もあの時の事を思い出しているだろう。

「僕が入ったことで、夏梅もお前も二人共、混乱しているようだけど、お前自身が夏梅を欲しがっている。そして夏梅もまた同じだよ。だから、僕がお前に入って夏梅とSEXした事はないよ」

「しかし…」

「お前に入ったのは、あとは、さっき蒲が夏梅に殺意を丸出しにした今回と、吉江の暴行事件の時くらいだ」

「本当か?」

「お前、わかっていたのだろ?」

「まあ、吉江の事件の時は、所々覚えているのだ。自分の意志だったような気もするし、誰かに動かされていた気もした。いくら考えてもわからなかった」

「あの時、あのまま吉江のところに、一人で夏梅を行かせることが、どれだけ危険か、天十郎は薄々感じていたのだろ。僕と同じで…」

「そうだな、蒲のやっている事が、何もかも気に入らなかった。車に乗ってからも夏梅の事を、考えていたかも知れない」

「基本さ、愛は傷つかないが、プライドは傷つくだろ。それぞれは別ものだが絡みついたプライドは、愛を見失わせ遠ざけ捨ててしまう事になる。最低でも互いのプライドを守らないと」


「だが…」

「安心しろ。だから理性を失くしたのは僕のせいじゃない。お前自身と夏梅だ」

「納得がいかない」

「全部、お前たちだ。少し冷静に考えろ」

「いや!全部俺なの?いや、だってさ…」

「僕は蒲を牽制するが、他の男のからだを使っても、女を抱くことは出来ないよ」

「しかし、うん~。夏梅はそれを望んでいるのではないのか?」

「多分な」

「それでもか?」

「無理だな、気持ちで、抱けるものではないんだ。それに、さっきのお前と夏梅の会話を聞いていたが、お前たちの事は僕にもわからない」


 その時、叶一が帰って来た。

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